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色彩搾取の灰色世界で、不器用な魔女は鉄の騎士に命を捧ぐ 〜クロマティック・ウィッチ〜  作者: w.t.
24章:『死ねない友人、灰色の故郷』

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第1節:カビの生えた揺り籠

ネオン街を出発し、私たちは塔へ向かうルートから、少しだけハンドルを切りました。


私の強い希望で、ある場所へ立ち寄ることにしたのです。


「……ここか」


ヴェールさんが車を止め、エンジンを切りました。


そこは、私の生まれ故郷ではありません。


けれど、記憶も名前もなかった私が、初めて「マシロ」として生きた場所。


そして、私が最初の罪を犯してしまった場所――かつての「灰の村」です。


しかし、そこに広がっていたのは、記憶にある殺風景な荒野ではありませんでした。


「……うわあ。なにこれ」


リアが窓にへばりつき、小さく震えました。


「森……なの? でも、色がぜんぶ、灰色だよ……?」


視界を埋め尽くしていたのは「灰色の森」でした。


植物が生い茂っているのに、鮮やかさが一切ないのです。


葉はすべて墓石のような青灰色。


幹はねじれ、表面には石膏のような白カビがびっしりと張り付いています。


風が吹くと、カサカサと乾いた音がして、灰色の胞子が雪のように舞い上がります。


私がテオに注ぎ込んだ過剰な「赤」が、彼の制御を超えて溢れ出し、周囲の土地ごと変質させてしまった成れの果て。


ここは再生の地ではありません。


死ぬことを許されない、「永遠の停滞」の森でした。


「行きます」


私はドアを開けました。


彼に、会わなければいけません。




車を降り、私たちは徒歩で灰色の森の奥へと進みました。


足元の草は踏んでも折れず、ゴムのような弾力で押し返してきます。


目指すのは、村外れの廃工房。


かつて私とアイゼンが暮らした場所。


ねじれた木々を掻き分けると、崩れかけたトタン屋根が見えてきました。


工房は、巨大な灰色の植物の根に飲み込まれ、押しつぶされそうになっていました。


そして、その中心に、彼はいました。


「……マ、シロ……?」


植物の幹と半ば同化した少年。テオです。


彼の身体は、私が治した傷口から噴き出した肉腫と蔦によって、巨大な樹木の一部になっていました。


皮膚は樹皮のように硬化し、瞳だけがギョロリと動いています。


「……テオ」


私が駆け寄ろうとすると、ズズズ……と地面から根が持ち上がり、威嚇するように動きました。


しかし、今の私には最強の騎士がいます。


ブォン。


アイゼンが一歩前に出て、虹色のフィールドを展開し、根を弾き返しました。


「……あ、あぁ……アイゼン……動いた、んだ……」


テオの枯れた唇が動きました。


「約束……守ったんだね……」


彼の目には、再会の喜びと、それ以上の深い絶望が宿っていました。


彼はこの場所で半年間、飢えることも、眠ることも、死ぬことさえもできず、ただ植物として意識を保ち続けていたのです。


私がかけた「優しさ」という名の呪いによって。

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