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色彩搾取の灰色世界で、不器用な魔女は鉄の騎士に命を捧ぐ 〜クロマティック・ウィッチ〜  作者: w.t.
23章:『硝子越しの共犯者』

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第1節:凱旋と異変

懐かしい匂いがしました。


カビとオイル、そしてネオンの焼ける匂い。


私たちは鉄の柩を走らせ、物語の始まりに近い場所――ネオン街へと戻ってきました。


かつて、この街の光は私にとって「暴力」でした。


目を焼き、頭痛を引き起こす過剰な色彩の洪水。


けれど今の私には、それらはただの「弱い光の集合体」にしか見えません。


「……まぶしくないの?」


助手席で、リアが心配そうに私を見上げます。


彼女の黄金色の瞳が、ネオンの光を反射してキラキラと輝いています。


「うん、平気。……すごく、静かに見える」


私の右目は、もう半分以上視力を失っていました。


代わりに、魔力の流れや熱源が、直接脳に飛び込んでくるのです。


街を行き交う人々の体温。建物の外壁を這うパイプのエネルギー流動。


世界から情緒が削ぎ落とされ、構造だけが冷徹に浮き彫りになる。


それが「魔女」として完成しつつある私の視界でした。


「……チッ。気味の悪い目になりやがって」


後部座席でヴェールさんが舌打ちをしました。


その言葉には嫌悪感ではなく、隠しきれない焦燥感が滲んでいました。


「おいマシロ。寄り道はナシだ。ヴィオラの所へ直行するぞ。……お前の体がもたねえ」


私は無言で頷き、推力桿を倒しました。


鉄の柩は迷うことなく、路地裏の闇へと滑り込んでいきました。

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