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我は友達がほしい1

 一番乗りでフリーダブにやってきた美夜佳はじっと待っていた。

 数分して部室の外から微かだが、誰かの足音が聞こえてくる。


「あら、今日は美夜佳ちゃんが一番なのね」

「高宮先輩こんにちわ」


 挨拶を交わすと、静流は空いてるソファに腰を下ろす。

 再び足音が聞こえてくる。


「高宮に星川さんか。まだ月城も坂本君もきてないの?」

「我と高宮先輩だけだ!」

「それなら本読みながら待つかな」


 そう言って官能小説を読み始めた。

 三度部室の外から足音が。

 その足音を耳で拾った美夜佳は突然ソワソワしだすと、耐えられずに立ち上がって扉の近くで構える。

 足音は扉の前で止まると、扉が動き始めた。


「我が友ー!」


 扉が開いたと同時に飛びかかるが、扉の先には誰もおらず、そのまま壁に激突した。

 その隙に扉の影に隠れていた進が入室すると、スムーズに扉の閉めて鍵をかける。


「こんにちわ」


 何事もなかったかのように挨拶すると、二人も特に驚いた様子もせずに挨拶をした。


「我が友? おーい我が友。我がまだ入ってないぞ? 鍵を開けてくれー。我が友? 我が友!?」


 ガタガタと揺れる扉。

 その度に「我が友ー!!」と叫ぶ声が扉越しから響く。


「早く入れてあげなよ」

「そうよ。かわいそうでしょ?」

「だって開けたら鬱陶しいですし」


 しかし進が開けずとも、外から解錠され扉が開く。

 そこには部長である楓に手を引かれ号泣している美夜佳の姿が。


「なんの騒ぎだ? 美夜佳が外で泣いてたが」

「ひぐっ、我がども〜」

「あ、進君が美夜佳ちゃん泣かせた」

「泣ーかせた、泣ーかせた。坂本君が泣ーかせた」

「小学生ですか。そもそも星川も僕にべったりし過ぎなんですよ。こういう絡みはクラスの友人とかにするものでしょ」


 と、進が発言した途端に、先ほどまで号泣していたのが嘘のようにスッと泣き止む。


「我の友は我が友だけだ。我が友以外の同胞(同級生)に友はいない。たしかに友は多くて困らないかもしれないが、関係の浅い数多の友を作るよりも一人の切れない絆で結ばれた我が友がいればそれで我は充分だ。だから我が友以外の友がいないことになんら劣等感も焦燥感も悲壮感も一切抱いてないからな」

「わかったからいつもの表情豊かな星川に戻ってくれ」

「でも少しぐらい仲のいい子はいないの? 体育の時間はペアを作るように言われるわよね?」

「やめろ! 我の前でその呪いの言葉を口にするな!!」


 狼狽る美夜佳の姿で体育の授業の美夜佳の姿が容易に想像できる。


「やっぱ星川、ボッ━━」

「ち、違う! 我との力に釣り合う人間が先生しかいないだけだ! 本当だもん!」


 必死に否定しても喋れば喋るほど可愛そうな生き物へと変貌していく。


「まぁまぁ、そう強がらなくてもいいじゃないか。それに美夜佳もこれから友人ができていくさ」

「でも部長も『ボッチ!』ですよね。だって昨日も学食行ったら『ボッチ!』でしたし、俺が見かけるといつも『ボッチ!』ですし、二年生なのに『ボッチ!』の部長が言っても慰めにもならないですよね?」

