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光輝士セイグリッター  作者: なろうスパーク
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第28話「妹が来た!」

翌日。

太陽は再び上り、タオゼントフースによって破壊された街にも朝がくる。



「昨日、東京市内で、怪ロボットとセイグリッターの交戦がありました」



昨日起きた戦いを、淡々とニュースキャスターが、画面を見ている人々に伝える。



「また、セイグリッターと怪ロボットの他に、新たに銀色のロボットの姿が確認されました、連合軍ではセイグリッターと何かしらの観点があると見て、調査を続けております」



街頭の巨大なテレビには、セイグリッターとタオゼントフース。

そして両者の間に割って入るように現れたウェンディムの姿が、はっきりと映されていた。



………東京郊外。


2070年のこの時代においても、都心を少し離れた場所に、自然を残す場所。


生い茂る木々の合間に姿を隠すように、自然の中では場違いな巨大な鉄塊が鎮座していた。



惑星アマデウスが保有して“いた”万能宇宙船「ソレイオン」だ。



鈍く輝く鉛色をした、SFチックなデザインの船のような姿。

長い時間宇宙を旅してきたその船体は、近くで見るとあちらこちらに傷が見える。


特殊な明細機能を持っているらしく、その姿は外部からは見えず、カメレオンのように周りに溶け込んでいる。


ここにあまり人が立ち寄らない事を考えると、よほどのトラブルが無い限り、誰かに見つかる事はないだろう。


そんな、ソレイオンの内部。

艦の情報を統括する、ブリッジにて。



「申し訳ございませんでした!!」



メイド服のような服を着た人々………王族の身辺警護から戦闘もこなすソレイオンの従者部隊一 同が、一斉に頭を下げた。


その先にいるのは、彼女達に捕まり、ここまで連れて来られた春香。



「シャルル様が地球でお世話になった方とは知らず、ご無礼を働いてしまった事を、深くお詫びいたします!」



先頭に立ち、より春香に深々と頭を下げるのは、春香に銃を突きつけた張本人にして、この従者部隊を束ねる隊長「ウラヌ」だ。


シャルルを家に置いている春香を、シャルルを捕らえて拘束している敵勢力だと誤解し、銃を突きつけてしまった。



「ま、まあまあ………」



誤解させてしまった自分も悪いと言うように、ウラヌ達をなだめる春香。



「えっと、とりあえず話をまとめると………」



彼女達の話をまとめるとこうだ。


惑星アマデウス陥落時に、脱出出来たのはシャルルとデオンだけだと思われた。


だが実は、他にもアマデウスからの脱出に成功した者が複数いた。

その中の一つが、ウラヌ達アマデウス王家の家臣達。

そして。



「お兄様………本当に………本当にお兄様なのですね」

「………ああ、僕だよ」



シャルルに抱きつき、再会の喜びの涙を流すソフィア・テレーズ・アマデウス。

ウラヌ達を束ねるアマデウス第三王女。

4歳下の、シャルルの妹だ。


ウィーズ進行時に、偶然にもウラヌ達従者と共に、アマデウス宇宙軍の宇宙基地………衛生軌道上にある宇宙ステーションに訪れていた為に、ウィーズの被害を免れていた。


王都陥落と同時にアマデウスを脱出してから、長い間家族の全てを失ったと思い、宇宙を旅してきた。

それも、シャルルの4歳下………10歳の子供がだ。


それが2年近くぶりに、唯一の生き残りである家族と再開できたのだ。

ソフィアの喜びは当然だ。


しかし。



「………むぅ」

「………あの、何か?」



先程までシャルルの胸で泣いていたソフィアが、春香を見てぶすっと頬を膨らませた。

困惑している春香を前に、ソフィアはずかずかと春香の前に歩いてくる。


そして春香の前にくると、小さな身体でずいっと春香を見上げた。



ソフィアの目には、春香の胸が映る。


春香本人としては「自分は太っている」という認識だが、少々お腹が出ている事に目をつぶれば、胸自体はかなり大きい方。


次に、顔。


顔も必要最低限の化粧しかしていないから地味に見えるだけで、素材自体はいい方。

少しダイエットをしてお洒落とメイクを覚えれば、かなり綺麗になるだろう。


対して、ソフィア自身も顔はいい方だ。

第三者から見れば、間違いなく美少女の部類に入る。


だが、絶対的に春香に負けている所があった。

身長、年齢、そして何よりも………。



「………ぐっ」



胸が足りない。

春香の、地味さに隠されたエベレストに対して、ソフィアが見下げて見えるのは「つるっ、すとん」の絶壁。



