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我も友達がほしい3

 二階に上がり、なんとか女子生徒の姿を捉える。

 先ほどの会話の通り資料室に入ってくのを確認してから静流はすぐさま入室した。

 他は外から観察する。


「こんにちわー」


 愛想よく挨拶する静流だが、突然の来訪者に女子生徒は驚きを隠せない。


「えっ? は、はい。こんにちわ」


 挨拶を返され、にっこりと笑う静流。

 女子生徒は静流の思惑など分からず、とりあえず愛想笑いを浮かべる。


「えーっと、なんでしょうか?」

「私の友達になってくれないかしら」


 前触れもなくいきなり本題に切り込む。

 当然急に言われて笑顔で「はい喜んで!」と言う訳もなく、目を白黒させる。


「と、友達? え? 先輩のこと誰かもわからないんですよ?」


 不躾なことをされているのに、ちゃんと会話をしようとしてくれる。

 おそらく頭のおかしい人と認定し、なるべく変な気をおこされないように慎重に静流を扱っているのだろう。


「そんな、私はあなたのことなんでも知ってるのに」

「……え?」


 その一言で彼女の表情は強張った。


「あの女の子、警戒した猫みたいになってるね」

静流先輩(あの人)の言葉選びのセンス壊滅的ですね」

「というか、静流はあの女子生徒のことを知ってるのか?」

「あの人は天神あまがみ巫女乃みこのさん。我と我が友と同じ一年だ。清純な見た目とおしとやかで人当たりもいい。我らの学年ではトップの人気者だ。な、我が友」

「……あー、まぁ」

「なんだ我が友。歯切れが悪いぞ。天神さんと何かあったのか?」

「何もない……ただ同じ中学校なだけだし、さらに言えば接点もないし、同じクラスになったこともない」

「ならなぜそんな微妙な顔を?」

「……本人はまったく気付いてないだろうなって思っただけだ」

「つまりかなりの人気者だから静流が知っていてもおかしくないってことを美夜佳は言いたいんだな」


 楓は納得したようで、再び静流と巫女乃の動向を伺う。

 じりじりと静流から距離を取り、両手をやや広げて中腰で構える巫女乃は逃げ道を探す。

 その姿は千百合の言う通り、警戒した猫を彷彿とさせる。

 目に見えて警戒されていることに静流はため息を一つ吐く。


「仲良くなりたいだけなのに。傷ついちゃうわね」


 と口で言うものの、不敵な笑みを浮かべて例の手帳を取り出す。


「な、なんですかそれ?」

「ん? これは友情ノートよ。あなたと仲良くなるためにはどうするべきか聞いてあるの」


 目の前で頭のおかしい発言をする先輩に巫女乃は恐怖する。


「えーっと……」


 ぺらぺらと手帳をめくるのに気を取られている静流。

 これはチャンスとばかりに巫女乃は静流の後方の扉に視線を向け、走り出す。


「あー、これね! 『一年二組』」


 静流の言葉で呪術にかかったように巫女乃の足がピタリと止まった。

 その様子を楽しむように静流は次を唱える。


「『無人の教室』『後ろから二列目』『窓際の席』」


 次々と単語を並べられた巫女乃の顔は青くなり、体は震え、全身に不安や恐怖による発汗が見え始める。


「『机の角』……『スカートを━━」

「わかりました! 友達になりますから! どうかそれ以上は!」

「まぁ! 嬉しい! よろしくね巫女乃ちゃん」


 土下座をする巫女乃と笑顔でそれを見下ろす静流に友情が芽生えた瞬間だった。


「で、では、私は用事があるので、これで失礼します……あの、さっきのは、どうか、ひ、秘密に」

「もちろんよ! 私達は友達だもの!」

「そ、そうですよね。あはは……」


 秘密を握られてたことにより、経験したことのない衝撃を受けた巫女乃は扉の影に隠れていた四人に気づかなずに、ふらふらと危ない足取りで下へと降りていった。


「ほら、友達が出来たでしょ?」

「奴隷の間違いですよね?」

「そんなことないわよ? ちゃんと見てたでしょ。対等な立場で丁寧に接してたのを」

「うんうんそうでしたね。一度関わったら骨までしゃぶりつくしそうな悪人ムーブでしたね」

「なぁ、静流。さすがにその友情ノートを使ってまで私は友達作りはしたくないよ」

「我も」


 ボッチの二人もドン引き。


「あらそう。仕方ないわね」


 しかしそんな反応をされても静流が傷つくこともなく、淡々と手帳をしまう。

 無関係だったはずの約一名に理由のない悲劇がふりかかったが、これで静流の友情ノートの検証は終えた。

 全員一度部室に戻り、再度ホワイトボードを目の前にする。


「結局まともなのは千百合の意見だけか」

「さらっと俺の意見は否定ですか」

「実際に同じような経験をした美夜佳に友達が出来てないんだから当然だろ」

「だからそれは━━いや、そうですね。そういうことにしましょう。もう色々面倒なんで」


 疲れた様子の進は深々とソファーに座り込むと天井を見つめる。


「やっぱり我には友達作りは難しい。結局我の友達は我が友しかいないのか」

「俺をカウントするな」

「いや、そうでもないぞ」


 進を無視して話に割り込む楓は美夜佳に優しく微笑んだ。


「ほら、ここにいるじゃないか。私達フリーダブは仲間であり、友達だろ? …… 進君、なんだその悲しそうな目は。静流はなぜ口元を押さえてるんだ? 千百合、こっちを見ろ。美夜佳、なぜ首を傾げてるん━━このやりとり最近したよね!? そんなにも私の心の傷をえぐりたいの!?」

「はいっ!! ……あ、しまったついうっかり」

「ついうっかりで元気よく答えるなー!」


この後すぐに鐘がなり、泣き喚く楓を置いて進は帰るのであった。

読んでくださり、ありがとうございます

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