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光輝士セイグリッター  作者: なろうスパーク
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第29話「お姫様の戦場」

森の木々をメキメキと踏み倒し、ホルニッセは悠々と進む。

そして、ようやくその目標を見つけた。


山々の谷間に隠れ、何かが風景を歪める。

それが、惑星アマデウスの技術で作られた、ウィーズから見れば“遅れた技術”で作られたステルス機能による物である事は、すぐ解った。


あそこに、目標(ソレイオン)がいる。



『グウウウ………』



攻撃目標を見つけたホルニッセは、腕のサーベルの切っ先を、山々の中に隠れたソレイオンに向ける。

まるで、狙いを定めるかのように。



『………グ?』



その時、ソレイオンに異常が起きた。

ステルス機能が解除され、その上部が展開する。

そして。



「ソフィア・ルイス・アマデウス、出ます!」



翼のようなバーニア・ユニットを吹かせて、ソフィア専用機のウェンディムが、ホルニッセの眼前に躍り出る。



『グオッ?!』

「やああっ!」



驚くホルニッセの隙を付き、ウェンディムは飛びかかるように、構えた長刀をホルニッセに向けて振り下ろした。


ガキン!


振り下ろされたウェンディムの長刀と、ホルニッセの腕のサーベルがぶつかり合い、金属がぶつかり合う音が響く。



『グオッ!』

「くっ!」



つばぜり合いを制したのは、ホルニッセだった。

弾き飛ばされたウェンディムは、バーニアでバランスを取りながら、少し離れた場所に着地する。



「ウェンディムの長刀を弾くなんて………!」



外見以上のパワーを秘めたホルニッセを前に、ソフィアは苦虫を噛み潰したような顔をする。

あのホルニッセ、今までのインベイドベムとは一味も二味も違う。



「………でも、私だって!」



だが、ソフィアも何もしてこなかった訳ではない。


ルデア星に移ってから、何度も訓練と模擬戦を繰り返してきたのだ。


以前は、専用ウェンディムを式典で少し動かす程度だった物が、インベイドベム相手にある程度戦えるまでになった。



「やああーーっ!!」



長刀を振るい、再び突撃するウェンディム。


ホルニッセもサーベルで応戦するが、何度も長刀を叩きつけてくるウェンディムに、圧倒されていた。


得物の取り回しの違いを感じさせない、見事な連擊。

ソフィアの気迫も相まって、ホルニッセはどんどん押されてゆく。


戦況はウェンディムに有利に進んでいた。

もしかしたら、このまま勝てるのではないか?

と、ソフィアの中に僅かな慢心が生まれる。


ソレイオンからそれを見守る従者やシャルル達も、その奮闘ぶりから「もしかしたら」という考えが頭を過る。


ガキンッ!


そして、次に放った長刀の一撃がホルニッセのサーベルを弾き飛ばし、ホルニッセの腕が上に弾かれる。



「てぇーーいっ!!」



チャンスだ。

ホルニッセに止めの一撃を刺さんと、ウェンディムが長刀を振りかぶる。


この一撃で、ホルニッセを倒せる。

ソフィアだけでなく、この戦いを見守っていた従者やシャルル達も、ソフィアとウェンディムの勝利を確信した。


だが。



「………えっ?」



長刀が振り下ろされる。

だが、ホルニッセのボディを切り裂くはずのそれは、ただ空気を切り、地面に突き刺さっただけだった。



「き、消えた?!」



ホルニッセが消えた。

まるで幻のように、ウェンディムの前から姿を消したのだ。


あんな巨大な物体がそう簡単に消えるハズがない。

若干の焦りを感じつつも、ソフィアはステルス機能でも搭載されていたのかと、ウェンディムの索敵センサーを起動しようとした。


その時。



「きゃあっ?!」



突如、ウェンディムの頭上から降り注ぐ、光の弾丸。

回避できず、弾丸の当たったウェンディムの装甲から火花が散る。



「な、何………ッ!?」



弾丸が放たれた方向を、自身の真上を見上げるソフィア。

そこには。



『グウウウ………』



そこにあったのは、唸り声をあげてウェンディムを見下ろす、胸からガトリング・ランチャーを露出したホルニッセの姿。

何故、空にその姿があるのか?ソフィアは一瞬だけ混乱したが、答えは直ぐに解った。



「………翼?」



ホルニッセの背中にあった細長い盾のような装甲。

それが縦から真っ二つに開き、内部のバーニアを吹かせながら、ホルニッセの巨体を空に浮かせていた。


装甲だと思われた物は、装甲ではなかった。


恐らく、ウェンディムに搭載されているそれよりかなり高性能なバーニア・ユニット。

ホルニッセを自由に飛行させる「翼」そのものだ。



『………グオッ!』



翼から羽ばたかせるようにバーニアを吹かせ、ホルニッセは突き飛ばされたかのようにウェンディムに向かい、飛来する。


回避は、間に合わない。


バキィッ!


ホルニッセのサーベルによる一撃が、ウェンディムを突き飛ばす。



「きゃあっ!」



突き飛ばされたウェンディムが、後方に吹き飛ばされる。

そしてウェンディムが倒れるより早く、その背後に再び迫り。


バキィッ!


