第2節:窓辺の二人
その夜、工房の作業台はご馳走で埋め尽くされました。
楽しい宴の最中、ふとヴィオラさんがグラスを置き、真面目な顔でマシロおねえちゃんを見つめました。
「ねえ、マシロ。……もう、ここに住みなよ」
工房の空気が止まりました。
「あんたの目は不自由だし、アイゼンだってメンテナンスが必要だ。リアも学校へ行く。……これ以上、荒野を彷徨う理由はないだろう?」
ヴィオラさんの言葉は、正論でした。
ここには屋根がある。温かいご飯がある。
そして、大好きな家族がいる。
マシロおねえちゃんは、少しだけ視線を落とし、膝の上で手を握りしめました。
「……そう、ですね」
おねえちゃんは迷っているようでした。
温かいスープの湯気と、窓の外の冷たい風。
その間で揺れているように見えました。
「……少しだけ、考えさせてください。今日のシチュー、とっても温かくて……離れがたいです」
「ああ。ゆっくりお休み。ベッドはふかふかにしておいたからね」
その夜、私は目を覚ましました。
マシロおねえちゃんが、窓辺で月を見ていたからです。
その隣には、アイゼンが静かに佇んでいました。
「……アイゼン。あなたはどう思う?」
おねえちゃんが小声で話しかけています。
アイゼンは答えません。
でも、その赤い瞳は、窓の外――どこまでも続く荒野の方角を向いていました。
「……ふふ。そうだよね。やっぱり、私たちは……」
そこで言葉が途切れ、彼女は振り返りました。
ベッドの私と目が合います。
おねえちゃんは困ったように笑って、人差し指を口元に当てました。
「……おやすみ、リア。明日も晴れるといいね」




