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僕の記憶の中の君と、また会える日まで  作者: 川桜あめ


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9/19

嬉しくて悲しい日

あれから僕は一人で他のクラスの催し物を見て周った。

昨年は啓介と渉と周ったし、1年生の時は当時同じクラスだった友達と周った。

まさか、高校3年生になって一人で文化祭を周ると思っていなかった僕は孤独のような寂しいような気持になった。

一人で縁日やダンス部のパフォーマンスを体育館で見たりした。

他のクラスでチョコバナナと焼きそばを買って食べた。

楽しくても美味しくても共有できる相手がいない。

それでも、どうにかその場をやり過ごした。


13時から自分のクラスでキッチン担当をするので、10分前に3年3組に来た。

教室に入って周囲を見渡すと佐々木さんがいた。

彼女と目が合い、僕に駆け寄ってくる。

「大野君、さっき言い忘れちゃったんだけど」

小さく囁くような声で佐々木さんはそう言う。

「ん、どうしたの?」

「今日、16時から吹奏楽部の発表があって。よかったら体育館に見に来てくれないかな?」

佐々木さんに吹奏楽部の発表を誘われて、さっきまで沈んでいた僕の気持ちは急に晴れやかになった。

「うん、分かった。見に行く」

「ほんと?ありがとう」


佐々木さんは三日月のような目で微笑む。

落ち込むことがあっても、彼女を見ると不思議と気持ちが和やかになる。

佐々木さんと話し終わり、僕はメイド喫茶で出すメニューを確認する。

コーヒーがほろ苦い恋の味という名前で、苺アイスが甘酸っぱい青春のときめきという名前か。

独特なネーミングセンスに少し驚く。

13時になり、前の時間帯の係の人と交代をする。

「おかえりなさいませ、ご主人様」

佐々木さんは教室の前に立って、お客さんを席に案内する。

彼女の可愛い声に僕はドキッとする。

顔を上げて佐々木さんの方を見ると、そこには啓介と渉がいた。

二人はお客さんとしてやって来たらしい。


「あの、佐々木さん。一緒に写真を撮ってくれないかな?」

渉が顔を赤らめながらそう言う。

突然の出来事に僕は頭が真っ白になる。

「…え、私でよかったら」

佐々木さんは目を丸くして驚いている。

「よかった、ありがとう」

渉はとても嬉しそうである。

渉は優しそうな目でにこやかに笑っていた。

「よかったな、渉」

啓介はそう言い、渉の肩を叩く。

渉と佐々木さんが隣に並んで写真を撮る。

僕は二人の様子をじっと後ろから見つめる。


さっき、僕は佐々木さんに誘われて写真を撮った。

それなのに、なぜか渉が佐々木さんと写真を撮っている姿を見て悔しい気持ちが溢れる。

僕と佐々木さんは付き合っているわけでもないのに、渉に佐々木さんを取られた、そんな気分だった。

僕は二人の様子を見るのが辛くなって視線を外す。

「あっちでもう一枚撮ってもいいかな?メイド喫茶って書かれたあの看板を入れたくて」

渉が僕の真横にある看板を指差しながらそう言う。

「…いいよ」

佐々木さんがそう言い、二人は僕の真横に立ち並んで写真を撮る。

僕は二人の姿を見たくなくて、下を向く。

「渉、せっかくだから佐々木さんにLINE交換してもらったら?」

啓介が渉にそう言う。

意外な展開に僕は顔を上げる。

「確かに、ありがとう啓介。佐々木さん、LINEもいいかな?」

「あ、うん」

「ありがとう」

渉はにこやかに笑いながらそう言う。

渉がスマートフォンのQRコード画面を出し、佐々木さんが読み取る。

僕は二人の会話を聞けば聞くほど、胸が苦しくなっていった。


クラスの手伝いが終わり、疲れた僕は他のクラスの催し物で買ったたこ焼きを食べながら一人で外のベンチに座り休憩をした。

11月の風は少し冷たくて、僕の心を一層寂しくさせる。

学校生活はいつも啓介と渉と一緒に行動していたから、今日みたいに一人で過ごすことは初めてであった。

朝、二人に会った時にいつもよりも態度が冷たく感じたのは気のせいなのだろうか。

まさか、僕と佐々木さんが写真を撮っていたところを二人に見られていたりしないよな。


そんなことを考えていると、時間はあっという間に過ぎ去り時計を見ると15時半になっていた。

16時から佐々木さんに誘われた吹奏楽部の発表がある。

慌てて体育館に向かい、中に入る。

体育館は大勢の人で溢れていたが、どうにか前から6列目の席に座ることができた。

周囲を見渡すと、みんな二人以上で話していて楽しそうである。

なぜか、啓介と渉と一緒にいる時は他の人の様子など視界に入らないのに一人でいると周りが気になる。

16時になり、閉じていたカーテンの幕が上がった。

「みなさん、お待たせいたしました。吹奏楽部の発表です。」

司会の人がそう言うと同時に、吹奏楽部の発表が始まった。

僕は必死に佐々木さんの姿を探す。

彼女はステージの左の方で緊張した様子でホルンを吹いていた。

真剣な彼女の表情に目が釘付けになる。

僕はただ彼女の様子をひたすらと眺めていた。

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