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光輝士セイグリッター  作者: なろうスパーク
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第18話「英雄狂想曲・第二」

「………は?」



いきなり、ジャスティスマンが、自分の名前を言った。

榑井君と、はっきりと。


自分の知り合いにジャスティスマンは居ないハズでは?と、混乱する榑井。


それを前に、ジャスティスマンは自分の顔に付けている覆面に手をかけ、それを外した。



「………あっ!」



その途端、榑井の表情が変わった。

恐怖から、驚きへと。


覆面を外したジャスティスマンの素顔は、榑井のよく知る顔だった。

多少老けてはいたが、それは間違いなく、中学生時代を共にした学友の顔。



「………栗須(くるす)君か!?」

「久しぶりだね、榑井君」



ザ・ジャスティスマンの正体。

それは、榑井の旧友「宇栄栗栖(うえい・くるす)」その物だった。



「栗栖………君?」

「久しぶりだね、同窓会以来かな」



先程まで陰惨な殺人ショーをしていたとは思えないほど、爽やかに、自然に再開を喜ぶジャスティスマン………宇栄栗栖。


旧友との以外な再開と、その旧友がまるでサイコパスのようになった衝撃。

思考が追い付かず、混乱する榑井を前に、栗栖は話を続けた。


ある日、不思議な女に出会った事。

その女から、ジャスティスマンとしての力を授かった事。

今は仕事の傍ら正義のヒーロー・ザ・ジャスティスマンとして活動している事。


そして、数日前に起きた殺人事件は自分が起こしたという事………つまり、犯人が自分自身である事。



「君には特別に教えたけど、この事は誰にも言わないでくれよ?」



笑顔でそう言う栗栖を前に、榑井はコクコクと無言で呟いた。

あんな光景を見せつけられた後だ、同意しなければどうなるか。



「ありがとう、それじゃあ縁があればまた会おう!とうっ!!」



再び覆面をつけたジャスティスマンは、さっと飛び上がると夜空の彼方へと飛んでいった。


再び、静寂が辺りを支配する。


全てが終わった公園には、さっきまで人間だった無惨な肉の塊と、放心したままの榑井が残された。





………………





「………これが、僕の知ってる全てです」



話終わると、榑井は小さな声で、そう言い足した。


彼の話は、とても信じられる物ではない。

連続する殺人事件の犯人が自分の古い友人であり、しかもスーパーパワーを振るう超人であるなど、荒唐無稽にも程がある。


しかし、それを話す榑井の顔はとても辛く、嘘を言っているようには思えない。


それに、異星人の侵略兵器と、それと戦うスーパーロボットと、それを操る異星の王子様。

そんな非日常の中にいる春香からすれば、榑井の言っている事を一概に嘘とは言えない。


以前にシャルルが戦ったという「人間に取り憑くタイプのインベイドベム」がある事を考えれば、その同類の可能性がある。



「………信じてもらえない、ですよね、あはは」



そう言って笑う榑井は、どこか疲れていて、無理をして笑っているように見えた。



「はは、忘れてください………じゃあ、僕はこれで」



辛そうに笑った後、榑井は立ち上がり、その場から去ってゆく。


話を聞いてもらって楽になったのか、表情は先程よりも柔らかい。

が、根本的な解決にはなっておらず、その顔からは相変わらず辛さが透けて見えている。


その場に残された春香には、これ以上追求する事は出来なかった。


時計は、あと数分となった休憩時間の残りを、チクチクと刻み続けていた。





………………





仕事を終え、自身のアパートに戻った春香は、昼間榑井に聞いた事をシャルルに相談してみる事にした。


榑井からは黙っているように言われていたが、ウィーズが絡んでいる可能性もあるとなると話は別だ。



「………丁度、僕もニュースで見たのが気になって、少し調べてみたんです」



シャルルも、ニュースで見た連続殺人事件を見て、独自に調査をしていたようだ。


殺され方からしても、普通の人間がやるとは考えられない、それこそ超人にしかできないような事に見えたからだ。



「それで、今朝やってた事件の現場に行ってみたのですが………ビンゴでした」



シャルルのアイコンタクトを受け取り、バディモードのデオンが頭上に立体映像を映す。


