第3節:氷の揺り籠、母の叫び
硝子の床に舞い降りた私を、彼女はただ、聖母の微笑みだけで受け止めたのです。
代わりに、無数のパイプが優しく伸びてきて、まるで赤子をあやすように私の体を空中で絡め取りました。
締め付けるのではありません。
包み込むような、病的なほどの柔らかさ。
「……ああ、イリス。可哀想に」
目の前のカルミナが、慈悲深い瞳で私を見つめ、涙を流していました。
「こんなにボロボロになって……痛かったでしょう?
辛かったでしょう?」
彼女の冷たい指先が、私の頬の泥を拭います。
「外の世界は地獄だったでしょう?
砂が喉を焼き、鉄が肌を裂き、愛する者が死んでいく……。
私は知っているわ。300年前、私がその目で見た地獄と同じだもの」
彼女の声が震えていました。
それは演技ではありませんでした。
彼女は本気で、外の世界を恐れ、私を哀れんでいるのです。
「だから私は、この塔を作ったの。
ここでは誰も死なない。誰も傷つかない。
永遠に美しいまま、幸せな夢だけを見ていられる……」
「ねえ、イリス。どうして分からないの?
ママはただ、あなたを守りたいだけなのに」
カルミナの背後で、純正炉がゴウン、と唸りを上げました。
それは世界を救うための装置ではなく、子供を外に出さないために玄関を塞ぐ、巨大な錠前のように見えました。
「さあ、その右腕の『毒(色)』を捨てなさい。私と一つになりましょう。
そうすれば、もう二度と、大切な人を失って泣かなくて済むのよ?」




