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色彩搾取の灰色世界で、不器用な魔女は鉄の騎士に命を捧ぐ 〜クロマティック・ウィッチ〜  作者: w.t.
24章:『死ねない友人、灰色の故郷』

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第3節:灰の中から

森が枯れ落ち、元の荒涼とした「灰の村」に戻りました。


私はふらりと立ち上がり、近くを流れる用水路へと歩きました。


水面に手を突っ込み、狂ったように指を擦ります。


「……落ちない」


テオを殺した感触。


灰色の粉のような、命を奪った感触が、指の指紋の溝にまで食い込んでいる気がして。


「落ちない、落ちないよ……っ! 」


ゴシ、ゴシと、皮膚が赤くなるほど擦っても、私の手は「人殺しの手」のままでした。


ガシッ。


その震える手を、大きく、硬い手が掴みました。


「……アイゼン?」


見上げると、そこには傷だらけの鉄の巨人が立っていました。


彼の手は、長い旅路で付着したオイルと泥、そして錆で真っ黒に汚れていました。


でも、それは私が知る限り、世界で一番温かくて、頼もしい手でした。


アイゼンは私の手を引くと、その汚れた親指で、私の濡れた頬を乱暴に拭いました。


ズイッ。


白い肌に、黒いオイルの筋が走ります。


「……っ」


鏡を見なくても分かります。今の私は、酷い顔をしているでしょう。


泥と涙とオイルでぐしゃぐしゃの、汚れきった顔。


でも……不思議と力が湧いてきました。


綺麗なままではいられない。


私は友人を殺し、世界を敵に回してここまで来たのです。


「……そうね。アイゼン」


「これが、私の(つぐない)。……魔女は、綺麗になんて泣かない」


「……行くぞ」


背後で見ていたヴェールさんが、短く声をかけました。


彼もまた、私の顔を見て何も言いませんでしたが、その口元には微かにニヤリとした笑みが浮かんでいました。


(とむら)いは済んだ。……次は、本番だ」


私はアイゼンを見上げました。


彼は何も言わず、ただ大きな手で私の頭を一度だけ撫でてくれました。


その手の温もりは、テオがくれたスープの温かさと、どこか似ていました。


「……うん、行こう」


私はもう振り返りません。


過去の過ちも、痛みも、全て背負って進む。


それが、生き残ってしまった「魔女」の責任だから。


私たちは鉄の柩に乗り込み、地平線の彼方にそびえる塔――カルミナの待つ場所へと、車を走らせました。



第24章 「死ねない友人、灰色の故郷」 完

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