我は友達がほしい2
「青春真っ最中の高校の部活内容が友達作りって。それを提案した部長はどう感じましたか?」
「言わないで。必死に精神を保つので精一杯なんだ」
遠くを見つめながら素直に答える。
「いいんじゃない? どうせ活動内容なかっただろうし」
「そうそういつも通り特に決めてなかったと思うわよ」
「たしかに、考えてみれば今までで一番ちゃんとした内容ですね。偉いぞ星川」
「よく分からんが、我が友に褒められて我は嬉しいぞ!」
「泣くからな! それ以上言ったら私泣くからな!」
泣かれると面倒くさくなることは明白なので、議題に移った。
「ではまず、友達がいる者達に聞こう。どうやって友達が友達となったのかを」
「そんなこと言われても、話してたらいつの間にかですよ」
「私も」
「私もよ」
「そんなこと友達がいない奴に言っても無駄なんだよ! そのいつの間にかが一向に来ないんだからな!」
半ギレの楓に友達がいる組の三人は苦笑する。
「なら最初はどうゆうことで話すことになったんだ?」
「それは席の前後になったからよろしくって話しかけられて」
「それは席ガチャでSSレアな友人を引けたからだろ! そういう運命的な者じゃなくて! もっと理論的なものを提示してくれ!」
(友人を課金ゲーのキャラと同列にしてるよこの人)
「理論的かはどうか分からないけど、やっぱり趣味があると同じ趣味の人と話しやすくなるよ。私も小説読んでて話しかけられたし」
「それだ! そういうのが欲しかったんだよ!」
ホワイトボードに千百合の意見を書いてる最中、進は千百合にそっと耳打ちをする。
「ちなみにその話しかけてきた人とはどうなったんですか?」
「読んでいたとっておきの一冊を見せたら次の日から目を合わせてくれなくなった」
「失敗を参考例にしたら意味なくないですか?」
「次はないか!?」
ホワイトボードをバシハジと叩いて催促する楓。
最後まで付き合わなければ帰るのが遅くなると思い、楓が満足しそうな回答を出す。
「忘れ物をして隣の人と教科書を共有したりすると意外と仲良くなりますよ」
「嘘だ!」
進の意見を真っ向から否定するのは美夜佳だった。
「我が昨日教科書を忘れたから隣の同胞に頼んだら、教科書を我に渡して、さらに隣の同胞と机をくっつけて授業をしてたぞ!」
「あー、それは、まぁ」
「落ち着け美夜佳。あくまで進君の体験談だ。全てが全て友達作りの参考になるとは限らない」
何か言いたげな進ではあったが楓が話を進めたことで、この話は終了。
まだ答えていない静流に問いかける。
「静流は何かないのか?」
「うーん、やっぱり千百合と進君の事例がほとんどだと思うわよ。私もそんな感じだったし……ただ、私は友達を作るための秘密兵器を持ってるわよ」
「「なんだって!?」」
ボッチ二人が倒れそうになるほど前のめりで詰め寄る。
「その秘密兵器とは一体!?」
「我らに教えてくれ!」
「どーしようかしらー」
もったいぶらせている静流を呆れた様子の進はため息混じりに話す。
「どうせ異性の写真を売りつけて築き上げたとかそんなものでしょ。
「まぁ! 失礼しちゃう。進君は私をなんだと思ってるの!?」
「守銭奴」
「言い返せないわね。でも、本当に写真じゃないし、物で釣るとかでもないのよ」
「じゃあその秘密兵器を見せてもらいましょうか」
「いいわよ〜」
そう言ってブレザーのポケットから何か抜き取ると高々とあげた。
「ててーん! ゆ〜じょ〜の〜と〜!」
聞き覚えのある声調で自信たっぷりに出した割には、手にはボロボロの黒い手帳が掴まれているだけ。
それを見た進はさらにため息を吐く。
「なんですかそれ? 名前を書けば友情が芽生えるとかそんな洗脳系アイテム何ですか?」
「違うわよ。ただ、友達になるための必要なことが書かれてるだけ」
「な、中身を見せてくれ!」
