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色彩搾取の灰色世界で、不器用な魔女は鉄の騎士に命を捧ぐ 〜クロマティック・ウィッチ〜  作者: w.t.
18章:碧(あお)き沈黙の都、ガラスの揺り籠

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第4節:ガラスの観客席

「……リア! だめ、それは偽物よ!」



私は叫び、幻影の中へ踏み込もうとしました。



ガンッ!! 



激しい衝撃音。

私の身体は、見えない壁に弾き飛ばされました。



私とヴェールさんは、その幸せなリビングルームの外側――冷たい「客席」から、ガラス越しに見せつけられているだけだったのです。



「……邪魔。静粛に」



私の隣に、いつの間にかアズールが立っていました。

彼女はうっとりとした表情で、抱き合う親子を見つめています。



「……見なさい。あの幸福な数値を。……今の彼女に、貴方の声はノイズでしかない」



「あれは……あなたが作った幻でしょう! リアを騙して、何が楽しいの!」



「騙す? ……認識齟齬(そご)ですね」



アズールは心外だと言わんばかりに首を傾げました。



「これは『青』の演算結果。あり得た過去(if)。……現実はどう? 両親は死に、貴方に連れ回され、怯える毎日。それに比べ、この標本箱は完璧」



アズールの言葉は、毒のように私の胸に染み込みました。

ガラスの向こうで、リアは母親に甘え、父親に頭を撫でられています。



その笑顔。

私が、どれだけ頑張っても守りきれなかった、全幅の安心感に満ちた笑顔。



「……そもそも、彼女の望みは『隠匿』」



アズールが私の耳元で囁きました。



「不思議だと思わない? なぜ何年も見つからなかったか。砂漠のせい? ……違う」



彼女は、まるで子供に言い聞かせるように続けました。



「『使わなかった』。あの日、悟ったから。『自分が親を殺した』と」



「……っ!」



「だから閉ざした。石のように。……それを、貴方が無理やりこじ開けた」



ガラスの向こう。

リアがこちらを見ました。



けれど、その目は私を見ていません。

もう、こちらの世界などどうでもいいという虚ろな、けれど幸福な目でした。



「……マシロおねえちゃん、ごめんね」



リアの声が、水の中のように遠く聞こえました。



「リア、ここで、おかあさんたちとくらすね。……だから、ばいばい」



彼女は私に手を振り、再び両親の腕の中へと戻っていきました。

その背中は、私たちが共に旅した「家族」のものではなく、守られるべき「子供」のものでした。



「――っ!! リア!!」



私がいくらガラスを叩いても、叫んでも、その声はもう届きません。

アズールが悪魔のように微笑みました。



「……置いていく。それが『愛』。永遠の停滞こそ、最適解ハッピーエンド



そう言って、アズールは満足げに頷きました。



しかし、次の瞬間。



「……おねえ、ちゃん? どこ……?」



両親の腕の中で、リアが小さく漏らしました。

幸せなはずなのに、どこか不安げに、私のいた「外」を探すように。



アズールの眉がピクリと動きました。



「……ん? 脈拍にノイズ。……まだ、『外』に未練?」



アズールの冷たい視線が、幻影の中のリアを見下ろしました。



第18章 「蒼き沈黙の都、ガラスの揺り籠」 完

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