そこには、今朝のニュースであった若者達が殺された事件の舞台となった路地裏の入り口が映っている。


警察の手により閉鎖されている為奥の方こそ見えないが、入り口近くにも残った血痕から、どんなに悲惨な事件が起きたのかは想像できる。



「そしてこれが、現場をデオンにスキャンさせた物です」



次に、路地裏の入り口に青いフィルターのような物がかけられる。

フィルター越しに見たそこには、血痕とは別に緑色の物が飛び散っている。



「この、緑色の物は?」

「地球外の物質です、僕が以前戦ったような、取り憑くタイプのインベイドベムを構成している物です」



それを聞き、春香はゴクリと息を呑んだ。

そしてこれで、はっきり解った。

この連続殺人事件の犯人………ザ・ジャスティスマンこと宇栄栗栖は、インベイドベムという事が。



「それと、気になって調べてみたんです」



次にデオンは、別の立体映像を映し出した。

東京の一角の地図だ。

そこに、赤い点がいくつか記してある。



「この印は、宇栄………ジャスティスマンが起こしたと思われる場所、見ての通り西に移動しています」



シャルルの言うとおり、事件現場を起きた順番に繋いでゆくと、西に移動しているように見える。



「そして、ジャスティスマンは主に若者、特に不良のような人達をターゲットにしている」



言われてみれば、ジャスティスマンの被害者は若者ばかりだ。


一度目は芸能人。


二度目は榑井の話の公園の若者。


三度目はある政治家の息子。


そして四度目は、今朝のニュースでやっていた街の若者達。



「ここから分析すると、次のジャスティスマンが狙う場所はある程度予測できます………恐らく、ジャスティスマンが次に狙うのは」



すっ、とシャルルが地図の一角を指差した。

そこは。



「………城夏自然公園(じょうかしぜんこうえん)?」



そこは、デートスポットやキャンプ場として有名な、城夏自然公園。

休日には家族連れで賑わうと、少し前に朝のニュースで流れていたのを春香は覚えている。


ジャスティスマンの進行予測地域にも当てはまり、なおかつ不良のような若者………所謂パリピに分類される人々も来るであろう場所。



「………それで、シャルル君はどうするの?」

「決まってるじゃないですか」



スッと立ち上がるシャルルに、映していた立体映像を消し、側に回るデオン。


これがただの連続事件なら関わる筋合いはないが、ジャスティスマンがインベイドベムなのだとしたら話は別。



「ジャスティスマンを倒します、倒して、これ以上の殺人はやめてもらいます」



そして、ジャスティスマンの愚行をこれ以上許すような精神を、シャルルは持ち合わせていなかった。





………………





東京の片隅に、その家はあった。

既に、この家を買った夫婦はこの世に亡く、残された一人息子が、この家の長として暮らしている。


そしてその部屋は、一般的な人間の住む部屋というには、あまりにも異様であった。


壁一面に張られた、アメコミヒーローのピンナップや新聞記事。

棚いっぱいに陳列している、古今東西のヒーローのソフビ人形。


ヒーローオタクの住む部屋と考えればそれまでだ。

だが、切れかかった蛍光灯に照らされた薄暗い部屋が、まるで黒魔術のような怪しさとなんとも言えない恐怖感を醸し出している。



その部屋の中心。

申し訳程度に置かれたちゃぶ台の前に、その男はいた。



「………おかしいな、何で誰もザ・ジャスティスマンを話題にあげないんだ?」



宇栄栗栖。


彼は、自らのジャスティスマンとしての活躍が話題になっていると考え、愛用のノートパソコンを使い、ネットで自分の事について検索していた。


ところが、誰もジャスティスマンを話題にあげていないのだ。

まるで、箝口令でも敷かれているかのように。



「んまあ、人知れず正義のために戦うヒーローというのもアリだろう!はははっ」



そう、宇栄は笑ってみせる。

………あれだけの事を何度も繰り返しておきながら、平然と。



手元にあった炭酸ジュースを飲みながら、宇栄は過去を思い出す。

力の無かった、昔の自分を。


昔から、宇栄は“正しい”人間であろうとしていた。


小学生時代、水筒の水を吹き出す遊びが流行っても自分はしなかった。

中学生時代、卑猥な話題で盛り上がる男子に「女子も居るんだからやめろ」と注意した。

大学生時代、皆が遊びに行く中一人卒業のために勉強した。

就活時代、亡き両親の言う通りに、家から近い会社に就職した。


食事の好き嫌いもせず、規則正しく生きてきた。


