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5:砂に埋もれた工房
目が覚めたとき、最初に感じたのは「匂い」だった。焦げた鉄と、古びた油の匂い。
「……う……」
少女は身を起こした。そこは、砂に埋もれた旧時代の工房のようだった。頭が割れるように痛い。自分が誰なのか、なぜここにいるのか、何も思い出せない。記憶のすべてが、墜落の衝撃で抜け落ちていた。
ただ、体だけが覚えていた。誰かに強く抱きしめられていたような圧迫感が残っている。彼女はふらつく足で立ち上がると、迷わず部屋の奥へと向かった。そこには、赤茶色に錆びつき、黒焦げになった巨大な「鉄塊」が鎮座していた。
かつて白銀だった騎士の成れの果て。胸の奥にあるはず의魂の灯は深く沈み、ピクリとも動かない。けれど、少女はその冷たい鉄の足元に座り込み、ほっと息を吐いた。
「……落ち着く」
名前も知らない鉄の塊。けれど、この焦げた匂いだけが、世界で唯一、自分がここにいていいと肯定してくれる気がした。彼女は動かない手を借りるように、鉄の指に自分の指を絡ませ、再び眠りについた。




