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色彩搾取の灰色世界で、不器用な魔女は鉄の騎士に命を捧ぐ 〜クロマティック・ウィッチ〜  作者: w.t.
20章:「涙の計算式、藍の解」

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第2節:熱源探知

車を走らせて数十分。

私たちは荒野を抜け、かつての鉱山地帯へと足を踏み入れていました。



ここは「赤の遺跡」とは違う、放棄されたガス採掘場。

あちこちの岩場から、シューッという不気味な噴気音が聞こえ、腐った卵のような臭いが漂っています。



ピィ……。ピィ……。



風切り音に混じって、鳥の鳴き声のような電子音が聞こえました。



「……止まれ」



ヴェールさんの鋭い指示で、私はブレーキを踏みました。

岩陰から姿を現したのは、三機の監視鳥(ウォッチバード)



塔の自律兵器です。

彼らは普段、休眠モードのはず。



けれど今は、そのカメラアイが真っ赤に点滅し、執拗にこちらの機関部――つまり、私が(エネルギー)を与えたばかりの駆動炉を睨んでいました。



「……チッ。炉の熱を探知されたか」



ヴェールさんが短剣を抜きます。



「やっぱ、余計な熱を持つとロクなことがねえな」



「私が……焼きます」



私は右腕を掲げようとしました。

けれど、制御盤(コンソール)の警告灯が激しく明滅します。



『警告:可燃性ガス濃度、危険レベル』



「ダメだマシロ! ここで(あか)を使ってみろ、俺たちごと消し炭だぞ!」



ヴェールさんが私の腕を掴んで制止します。

火花厳禁。爆発の危険があるこの場所で、私の最大の武器である「赤」は封じられていました。



監視鳥(ウォッチバード)たちが翼を広げ、真空の刃を放つ予備動作に入ります。



「……ヴェールさん。背中、貸してください」



「あ?」



「赤がダメなら、あなたの速度で落とします。……熱、回します!」



拒否する間も与えず、私は彼の背中に両手を叩きつけました。

再び、私の中の熱がごっそりと持っていかれます。



今度は指先だけじゃない。

視界が白く霞み、内臓が裏返るような悪寒が全身を駆け巡りました。



ヒュンッ! 



ヴェールさんの体がブレて消えます。

金属同士をぶつける斬撃は使いません。火花が散れば終わりだから。



彼は風のような速度で敵の懐に入り込み、関節の隙間へ正確に刃を突き立てました。



プシュッ、プシュッ、プシュッ。



硬質な打撃音はなく、ただ空気が抜ける音だけが三回響き――彼が足を止めた時には、三機の監視鳥(ウォッチバード)は翼の付け根を貫かれ、地面に墜落していました。



「……はっ、すげえな。体が勝手に動く」



ヴェールさんは自分の手を見つめて笑いましたが、私はその場に崩れ落ちそうになりました。



寒い。

寒い。



歯の根が合わない。

(だいだい)を使えば使うほど、私はただの冷たい器に戻っていく。

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