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色彩搾取の灰色世界で、不器用な魔女は鉄の騎士に命を捧ぐ 〜クロマティック・ウィッチ〜  作者: w.t.
18.5章:涙の海、愛の証明

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第3節:残酷な赤、鋼鉄の繭

第3節:残酷な赤、鋼鉄の繭



リアは、氷のような結晶の中で、虚ろな目をしていました。



結晶はすでに彼女の胸元まで覆い、その鼓動を止めようとしています。

その瞳から光が消えかけていました。



「……マシロ、おねえちゃん。……もう、いいの」



リアが、カサついた唇で呟きました。



「リア、だれにもあいされてなかった。おとうさんもおかあさんも、リアのこと、いらなかったんだ……。だから、もう……このまま、ゆめをみてたい……」



彼女は自ら、心を閉ざそうとしています。

この辛い現実よりも、アズールがくれる「嘘の夢」の方がマシだと。



親に売られたという事実を知って生きるくらいなら、氷の中で眠っていたいと。



(……救わなきゃ)



言葉では足りない。

「愛している」なんて言葉は、彼女の両親が散々使った嘘の言葉だ。



今の彼女に必要なのは、過去の真実でも、未来の約束でもない。

今、ここに流れている「生」の実感だ。



私は震える手でナイフを取り出しました。

迷わず、自分の指先を切り裂きます。



ぷくり、と。

鮮やかな赤い血が、玉のように膨れ上がりました。



「……ごめんなさい、リア。痛いかもしれない。でも……」



私はその血のついた指を、リアの凍りついた唇へと押し当てました。



「これが、私の『色』。あなたがくれた、命の熱です」



ぽつり。



赤い雫が、彼女の唇に落ち、染み込んでいきました。



瞬間。



ドクン!! 



リアの心臓が大きく跳ねました。



「ん……ぁ……っ!? 」



私の血液(魔力)が、彼女の体を(むしば)んでいた「青い停滞」を、強制的に循環させました。



血管を流れる冷たい水銀が、沸騰するようなマグマに置き換わる。

彼女の瞳がカッと見開かれ、そこから涙が溢れ出しました。



「いや……やだ……! 悲しい、悔しいよぉ……っ!」



悲鳴。

それは「諦め」ではなく、生きているからこそ感じる「痛み」の叫びでした。



「わらってる……なんで、わらってるの……!? わたしをすてるのに、なんでそんなに嬉しそうなの!?」



リアが泣き叫び、氷を割って両手を振り回しました。

その爪が私の頬を掠め、赤い筋を作りましたが、痛みは感じません。



「あぁ……ああああああっ!! 」



真実を直視させられた幼い精神が、悲鳴を上げながら軋んでいます。



拒絶されても、暴れられても、私は彼女を離しませんでした。

その痛みこそが、彼女が「標本」ではなく「人間」である証拠だから。



「泣きなさい、リア! 怒っていい、悲しんでいい! それがあなたの『心』よ!」



「うわぁぁぁぁぁん!! おねえちゃぁぁぁん!! 」



リアは私の首に腕を回し、しがみつきました。

その体温は熱く、脈動は力強い。



アズールの作ろうとした「冷たい標本」など、どこにもいませんでした。

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