第2節:新しい設計図
工房に戻ると、通信機が点滅していた。
西の開拓村に行っているヴェールからの定期連絡だ。
『よぉ、ババア。生きてるか?』
「誰がババアだ。……で、どうなんだい、西の様子は」
『ああ。こっちは相変わらず無法地帯だが、最近面白い噂を聞いたぜ』
通信機の向こうで、ヴェールがニヤリと笑う気配がした。
『東の森で、「見えない色を操る魔女」と「虹色の巨人」、それに**「おしゃべりな妖精」**の一行が現れたらしい』
「……妖精?」
『チビのことだよ。あいつ、最近じゃ「黄金の語り部」なんて呼ばれてるらしいぜ』
私は思わず吹き出した。
あの泣き虫のリアが、語り部だって?
マシロの目が不自由だから、一生懸命に世界を説明しているうちに、表現力が磨かれたんだろう。
アイゼンは相変わらず、無口な荷物持ちをやっているに違いない。
「……そうか。元気でやっているなら、それでいい」
『ああ。……じゃあな、また連絡する』
通信が切れる。
私はモニターに向かって、小さく微笑んだ。
夕暮れ時。
作業を終えた連中が、広場で焚き火を囲んで宴会を始めている。
かつては灰色の顔をして、感情を失っていた彼らが、今は顔を赤くして笑い合っている。
私はデスクに向かい、新しい設計図を広げた。
塔の部品を使って、新しい「移動都市」を作る計画だ。
これがあれば、砂漠も海も越えていける。
「……忙しくなるねえ」
私はペンを走らせた。
魔女の仕事は終わった。
これからは、エンジニアの出番だ。
ふと、窓の外を見る。
塔の向こうに、大きな虹がかかっていた。
七色じゃない。夕焼けが混じって、もっと複雑で、美しいグラデーションを描いている。
「見ているかい、マシロ」
あんたが取り戻した世界は、今日も最高に綺麗だよ。
私はタバコの火を消し、モノクルをかけ直した。
さあ、仕事だ。
子供たちがいつ帰ってきてもいいように、最高の「実家」を作っておいてやらなきゃならないからね。