しかし、そんな生活を続ける内に、宇栄は孤立した。

正しく生きてきた宇栄は、社会から「つまらない人間」のレッテルを貼られた。


両親にも先立たれ、恋人も友達もいない日々を送る内に、宇栄の心は屈折していった。

それはいつしか、社会に蔓延する“悪”を憎む心へと変質した。


所謂リア充やパリピと呼ばれる者達。

正しく生きている自分に対して、平然と間違いを犯しながら、罰せられる事なく生きている連中。

そんな奴等が、宇栄には許せなかった。


だが、宇栄には彼等を罰するほどの権力も、力も、心もなかった。

宇栄は、ただの小市民だった。


だがら、毎日世の中の不正に怒りを燃やしながら、その怒りを心に仕舞い、仕事場と家を往復するだけの日々を送っていた。



あの日までは。



仕事を終えた宇栄は、何時ものように不倫をした芸能人に対する怒りの言葉を呟きながら、人気のない夜の町を自宅に向かって歩いていた。


すると。



「そいつが憎いのですか?」



不意に、声をかけられた。

若い女の声だった。


誰だと思い、声のした方向を向く。


そこには、一人の女が立っていた。

サングラスで素顔を隠し、コートのような服を纏った美しい女………ジャクスだ。



「なら、あなたにいい物があります」



(ジャクス)は、機械の心臓のような何かを取り出した。

そして唖然としている宇栄に向け、それを彼の胸の中に埋め込んだ。


全身に激痛が走り、身体の内側が熱湯のように熱くなる。

数分間の痛みを味わい、宇栄は耐えられずその場に倒れ、苦しみ悶えた。



気がつけば、痛みも苦しみも引いていた。

(ジャクス)の姿も、どこかへと消えていた。


何だったんだと思い、宇栄はふらふらしながら立ち上がる。

辺りには、それまでと変わらぬ静寂が広がっていた。



変化が起きたのはそれからだ。


日に日に、貧弱だった自分の身体はボディビルダーかアクション俳優かと見間違えるように鍛えられていった。


そして、飛行、怪力、透視といった超能力も手に入れていた。


宇栄は確信した。

自分に、正義を成す為の力を天が与えたのだと。

自分は、“悪”を倒す超人となったのだと。

自分は、正義を成すヒーローとなったのだと。


そして自らコスチュームを作り、ザ・ジャスティスマンは誕生した。


目を閉じれば、今まで倒してきた悪を思い出す。



一度目は、ある芸能人。

少し前に不倫が問題になってつるし上げられていたが、思ったより早く忘れられた。

たとえ世間が許そうが、ザ・ジャスティスマンは許さない。

事務所から出てきた瞬間、路地裏に連れ込んで首を引っこ抜いてやった。


二度目は、公園でオヤジ狩りをしていた不良集団。

成敗の最中にかつての友人に姿を見られたが、彼は信用できる人間だ。

特別に、自分の正体を教えてあげた。


三度目は、とある政治家の息子。

親父の裏金で外車を買っていたクソ野郎だ。

本人はあくまで自分で働いた金で買っていたと主張したが、ザ・ジャスティスマンにはそんな嘘はお見通し。

大好きな外車ごとスクラップ処理用の巨大プレス機に放り投げ、そのまま潰してやった。

楽な人生を送る“悪”には相応しい最後だ。


四度目は、女の子を集団で追い回していたチーマー達。

これも、悪には相応しい最後として、判別がつかないぐらいぐちゃぐちゃにしてやった。



さて、五度目となる成敗はどこでやるか。

宇栄は東京の地図をネットで検索し、場所を探す。


偶然にも、今まで西に移動するようにしてきた。

ならば、今回もそれに乗っ取って、西の方でやるとしようと考えた。


丁度よく、そこには“悪”が蔓延っていそうな場所がある。


城夏自然公園。


家族連れやカップルで賑わう、都心のキャンプ場としても有名な場所。

いかにも、倒すべき“悪”が居そうな場所だ。



「ふふふ………待ってろよ!今このザ・ジャスティスマンが成敗してくれる!」



ニヤリと笑い、宇栄は着ていた服を脱ぎ捨てる。

そこには、その鋼のような肉体を覆う、胸に「J」の文字が輝く派手なコスチューム。

そこにマントを羽織り、宇栄はただの小市民から“正義のヒーロー”ザ・ジャスティスマンへと変わる。



「行くぞ!とうっ!!」



血のような真っ赤なマントをなびかせ、独善と欺瞞に満ちた怪物(正義のヒーロー)は、夜闇の中へと飛び去っていった。


全ては、己の正義を成す為に。

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