「………浅倉春香さん、でしたね?」

「は、はい」

「………お兄様を保護してくれた事には感謝しますわ、ですが、あえて言いましょう」



そして目を尖らせ、春香に向けてキッと一言。



「………(わたくし)、負けませんわ!」



そう、宣戦布告するソフィアに、「何に対して?」と困惑する春香。


その表情は、まるで恋敵を見るような鋭さ。

ふたたびシャルルの方に戻り、見せつけるように抱きついてみせるソフィアを前に、春香は思った。


ああ、これはブラコンというやつだな、と。



「………ところで、お兄様」



若干置いてきぼりのシャルルに対し、先程まで抱きついて甘えていたソフィアが、対話の為に距離を取る。



「単刀直入に言います、お兄様」



その表情は、幼いながら真剣に話をするという顔。

実は生きていた実の家族に会いに来た、というだけではないようだ。



「………私と一緒に、新天地に来て欲しいのです」



ソフィアの話は、こうだ。


ウィーズのアマデウス進行により、惑星アマデウスの歴史は終わりを告げた。

王族も貴族も処刑され、国民は彼等の兵力として徴収された。


だが僅かではあるが、ソフィア達のように一部の貴族や国民は惑星脱出に成功。


ウィーズが本土攻撃を重点に置いた為か、宇宙軍もほぼ無傷でウィーズから逃げる事に成功した。


今は惑星アマデウスより数千光年離れた場所に発見された「ルデア星」に、その身を落ち着けているらしい。



「………お兄様には、セイグリッターと共に人々の希望になって欲しいのです………お兄様が居れば、アマデウスは甦るのです」



ソフィアは、シャルルに対して深々と頭を下げた。

切実に、心の底から頼み込む。



「………私と一緒に、ルデア星に来てほしいのです」



共にルデアで、アマデウス復興の為に人々を導いて欲しいと。

つまる所、アマデウスの新たなる国王となって欲しいと。


兄ブライが戦死した今、アマデウスの王位継承者はシャルルしか居ない。

今、残されたアマデウスの人々の希望となれるのは、シャルルしか居ない。


シャルルもきっと、それを分かってくれる。

ソフィアの記憶の中のシャルルは、いつも優しかったから。

自分と一緒に、アマデウス復興を成し遂げてくれる。


そう、ソフィアは思っていた。



「………ごめん、ソフィア」



シャルルの口から出たのは、謝罪の言葉だった。


嘘でしょ?と言うように唖然とするソフィアの前で。



「ルデア星には、まだ行けない」



はっきりと、言った。

ルデア星には行けないと。



「ど………どうしてです?お兄様」



戸惑い、慌て、ソフィアが訪ねる。

その目尻は下がり、表情は不安げで、泣き出しそうだ。



「落ち着いて、ソフィア」



そんなソフィアを、シャルルは肩にポンと手を置き、優しくなだめる。

幼い頃、ソフィアが泣きそうになるといつもそうしていたように。



「………ソフィア、この地球はね、この地球もね、ウィーズに狙われているんだ」



そうだ。

地球も、かつての惑星アマデウスのように、ウィーズの進行を受けている。


工作の為に機械兵が送り込まれ、最近ではインベイドベムが送り込まれるようになった。


ついこの間は、幹部クラスの人物………龍将軍ジャクスまでもが、地球にやってきた。


地球もデルタクローズのような巨大戦力を開発しているが、今の今まで地球がウィーズの手に落ちなかったのは、シャルルとセイグリッターが居たからだろう。



「僕が今、地球を離れる訳にはいかないんだ、わかるね?」



今、自分が地球を離れれば、地球は第二の惑星アマデウスになってしまう。

そうならない為にも、自分が残ってウィーズと戦わなければならない。


だから、自分はルデア星には行けない。

きっと分かってくれると思い、シャルルは言った。



「………どうして」



だが、それで納得ができるほど、ソフィアは大人ではなかった。

シャルルの言葉に対し、手を握り、震える。



「なぜ、そう言い切れるのですか!お兄様!」



ソフィアが、声を荒げて叫んだ。

ソレイオンのブリッジに、その声は木霊する。


いきなりの事に、驚くシャルル。

春香も、ウラヌも、従者達も、驚愕した。


ソフィアの瞳には、うっすらとだが涙が浮かんでいた。


シャルルには、どうしていいか解らなかった。

記憶の中のソフィアは、泣く事はあっても、声を荒げて叫ぶような事はしなかったから。



「見ず知らずの星の為に、戦い続けて………どうしてお兄様が戦わなくてはならないんですか?!地球の事は地球の人に任せればいいじゃないですか!故郷も両親も失ったお兄様が、どうしてそこまで業を背負う必要があるというんですか!?」



