思い出のラーメン
高校三年生のクラス替えで僕は初めて佐々木さんと同じクラスになり、彼女の存在を知った。
とは言っても、顔と名前が一致するようになった程度で会話をしたことはない。
当時、僕はバスケに夢中で佐々木さんを含めて周りの女子のことを考えた記憶など微量たりともなかった。
バスケの試合で強豪校に勝ちたい。
僕が通う白崎高校はバスケ部員が僕を合わせて5人。
全員、高校3年生であり後輩が中々入ってこないためバスケ部が今後存続できるかは危うい。
バスケ部で同じクラスの啓介と渉とは仲が良いが、バスケ部で隣のクラスの淳太と恒平とはあまり話したことはない。
しかし、高校1年生の時から頑張ってきたこの5人で優勝をしたい。
それを目標に、部活の後も一人で自主練に取り組んできた。
夏休みに入り、セミの鳴き声が鬱陶しい頃に高校バスケ夏のインターハイが行われた。
どうにか決勝試合までいくことができて嬉しかったが、そんな気持ちは束の間だった。
相手チームが強い。
強すぎる。
僕の気持ちとは裏腹に相手チームにボールを取られてばかりであった。
僕が部員からパスをもらい、シュートを決めようとすると毎回のように相手チームにボールを弾かれる。
そんなことが続き、申し訳なくなっていると試合は終了し白崎高校は負けてしまった。
僕のせいだ。
身体中は汗と冷や汗でいっぱいである。
汗をタオルで拭いていると誰かから視線を感じる。
キャプテンの淳太だった。
彼は顔が整っていて高身長でスタイルが良い。
おまけに運動神経が良くバスケも得意で、男女問わず人気者だから少し憎たらしい。
特に女子からの支持が厚く、今日みたいな試合の日の朝には10人くらいの女子が彼を中心に取り囲む。
試合中も彼女たちは「淳太」と書いたうちわを手に持ち、大きな声で彼の名前を呼び、応援していたから少し羨ましかった。
応援してくれる人がいると励みになりそうで、僕のことを応援してくれる人が一人でもいたらいいのにと時々思う。
そんなことを思っていると、淳太は険しい表情をしながら口を開く。
「途中までいい感じだったのに何をやっているんだよ、文哉」
「ほんとだよ、優勝できそうだったのに。文哉のせいだぞ、どうしてくれるんだよ」
真剣な顔で恒平も淳太に続けてそう言う。
二人に責められて、僕は急に現実に引き戻される。
僕はどうして大事な試合でミスを連発してしまったのだろうか。
僕がミスをしなければ優勝できたかもしれないのに。
申し訳ない気持ちでいっぱいになる。
「ほんとごめん」
自分でも情けないと思いながら声をどうにか絞り出して言う。
「もういいよ。恒平、行こうぜ」
淳太は呆れた顔でわざと大きな足音を立てて歩き出した。
「ちょっと淳太、待てよ」
恒平は淳太の後を追いかける。
そして二人は体育館を出て行った。
「お疲れ。あいつらの言葉、そんなに気にするなよ」
「そうだよ、まだ最後の大会が残っているし。それに文哉の問題じゃないよ。相手チームがあの有名な泉原高校だったんだから仕方ない」
啓介と渉が僕に近寄って慰めてくれた。
温かい言葉を聞いて、少しホッとする。
「シュート決められなかったし、僕のせいだよ。本当にごめん」
先程よりは少し大きな声でそう言う。
「もう気にするなって。気分転換にラーメンでも食べて帰ろうぜ」
「いいな、そうしよう」
啓介も渉も僕のことを一切責めずに励まそうとしてくれる。
こういう時、二人と仲良くなれて良かったと改めて感じる。
「二人ともありがとう、ラーメン食べに行きたい」
「じゃあ、決まりな」
三人で横に並んで歩きながら、体育館を出てラーメン屋さんへと向かって行った。
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