必死に手帳の内容を読もうと静流の手から奪おうとするも、ひらりとかわされてしまう。
美夜佳も協力して奪取を試みるが、ことごとく避けられてしまう。
「ダメよー。これは大切なものなの」
「ならお金を払う! それでどうだ!?」
「我も!」
「うーん……残念だけど、お金で売ることはできないの」
進とここまでのやりとりに不参加だった千百合が思わず目を見開き、立ち上がった。
「金の亡者で売れれば人の心売りそうな高宮先輩が」
「売れるものなら自分の体でも売りそうな高宮が」
「「お金よりも優先した!?」」
「ちょっと二人共。後でお話ししましょうか」
鬼を宿した静流の顔に、血の気を引いた二人は視線を横にずらして口笛を吹く。
「少しぐらい見せてくれても……あ、わかった。本当はそこには何も書いてないんだろ」
「そうなのか!? あの友情ノートとはまやかしだったのか!?」
「心外だわ。私は嘘なんて言ってないのに」
「大体、書いてあることに従えば友達が作れるなんて、子供騙しにも程がある」
「そ、そうだな。そんな子供騙しで我らを騙せると思うな!」
(さっきまで必死になって奪おうとした二人とは思えない発言だな)
自分への注意がそれたことで傍観者に徹する進。
すると静流は手帳など嘘っぱちだと言う二人にこう言った。
「なら今から証拠を見せてあげる」
静流は部室を出ていき、楓と美夜佳は期待に胸を膨らませてその後を追う。
残った二人も部室の留守番は布団の中の仁美に任せ、不安を抱きながら続いた。
「さて、どの子がいいかしら〜」
別の校舎に移り、廊下を歩きながらまるで値踏みするようにすれ違う生徒や教室に残っている生徒を観察する静流。
「あのグループなんてどうだ?」
そう言って楓が注目したのは四人ほどの男女混合グループ。
しかし静流は一瞥しただけでスルーした。
「ダメ。これを使うにはサシじゃないと意味がないの」
微笑む静流だったが、その目には妥協など許さないような真剣な眼差しだった。
「ならあそこにいる男子生徒はどうだ?」
美夜佳が通りがかった教室で席に座っている男子生徒を指差す。
課題をしているのか、それとも自習をしているのか、はたまた勉学には関係ない趣味なのかは定かではない。
何にせよ、静流の求めているサシで話すことは可能と思われた。
しかし、またしても静流はスルー。
「悪くはないけど、教室に他の人がいたからダメ。周りに誰もいない場所で一人じゃないと」
行き交う人を横目で観察しながら廊下をどんどん進んでいく静流。
その横で何度も楓と美夜佳が『あの生徒はどうか』『あさこにいる生徒は?』と提案しても全て横切る。
そうしているうちに職員室の前まで来ていた。
職員室前には生徒はほとんどいない。
「なぁ静流。この時間じゃここには生徒はほとんど来ないって」
「……そうでもないわよ」
何が起こるのか予知したように言う静流。
次の瞬間、職員室の扉を開けて出てきたのは甘栗色の長髪の女子生徒。
白百合がとても似合いそうな清純で可憐な可愛らしい女子生徒の手には少し重そうなダンボールが。
そして後に続いて女教師が申し訳なさそうに女子生徒を見つめてこう言った。
「いいの? 運んでもらって」
「いいんですよ。これぐらい」
女子生徒は嫌な顔は一つしていない。
むしろ笑顔で返事をした。
「これを二階の資料室に置いてこればいいんですよね?」
「ええ。よろしくね」
女子生徒はその足で近くの階段を駆け上がり、女教師はその姿を見送ってから職員室に戻った。
「……みーつけた」
口の端で舌舐めずりをした。
「静流?」
「あの子にしましょう」
決定事項のため、誰がなんと言おうと後を追う静流。
他の皆も後を追う。
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