ウェンディムに向けて、再びサーベルの一撃。


目にも止まらぬ、反撃すら許さぬ連続攻撃だ。



「こ、このっ!」



次の一撃を放とうとホルニッセが離れた瞬間を狙い、ウェンディムの頭部が展開。



「バスターレイ、発射!」



放たれるバスターレイ。

相手が空を飛ぶなら、空の飛べないウェンディムは飛び道具で対抗するしかない。


だが、ホルニッセは自身に向けて放たれるバスターレイを、軽業師のようにヒョイヒョイと避け、ウェンディムとの距離を詰める。



『グオッ!』

「きゃあっ!」



またもや、ホルニッセのサーベルの一撃がウェンディムを吹き飛ばす。

またも、ウェンディムは地面に叩きつけられる。



「くう………ッ!」



一方的に攻撃を受けるウェンディム。

対する、こちらの攻撃をまったく受け付けないホルニッセ。


形勢が逆転した。

何もできない悔しさからか、ソフィアの表情が歪む。





………………





空を飛ぶホルニッセに一方的に攻撃されるウェンディム。

自分達の主のピンチに、従者達は慌てふためく。



「こ、このままではソフィア様が!」

「援護を!」

「でもソレイオンに武装は無いですよ?!」

「ロボットもソフィア様の機体以外持ってきてません!」



彼女達の言うとおり、ソレイオンには武装はなく、ソフィアのウェンディム以外に巨大戦力となる物は持ってきていない。


このまま、ソフィアが叩き潰されるのを黙って見ているしかないのか。



「僕が行く」



だが、そこに立ち上がった者が居た。

シャルルだ。

そうだ、この船にはまだシャルルとセイグリッターが居た。



「しかしシャルル様、ソフィア様は貴方を出撃させまいと………」

「だからってこのまま黙って見ているなんて出来ない!ソフィアには後で謝る!」



制止する従者だが、シャルルは聞かない。

シャルルも、ソフィアのように頑固なのだ。

大切な人を守るためなら、自分を犠牲にできるほど。


従者を押し退けると、デオンより光が放たれる。

光に包まれたシャルルは、デオンカリバーを構えた戦闘礼装の姿を取った。

そして。



「来い!セイグリッター!」



デオンカリバーを天に掲げ、高らかに呼ぶ。

自らの愛機、セイグリッターを。





………………





ホルニッセの連続攻撃を受けながらも、ウェンディムは立ち上がる。

けれどもその身体はよろめき、攻撃を受けた箇所からバチバチと火花が散っている。



「はぁ………はぁ………」


コックピットのソフィアも息が上がっており、緊急事態を知らせる赤いランプの点滅が、顔を照らしている。


ソフィアもウェンディムも、もう限界だった。



「こ………のぉっ………!」



シャルルを戦わせない為にと勇んで出てきたはいいが、結果、手も足も出ず叩きのめされている。

ソフィアの表情には悔しさが浮かび、瞳からは悔し涙がこぼれ落ちる。



『………グルルッ』



そんなソフィアの感情を感じ取ったかのように、ホルニッセがニヤリと嘲笑うように唸る。


ターゲットをよろめくウェンディムに合わせ、背中の翼のバーニアを吹かし、流星のごとくウェンディム向けて突撃する。



『グオオオッ!!』



ウェンディムに迫る、ホルニッセの二本のサーベル。

止めを刺される。



「………ッ!!」



ソフィアの脳裏に、「死」という感情が過る。

ああ、自分は死ぬのだなと。


走馬灯というのか、ソフィアには、今まで生きてきた中の記憶が甦ってくる。


アマデウスの国民達。

ウラヌを初めとする従者達。

父親・オーギストの事。

母親・マリアンヌの事。

長兄・ブライの事。


そして………。



「(………お兄様)」



ずっと、惑星アマデウスが滅びる前から、ずっと慕っていた兄・シャルルの事。


アマデウスを脱出してから二年間、ずっとシャルルの事だけを考えていた。


新天地・ルデア星を見つけるまで、ウィーズに怯えながら宇宙を放浪していた時も。

ルデア星を見つけてから待っていた、アマデウス復興の為の多忙の日々も。


どんな辛い時も、シャルルの事を考える事で、自らを律し、心の支えとしてきていた。



母マリアンヌに仕えていた従者の一人から、シャルルがセイグリッターと共に宇宙へ脱出した事を聞かされた時は、心の底から喜んだ。


シャルルが生きているかも知れない。

もう一度、シャルルに会えるかも知れない。


その一心で、ソフィアは地球に向かった。



「(………ああ、そうか)」



ようやく、ソフィアは気付いた。


口では、シャルルに新たなアマデウスの王になって欲しいだの、シャルルを死なせたくないだのと言っていた。


だが本当は、自分はシャルルに甘えたかっただけだった。


アマデウスが平和だった、あの日々のように。



まったく、とんだワガママプリンセスだ。

国民を導く指導者としては、自分はまるでダメだ。

ソフィアは、心の中で自嘲した。



目の前に、ホルニッセのサーベルが迫ってくる。

次の一撃で、ウェンディムに止めを刺すつもりだろう。


覚悟を決め、全てを諦め、ソフィアは瞳を閉じた。



「………えっ?」



だが、最後の時は訪れなかった。


ウェンディムの前に、守るように立ちはだかる一体の鉄の巨人。

ホルニッセのサーベルを、素手で掴み、受け止めている。



「………ふんっ!」



ホルニッセのサーベルを掴んだまま振り回し、空中に向けて投げ飛ばす。


空中に放り投げられたホルニッセは、空中で体制を建て直し、キッと地上のウェンディムと“それ”に睨みを利かせる。


ウェンディムを守るように立つ“それ”も、ホルニッセに対し睨み返しているように見えた。


まるで、幼少の頃にソフィアがいじめられていた時、ソフィアを助けようと立ちはだかったシャルルのように。



「………お兄様」



そこに居たのは、セイグリッター。

そして、兄シャルル・ルイス・アマデウス。



「………ソフィア、後は僕に任せて」



ありし日々のように、ソフィアを守るために、彼は再び戦火に身を投じた。

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