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色彩搾取の灰色世界で、不器用な魔女は鉄の騎士に命を捧ぐ 〜クロマティック・ウィッチ〜  作者: w.t.
19章:『琥珀の食卓、青の独白』

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第1節:濡れた鉄と乾いた風

ザッ、ザッ、ザッ……。



重い足音が、静まり返ったドームの中に響きます。

私たちは長い螺旋階段を登りきり、ようやく出口の光の中へと顔を出しました。



外に出た瞬間、ヴェールさんが大きく息を吐き出し、その場に大の字に寝転がりました。

彼の服も、私のコートも、湖の湿気を吸って重く張り付いています。



「湿気で肺がカビるかと思ったぜ。……おいマシロ、リア、生きてるか?」



「ええ、なんとか。……リアも、大丈夫?」



「……うん」



リアは私のコートの裾を、指が白くなるほど強く握りしめたまま、小さく頷きました。

彼女は図書館を出てから一度も、私のそばを離れようとしません。



まるで、少しでも目を離せば、私が親たちのように、煙のように消えてしまうと思っているかのように。



私はその震える手を、そっと上から包み込みました。

大丈夫。私はどこにも行かないよ。



体温を伝えるように握り返すと、リアはようやく顔を上げました。



「……あ。……マシロおねえちゃん、みて。おそと、あかい」



リアが指差した先。

西の空が、溶けた鉄のように赤く、そしてオレンジ色に燃えていました。



地下の「青」い世界にいたせいか、その暖色が目に沁みるほど鮮やかに感じられます。



「綺麗……」



私は、湖畔に停めてあった鉄の柩(てつのひつぎ)に手をつき、その夕暮れを見つめました。



右腕には、青い結晶が静かに収まっています。

激情を冷ます「青」のおかげか、今の私は、旅を始めてから一番穏やかな気持ちでいられました。



哀しみは消えない。でも、この夕焼けのように、世界はまだ美しい色をしている。



「今日はここで野営だ。……動く気力もねぇ」



ヴェールさんが少し濡れた髪をかき上げながら言いました。その顔色は、まだ少し青白いままです。

森での毒、図書館での死闘……彼はボロボロのはずです。



「ヴェールさん。今日は私が食事を作ります」



「あ? お前、料理なんかできんのか?」



「……アイゼンの『足元』で覚えたんです」



私は少し胸を張りました。

アイゼンは動きませんし、食事もしません。



でも、村の夜は風が強くて寒かったから……私はいつも、彼のあぐらをかいた足の隙間に入り込んで、風除けにしていたんです。



そこで小さな焚き火をして、拾った缶詰やネズミを焼いて……。



火を大きくしすぎるとアイゼンが(すす)けちゃうし、小さいと消えちゃう。

だから、火加減だけは得意になったんです。

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