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第五話 姿を変え始めた少年の世界

今回短いのでできるだけ早く次をあげられるようにします。

「君は一体…… 何者なんだ?」


 文月の問いは少女へのものであって、同時に巻菜へのものでもあった。


 ここ二日の間に起こり始めた文月の身の回りの不可解は、全て『寓話の森』を文月と環樹が訪れた後に起こったものだった。それらの関係は一切わからず、少女が何者かもわからないが、巻菜は何か知っている。文月はそう感じていた。


 巻菜の言葉通りならば文月たちは突然巻菜の店に現れたことになる。しかし、彼女にそのことについて驚く様子はない。それが少女の正体や自分の身の回りに起こっている不可解について、彼女が何かを知っている証のように文月には思われたのだ。


「あなたには、話さなければならないことがたくさんあるわね」


 巻菜が少女の顔を見て答えた。


「……」


 文月はかたずをのんで巻菜の言葉の続きを待った。頭の中はごちゃごちゃとして一向に混乱から回復する兆しを見せなかった。


「混乱するのも当然だと思うわ。順番に話をしなくちゃね。まずは…… そうね、その子とあなたに渡した本についてかしら?」 


 言われて文月が少女を見つめると、少女はうっすらと、うれしそうに微笑んだ。


 と、重要なこと――横断歩道での出来事の後では大したことではないようにも思われたが――を忘れていたことに文月は気がついた。


(結局本を家に忘れたままだ……)


 巻菜の話にはあの本も関係しているようであったし、本来今日ここを訪れる用事はそちらのはずだった。思い出すと、非常に申し訳ないような気がどんどんと募る。


「あの……」


 気は進まないが、巻菜の話が手元に『本』がある前提の場合もある。


「その…… 本なんですけど」


 文月は意を決して、


「家に忘れてきちゃいました……」


 文月の言葉を待っていた巻菜は、あからさまに驚いた顔をしている。


(やっぱりまずかったか! 急いで取りに戻れば間に合うか?)


 文月がそう思い、冷や汗を流し始めたところで店内に響いたのは巻菜の笑い声だった。


「あははははは。そうね。そうよね。まずはそこからね。ふふふ」


 ここまで大げさに巻菜が笑うところに、文月は驚きを感じていた。出会ってまだ数日の女性ではあったが、これまでの彼女の笑顔は、いつも不敵なモノを湛えていたように感じていたのだ。


「……なんだか話に関係があるみたいですけど、取ってきた方がいいですか?」


「ふふふ。そうね。これからする話にもだいぶ関係があるし、手元に欲しいわね」


 文月の冷や汗が酷くなっていく。


「でも大丈夫よ。ちゃんと連れてきてくれたから」


「え?」


 「連れてくる人があべこべになっちゃったけどね」と笑う巻菜は、文月と少女を交互に見た。


「さて、本題に入りましょうか」


 文月はまだ巻菜の言葉がよく理解できていなかったが、本人がいいと言ったのだからいいのだろう。と思考を切り替えることにいた。


 手をたたきながら巻菜は姿勢を正しくする。文月もそれに倣うと、少女も真似をして背筋を伸ばした。


「まず、あなたに渡した本についてだけれど」


「はい」


「最初にあなたがここに来たとき、次の日には何故かあなたの家にあの本はあった」


「前にも話したと思うけれど、あれはあなたのせいではないわ」


「……はい」


 文月が頷くと、巻菜は少し考えるように黙った。どのように切り出そうか考えるようなそぶりだ。


 少しの間沈黙が場を支配した。


 やがて巻菜は方針を決めたのか、「うん」とひとつ頷くと、


「あなたは魔法を信じるかしら?」


 と切り出した。


 再び沈黙が場に舞い降りた。





  

 

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