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色彩搾取の灰色世界で、不器用な魔女は鉄の騎士に命を捧ぐ 〜クロマティック・ウィッチ〜  作者: w.t.
19章:『琥珀の食卓、青の独白』

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第6節:一番の宝物

石の輝きが増していきます。

まるで、「私を使って」と訴えかけるように。



「……だめだよ、リア。これはあなたの宝物でしょう?」



私は眠るリアの胸に石を戻そうとしました。



でも、石は私の手から離れようとしません。

それどころか、磁石のように私の右腕――黒い痣へと吸い寄せられていきます。



その時、寝言のようにリアが呟きました。



「……ん……アイゼン……おねえちゃん……なおって……」



リアが身じろぎをして、私に抱きついてきます。



「……リアのたからもの、あげる……」



寝ぼけ眼で満足そうに微笑んでいます。



「……おねえちゃん、だいすき」



胸が締め付けられました。

この石は、リアの「願い」そのものなんだ。



彼女にとっての宝物は、この石ころ自体じゃない。



**「大好きな家族が、ずっと一緒にいられますように」**という祈りこそが、彼女が抱きしめていた本当の宝物。



石が、その祈りを叶えるために、自ら私の力になろうとしている。



「……ありがとう、リア。大好きよ。私の小さな宝物」



私はリアを抱き返し、石を、冷え切った自分の胸――心臓の上に押し当てました。



「あなたの宝物、私がもらうんじゃない。……私たちが、一緒に生きるための熱にするね」



じゅわっ。



熱で蝋が溶けるような音がして、石が私の肌に沈んでいきます。

熱い。でも、火傷するような痛みではありません。



冷え切った身体にスープが染み渡るような、泣きたくなるほどの安らぎ。



私の右腕の黒い痣の中に、ぽっと温かい橙色の灯火が点りました。

それは、どんな冷たい風も吹き消せない、私たちで作った「家族の色」でした。



(おやすみ、アイゼン。……あなたがガラス越しに見ていた夢は、全部ここにあったよ)



湖畔の夜風は冷たいけれど、私たちの車の中だけは、春のように温かいまま。



赤、黄、緑、青。そして、橙。

五つ目の色が、私の心に灯りました。



夜が更けていきます。

明日になれば、また過酷な旅が待っています。



残る色はあと二つ。



私はリアの手を握り直し、アイゼンの幻影に寄り添うようにして、深く眠りに落ちました。



第19章 「琥珀の食卓、愛の証明」 完

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