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色彩搾取の灰色世界で、不器用な魔女は鉄の騎士に命を捧ぐ 〜クロマティック・ウィッチ〜  作者: w.t.
19章:『琥珀の食卓、青の独白』

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第5節:ネオンの残り香、家族の体温

頬を伝う涙を拭おうとした時、カツンと乾いた音がして、後部座席で眠るリアの胸元から何かが転がり落ちました。



ヴェールさんがネオン街の露店で、気まぐれに買い与えた安物の石です。



(……懐かしい)



あの時のことを思い出します。



濁った瞳の店主が売っていた、「命の残り香」と呼ばれるただの石。

その中で、リアが「あったかい色」と言って選んだ、小さな一粒。



拾い上げようとして、私は指を引っ込めました。

熱かったのです。



まるで、焼けた炭のように。



「……どうして? あの時は、こんなに熱くなかったのに」



私は恐る恐る、その石を掌に乗せました。



石は、ポゥ、ポゥ……と、呼吸をするように優しい光を放っていました。

それはネオン街の毒々しい色ではありません。もっと澄んだ、琥珀色(アンバー)の輝き。



指先に伝わるその熱さは、不思議と懐かしいものでした。

魔法のような熱さじゃない。もっと身近で、少し湿ったような、人の温もり。



「……あ、あぁ……」



この温度、私、知ってる。



記憶が、指先から流れ込んできました。



リアがパンケーキを頬張って笑った時の、体温の上昇を。

寒い夜に、アイゼンの冷たい装甲に押し当てて「温かくなあれ」と願った、あの小さな手の熱を。



ヴェールさんがぶっきらぼうに掛けてくれた毛布の重さを。



この石は、私たちの旅の体温を、ずっと吸い込んでいたんだ。



ありふれた日常の熱が、リアの純粋な心の中で育ち、長い時間をかけて本物の結晶へと変質(うか)していたのです。

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