ソフィアは叫ぶ。

何故、シャルルが他人の星の為に戦わなくてはならないのだと。


春香は地球人として、聞いていて申し訳なく感じていた。

地球の事は、地球人がなんとかするべきなのだ。

それを、他所の星の、年端もいかぬ子供に戦わせている。



「………こんな事をしていては………お兄様はいつか死んでしまいます………」



直に、ソフィアの瞳に大粒の涙が浮かび、ぼろぼろとこぼれ始めた。


ソフィアは泣いていた。

唯一の家族が、戦いに身を投じなければならない事に。

たった一人の兄が、自ら死に向かわんとしている事に。



「………何故………ひぐっ………お兄様なのですか………私は嫌です………もう、家族を失うのは………」



シャルルもそうだが、ソフィアも長い間孤独の中にいた。

そして、死んだと思っていた家族が生きていて、目の前にいる。

そしてそれが、自ら危険と隣り合わせの事をしている。


ソフィアには、それが耐えられなかった。

シャルルを、心の底から慕っていたから。



「ソフィア………」



シャルルは、嗚咽をあげながらぼろぼろと涙を溢すソフィアに、どう言葉をかければいいか解らなかった。

ソフィアが、自分の為を思って泣いてくれていると、解っていたから。



「緊急事態です!」



重い沈黙の中、センサーで外を監視していた一人の従者が、沈黙を突き破るように声をあげた。


その場に居た人々全てが注目する中、従者は状況を話す。

それは。



「本艦の右舷80度、5キロ先にインベイドベム出現!真っ直ぐこちらに向かっています!」

「何ですって?!」



モニターに映されたのは、周辺のパトロール用に飛ばしていたソレイオンの小型偵察ドローンからの映像。


木々を踏み潰し進む、巨大な影。

アーマイゼに似た姿をしているが、背中には細長い盾のような装甲が追加され、爪はレイピアを思わせる鋭利で長いサーベルになっており、全体的なカラーリングは黄色く変更されている。



『グウウウ………』



モノアイを怪しく光らせ、アーマイゼを改良したインベイドベム「ホルニッセ」が、不気味に唸った。



「どうしてこの船の場所が………」

「ステルス機能は正常に働いてたのに………」

「恐らく、この船の残留粒子を追ったんでしょう、宇宙船の構成物質は大気中では目立ちますからね………」



ソレイオンには、インベイドベムと戦える程の大砲も防御機能もついていない。

狼狽える従者達。

そこに。



「僕がセイグリッターで………」



僕がセイグリッターで出る。

シャルルがそう言いかけた。

だが。



「私が行きますわ!」

「ソフィア?!」



それを遮るように、ソフィアが凛と言い放つ。

自分が出て、あのインベイドベムと戦うと。



「………別に、お兄様だけが地球に留まって戦わなければならない訳じゃありませんわ、私があのインベイドベムを倒し、それを証明してみせます!」



ソフィアは、セイグリッターとシャルルで無くとも、インベイドベムから地球を守れる。

だから、シャルルが地球に留まる必要は無いと言いたいのだ。

そして、だから安心して地球を離れろとも。



「こんな時に何言ってるんだ?!君を戦わせる訳には………」

「私だって大切な人を守る為に戦いたいのですわ!」



ソフィアが言い放った一言に、シャルルは返す言葉を失う。

ソフィアのその表情は真剣そのもの。

彼女は、本気だ。



「………私のウェンディムの準備を!」

「しかしソフィア様………」

「あの程度の相手、心配は無用ですわ!」



従者達の制止を降りきり、ソフィアは自分の専用機に向かい、ツカツカと歩いてゆく。



『………止めないのですか?』



ペンダント状態のデオンが、シャルルに問いかける。



「………ああなったソフィアは、もう誰の言う事も聞かないよ………彼女、頑固だから」



シャルルは知っていた。

他ならぬ兄妹だから、彼女の意思の強さも、その想いも。



「………そして、僕もね」



………それは兄であるシャルルも、どうやら同じのようだ。

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