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色彩搾取の灰色世界で、不器用な魔女は鉄の騎士に命を捧ぐ 〜クロマティック・ウィッチ〜  作者: w.t.
23章:『硝子越しの共犯者』

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第4節:最後の晩餐

その夜、工房の片隅で、ささやかな宴が開かれました。


作業台の上に並べられたのは、ヴィオラさん特製の『オイル缶シチュー』。


中身は普通の野菜と干し肉ですが、綺麗に洗ったオイルの空き缶で煮込むのが、ここでの流儀です。


ゴトゴトと煮える音。立ち上る湯気。


「わあ!あったかい!おいしい!」


リアがフゥフゥと息を吹きかけながら、スプーンを運びます。


その無邪気な笑顔を見ていると、ここが地下の掃き溜めであることを忘れそうになります。


私も一口食べました。


……味が、よく分かりません。


野菜の甘みも、肉の旨みも、遠い世界の出来事のようにぼやけています。


味覚も、もうシステムの一部に置き換わってしまったのでしょう。


でも、胃の中に落ちる温かさと、みんなが囲んでいるテーブルの空気だけは、痛いほど感じられました。


「おいマシロ、食わねえと身体が持たねえぞ。ほら」


ヴェールさんが、自分の分の肉を私の缶に移してくれます。


「……ヴェールさん、そんなに食べられません」


「うるせえ。これから血を抜くんだろ。栄養つけとけ」


彼はぶっきらぼうに言い捨てて、自分はスープだけをすすりました。


「マシロおねえちゃん、あーん!」


リアが私の膝に乗ってきて、自分のスプーンを差し出します。


「ふふ、あーん」


リアの笑顔。ヴェールさんの不器用な優しさ。


ヴィオラさんの、どこか悲しげで、でも温かい視線。


これが最後かもしれない。


この「無意味で、非効率で、温かい時間」が、私が人間として記憶できる、最後(さいご)の景色かもしれない。


私はその味を、舌ではなく心の一番深い場所に刻み込みました。


もし私が塔の一部になって、全ての記憶を失ったとしても。


このシチューの温かさだけは、忘れたくないと思いました。

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