表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
14/36

第13話 水族館で③

 

 夕夜の姿が見えなくなって、はっと我に帰る。


「え? 明日?」


「ユーヤと図書館行くんだ?」 


 隣に座る鏡夜が、私の手から落ちかけたポテトを箱ごと受け取る。


「え、誰が?!」


「ハナでしょ?」


「なんで?!」


「本当は図書館に誘ってたから?」


「え、無理……」


「なんで? キスされそうだったから?」 


 なんでもないことみたいに言う。


「⋯⋯見てたの?」


「まぁ、ユーヤが来るのは分かってたし」


 しれっと返される。


「さすがに俺もユーヤいなきゃハナを一人にはしないよ」


「なんかあるんだったら、二人にもしないでよ」


「だから、ちゃんと止めてあげたでしょ?」


「〜〜っ!」


 言葉にならず、顔を両手で覆う。

 たぶん、今すごい顔してる。


「……やっぱり、あれってそうだったのかな。私の勘違い?」 


 指の隙間から小さく聞く。

 私の勘違いならまだいい。


「俺が止めなきゃ、まぁ、してただろうね」


「なんで……そんな急に……」 


 そんなの、私の知ってる夕夜じゃない。


「言ったじゃん、ユーヤには気を付けろって」


「それは……」


「弱ってる男に、あんなキョリで近づいたハナが悪いよね」


「⋯⋯」 


 どこから見てたの、この兄。


「夕夜はそういうの⋯⋯人畜無害だと思ってた」


「はは。そんな男いねーよ」


 笑われる。

 でも、全然笑えない。


「夕夜に限って、理性失うとかある?」


「それだけのことだったんでしょ」


「ここに何があるの?」


「さぁね。魚見過ぎて、トリガー外れたんじゃない?」


「⋯⋯何のよ?」


 あんな夕夜、見たことない。


「夕夜、大丈夫かな」


「まだユーヤが心配なんだ?」


「だって⋯⋯弱ってるんでしょ?」


 あんな顔、初めて見た。


「まぁ、自分でここに来てたくらいだし大丈夫でしょ」


「……」


「あいつなりに乗り越えようとしてんだよ。明日には戻ってるって」 


 少しだけ、優しい声。


「気になるなら、ちゃんと本人に聞きな」


 珍しくまともなことを言う。

 顔を上げると、にっと笑った。


「まぁ、未遂とはいえハナに手を出したらどうなるか――」


 肩をぽんぽんと叩かれる。


「あとで俺が灸据えといてやるから」 


 ははは、と笑う鏡夜。 

 止めることも、頼むこともできず。


「……お手柔らかに」


 それだけ言った。


 そのあとは――


 イルカショーも。

 ペンギンも。

 ウミガメも。


 なにを見ても、上の空だった。


 ――明日。


 どんな顔で会えばいいんだろう。 

 目、合わせられるかな。

 夕夜は、どんな顔で来るんだろう。 


 そればかり考えてしまう。


 ――心臓、もつかな。



「鏡夜ぁ。明日、暇だったりしない?」 


 帰りの電車。

 鏡夜の肩にもたれて、半分眠りながら聞く。


「えー、全然暇じゃなぁい」 


 スマホをいじりながら、適当な返事。


 ……絶対、暇なくせに。


「⋯⋯いじわる」 


 ⋯⋯玲香に相談でもしようかな。


「やめときなよ、それはユーヤがカワイソウ」


「それ霊力?」


「いや。普通に分かるよ」


 考えすぎて、頭が重い。

 そのまま、くたっと体を預ける。


「起こしてあげるから、寝てていいよ」


「う〜ん⋯⋯」


「はは、役得」 


 肩を抱き寄せられる。

 あったかい。



「まぁ……あれはさすがに」


 小さな呟き。


「ユーヤにはキツいよなぁ」  



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