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色彩搾取の灰色世界で、不器用な魔女は鉄の騎士に命を捧ぐ 〜クロマティック・ウィッチ〜  作者: w.t.
26章:『黄金の悪夢、繰り返さない誓い』

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第1節:霧の分断

アイゼンがこじ開けた大ゲートをくぐり、私たちは塔の内部――中層エリアへと足を踏み入れました。


そこは、回廊状の巨大な吹き抜けになっていました。


螺旋状に続く階段と、壁一面を埋め尽くす無数の黒いモニター。


私たちが足を踏み入れた瞬間。


バチ、バチ、と音を立てて、全ての画面が一斉に点灯しました。


「……なっ」


映し出された映像を見て、私は息を呑みました。


灰色の村でテオを助けた私。


砂漠で渇きに苦しむ私。


ネオン街でパンケーキを頬張るリア。


紫の洋館で、ドレスを着て踊る私と、それを見守るヴェールさんたち。


すべて、映っていました。


私たちが泣いて、笑って、傷ついてきた旅の全てが。


「……趣味が悪いな」


ヴェールさんが吐き捨てるように言いました。


「全部、見てやがったのか。俺たちの旅は、女王様にとってはただの娯楽映画だったってわけか」


そうです。カルミナはずっと見ていた。


私たちが泥を啜り、血を流し、絆を深めていく様を、特等席で嘲笑いながら観察していたのです。


その事実に、背筋に冷たいものが走ります。


ここは建物ではない。巨大な「実験場」なのだと。


『――ええ、素晴らしい記録(ログ)だったわ』


天井から、あの甘い声が降り注ぎました。


『愛、勇気、自己犠牲。どれも最高級の感情いろね。……さあ、ご褒美をあげましょう。あなたが一番望んでいた、“完璧な結末”を』




プシュウゥゥ……。


通気口から、金色の霧が噴き出しました。


ただの煙ではありません。


視界を遮るだけでなく、意識のピントを強制的にずらすような、甘ったるい芳香。


塔が精製した濃縮エネルギー、黄金色(アウルム)のガスです。


「霧だ! 吸うな! 幻覚を見せられるぞ!」


ヴェールさんの叫び声が、霧の向こうへ遠ざかります。


隣にいたはずのアイゼンの巨体が、金色の霧に飲まれて消えていく。


「アイゼン! リア!」


私は手を伸ばしましたが、指先が触れたのは虚空だけでした。


通信機からもザザッというノイズしか聞こえません。


方向感覚が失われます。上も下も分からない。


完全な孤独。


世界から切り離されたような浮遊感の中、私の意識は金色の海へと溶けていきました。

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