「やめて坂本君。もう月城息してない」

「ついでに美夜佳ちゃんも」


 ボッチ二人組は膝から崩れ落ち、項垂れる姿はまるで抜け殻のようだった。


「そういう、進君はどうなんだ? 散々私達のこと言ってるけど、進君に友人がいるとは思えない」


 ゆらりと立ち上がった楓。

 それに続き美夜佳も不敵な笑みを浮かべながら立ち上がる。


「そうだ。我が友だってボッチなんだろ? 我が友のように平気でメンタルブレイクしてくる奴はボッチに決まってる。それでも我は見捨てないぞ。なんたって我が友だからな」

「先日一緒にカラオケとボーリングに行きましたけど」


 トドメを刺され、死体が二体床に転がった。


「坂本君って、意外と交友関係を広げてるんだね」 

「意外とは失礼な。僕だって友人くらいいますよ」

「その人達は、まともな人よね?」

「さっきから先輩方失礼すぎませんか?」

「う……うぅっ」


 死体になった二人から唸るような声が聞こえると、次の瞬間には大声で泣きだす。


「うわああぁぁぁぁん! 私も友達欲しいよー!」

「我もペアを作りたいよー!」

「なんだ、何事だ。廊下まで声が聞こえてるぞ」


 遅れてやってきた仁美が睡眠不足の目で二人を見つめる。


「たく、また月城と星川か。今度はなんだ?」

「友達が出来なくて泣いてるんです」

「そんなことか」

「そんなことではないですよ!」

「我らにとって死活問題だ!」

「そんなの話しかければいいだろ。そうでなくても、隣に座ってる奴に挨拶程度するだけでもきっかけは十分作れるはずだ」


 まともな意見を述べると騒いでいた二人がピタリと止まった。


「そ、それは……なんだか、恥ずかしくて」

「まぁ、少しずつ慣れていくんだな」


 もじもじする美夜佳の頭に優しく手を置く仁美。


「私はいつもやってるんですけど? それをした上で友達が出来てないんですけど? みんな苦笑いを浮かべるんですけど?」

「お前は自己紹介で『わたしぃ月城楓でぇす! みんなとぉ同じクラスになれてぇチョベリグ! これからぁマブダチにぃなってね!』って言ったせいだ」

「今時の言葉を使えば仲良くなれると聞いたから実践しただけですけど」

「お前何歳だよと言いたくなる死語が満載のせいで私以外内容が理解できてなかったぞ」

「バカな!? ちゃんとお母さんが学生の頃に読んでた雑誌を借りたのに!」

「だからだよ」


 仁美と楓がコントのようなやりとりをしている最中、千百合に疑問が浮かんだ。


「話かけるのは恥ずかしいって、ならなんで坂本君には積極的に話しかけれたの?」


 すると美夜佳は胸を張って答えた。


「我が友とは友になる運命だったからな!」

「初対面の相手に運命を感じられてたとか恐怖しかないんだけど」

「いや感じてたんじゃなくて、そもそも決まってたことだろ?」

「……ここら辺に精神科ってありますか?」

「我は正気だ!」

「正気の奴がそんなこと口にするはずないだろ」

「決まってたもん! この部に入れば部員は無条件で友達になるって部長が言ってたもん! だから入ったんだもん!」

「部長、何詐欺ってんですか」


 不意に呼びかけられ、体をビクッとさせる。


「な、なんのことかなー? 実際二人はちゃんと仲良くなってるし、嘘なんかついてないよー」


 冷や汗を滝の如く流す楓に進は冷たい視線を注ぐ。


「でも僕が入ってなかったらどうしてたんですか」

「何を言っているんだ? 我よりも先に入部していたのだろ? さすがに友が出来るとはいえ、同胞がいない部に入部するのは肩身が狭いからな。その辺は事前に尋ねてある」


 と、供述されたことで、楓は進の顔を見ることができない。


「あれれ〜? おっかしいぞ〜? たしか部長、僕と初めて会った時は入部してくれる人が一人しかいないとか言ってたような? 変だな〜? ねぇ?」


 射殺さそうなほどの鋭い視線を送る進はいつもよりもワントーン低い声であえて尋ねるように言葉を発する。


「……部長、もしかしてあの時同胞がいるというのは嘘だったのか?」


 進に続いて美夜佳も冷ややかな目で楓を捉える。


「……すいませんでした。部員がほしくて嘘をつきました」


 そう言いながら綺麗な土下座をする楓。

 しばらく蔑んだ目でその姿を見下ろしていたが、美夜佳の口からため息が漏れると重たい空気が和らぐ。


「もういい。我が友と出会えたのだからな。それに大勢の同胞がいても、どうせグループに馴染めなかっただろうからな。我が友一人でよかったのかもしれない」

「でも友達が進君だけってのもどうかと思うわよ? 

 やっぱりクラスに一人ぐらい友達は必要じゃないかしら」

「勝手に友達判定されるのはやめてほしいですが、高宮先輩の言う通りですね。クラスで友達を作れ。そして俺の負担を減らせ」

「そうしたいが、どうすれば」

「ならば今こそフリーダブの活動だ!」


 勢いよく立ち上がった楓がホワイトボードを引っ張り出すと、黒ペンでデカデカと字を書くとホワイトボードを叩いた。


「今回の活動は『どうすれば友達が作れるか』だ!」

読んでくださりありがとうございます

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[一言] 友達は作れないときはとことん作れないからね...
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