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僕の記憶の中の君と、また会える日まで  作者: 川桜あめ


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13/19

ラーメンかキムチ鍋

バスケの最後の試合当日。

僕は朝から緊張していた。

最後のバスケの大会が理由であるが、それだけではない。

啓介と渉の本音を知ってしまった以上、平然を装える自信などなかった。

昨日のことを思い出すと、頭が重く感じる。

それくらい、怖かった。

もうこの大会が終われば、部員たちと関わることはなくなる。

そう、自分に言い聞かせてどうにか試合会場に到着した。


僕は会場に着くと、佐々木さんがこちらに向かってきた。

佐々木さんの方が早く着いていたらしい。

「文哉くん、おはよう」

そう声を掛けられて、僕の口元は緩んだ。

「おはよう」

僕は平然を装い、挨拶を返す。

佐々木さんの顔を見ると、先程までの憂鬱な気分などはどこかに飛んで行った気がした。

彼女の存在だけが僕の救いだ。

今まで練習を頑張ってきた分、今日はシュートを決めて佐々木さんにかっこいいと思われたい。


「あのね、文哉くんに渡したいものがあるの」

佐々木さんはそう言い、カバンから青いハンカチを取り出す。

「ハンカチ作ってみたの。良かったら使って」

「え、ありがとう」

佐々木さんは少し照れたような表情でそう言い、僕はハンカチを受け取る。

佐々木さんに影響されて、僕も少し恥ずかしくなる。

青いハンカチの下の方には、バスケットボールの刺繍がされていた。

「え、これ佐々木さんが全部作ったの?」

「うん、刺繍が難しくて時間かかっちゃったんだけどね。昨日の夜、完成して。大会に間に合って良かったよ」

「すごいね、裁縫できるんだ。大切に使うね」

「時々、趣味で裁縫やるんだ。ティッシュカバーとか手袋作ってみたり」

「手袋も作れるの?佐々木さんは本当にすごいね」

「ちょっと文哉くん。さっきから佐々木さん佐々木さんって。心愛って呼んでよ」

そうだ、佐々木さんと下の名前で呼び合うって決めたんだった。

「ごめん、心愛」

咄嗟に下の名前で呼んでみたけれど、呼び慣れていなくて恥ずかしくなる。


その恥ずかしさをかき消すように、僕は話題を変える。

「そういえば、好きな食べ物とかある?」

「どうしたの、急に」

佐々木さんは目を丸くする。

「いや、そういえば佐々木さん…じゃなくて、心愛の好きな食べ物知らないなって思って」

「色々好きだけれど、一番好きなのはキムチ鍋かな」

「…キ、キムチ鍋?」

僕は目を見開いて佐々木さんを見つめる。

「そうだけれど、そんなに驚く?」

佐々木さんは僕を見つめてにこやかに微笑む。

「苺とかケーキとかかなって思っていたからなんか意外で」

「もちろん、フルーツとか甘いものも好きだよ。でも、あのキムチ鍋の辛さがやみつきになるんだよね。文哉くんは何が好きなの?」

「んー、僕はラーメンかな」

「ラーメンいいよね、私も好き。何系が好き?」

「家系かな」

「え、一緒。あ、じゃあさ、今度ラーメン食べに行かない?」


突然の展開に僕は胸が高鳴る。

「うん、行こう。あ、でも心愛が好きなキムチ鍋も気になるな。あまり食べたことなくて」

「え、本当に!」

佐々木さんが目を輝かせる。

「近いうちにキムチ鍋、食べに行く?」

「うん、行こう。約束だよ」

佐々木さんはそう言うと、指切りのポーズをする。

僕も指切りのボーズをして佐々木さんの小指に合わせる。

彼女の指に触れると同時に、僕の心臓は跳ね上がった。


「私、そろそろ応援席の方に行こうかな。前の方の席で試合観たいから良い席取りに行かないと」

「そっか」

「試合応援してるね」

佐々木さんはにこやかに笑みを浮かべながら僕の目を見てそう言う。

「ありがとう」

僕も笑みを浮かべて佐々木さんに言った。

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