第2節:永遠の標本
「……美しい。これで『初期化』完了」
アズールは満足げに頷き、まるで名画を鑑賞するように、絶望するリアを見つめました。
「……残念。マシロ”お姉さん”。彼女は壊れた。器にヒビが入れば、修復不可能。……私が再構築して、塔へ連れ帰る」
「連れて帰る……?」
「カルミナ様が望むのは、泣く子供じゃない。静かで、従順な、聖女だけ」
アズールが手を掲げると、図書館の青い光がリアの周りに集まり始めました。
パキ、パキパキ……。
空気が凍る音がします。
リアの足元から、青い結晶が氷のように這い上がり、彼女の小さな体を包み込み始めました。
「このまま、夢に封印する。永遠に笑う、美しい標本。……これ以上の幸福、存在する? 」
「……ふざけないで」
私の右腕が、熱く脈打ちました。
標本? 献上? 幸福?
リアは物じゃない。
過去がどうだろうと、親がどうだろうと、彼女は今、ここで息をして、泣いて、生きている人間だ!
「ヴェールさん、援護をお願いします」
「……チッ、言われなくても! その胸糞悪いガラスをぶち破るぞ!」
ヴェールさんが短剣を全力で投げつけました。
カィン!
しかし、見えない壁に弾かれます。時間の壁はあまりに硬い。
けれど、そこに生じたわずかな亀裂。
「……無駄。不変は哀しみ。過去は、絶対」
アズールが叫び、青い波動を放ちました。
私の体が重くなる。泥沼に沈むように、時間が引き伸ばされていく。
手足が鉛のように重い。思考が凍りつく。
それでも、私の心臓だけは、アイゼンへの想いとリアへの愛で、熱く燃えていました。
「過去なんて……どうでもいいッ!! 」
私は右腕の「赤(怒り)」を爆発させ、停滞の青を無理やり焼き切りました。
ガシャアァァァン!!
私はガラスの壁を突き破り、結晶化が進むリアの元へと滑り込みました。




