第21話 ラーメンが食べたい
久々でございます。飯テロあります。シュークリーム食べたくなります。
「.........あの......これは?」
「見ればわかるだろ?ドラゴンだよドラゴン」
何を当たり前なことを、と平然とした顔で返された。
いや、まあそうなんだけど...そうじゃない。
「それは分かってますよ...そうじゃなくて」
「ん?ここに来て怖気付いたか?まあ、箱入りのお嬢ちゃんみたいだしな」
なんかちょっとイラッときたぞ。
なんだ箱入りのお嬢ちゃんって。
箱入り娘より進化してんじゃねぇか。
「あ、いや、そういう事じゃなくて。ただ、なんでドラゴンを.........食べてるのかなーって」
そうなのだ。
俺──もとい私は今、あの百合王女に命令されてドラゴン狩りを行っている。
本当はもっと大事な調査があるらしいが、手始めにちょうどいいから、とこの任務を任されたのだ。ま、俺の出来ることといえば、疲れた兵士たちを癒す料理くらいだけど。
「ん?お前まさか、ドラゴン食べたことないのか?絶品だぞ、絶品。ほら」
ドラゴンの指らしき部分を棒にさして焼いたものを貪りながら、俺に焼いてあるもののうちの1本を差し出してきた。
「あ、ああ。ありがとうございます...」
ここで断っても心証を悪くするだけだからな。ありがたそうに貰っておこう。......美味しいらしいし。
「にしても、嬢ちゃん見てぇな可愛い子が俺らとこんな所に来るなんて、どんな風の吹き回しだってんだろうな?」
いまドラゴンをくれた人とはまた別の兵士さんが、そう呟いた。......呟いたって言っても、兵士さんたち元々声でかいから怒鳴ってるようにしか見えないけど。
それでも、彼らからすれば”呟いた”ということになるらしい。ツイート。
まあなんだ、ワイワイ盛りあがって少しでも戦いの疲れが癒せたならそれで俺はいいんだ。
まあ昔から料理だけは得意だったし、こればかりはな。
そうして、ご飯時が終わる。
名残惜しそうに別れを告げて戦場へと向かう兵士たちを見送り、今日の夕飯を何にするか考える。
うーん、カレーはルーがないから無理だろうし、となると.........ラーメンでも作るか。
麺から作ると時間かかるけど、まだ正午だし。
麺作りならちょうどいい暇つぶしにもなるから一石二鳥だな。あと俺が個人的にラーメン食べたかったのもある。
そそくさと、俺はラーメン作りを開始する。
生地を練り、必死に捏ねて、薄く伸ばす。
これだけの単純な動作だが、案外時間がかかる。
ここが、麺の味を左右するとても大事な工程だからな。
「......んっ、...えしょ、ほっ......ん」
いちいち動作が力むので、自然と口から声が漏れる。
......ちょっと、出てくる声がエロい...ってのは気にしないでおこう。俺変態じゃないもん。どうて────なんでもない。
こほん、丁寧に生地を練ったら、今度は薄く、厚さがどこも均等になるように棒を使って伸ばしていく。
ん?棒がどこにあったかって?
持ってきた調理用具の中にありました。ラッキー。
程よく伸ばしたら、折り紙を意識して折りたたんでいく。
よし。
俺は包丁を取り出し、麺を切り始める。
本音を言うなら本格的な専用の包丁的なあれを使いたいが、異世界にはないって分かってるから。諦めてるから。
......俺がそういうのを作れるスキルとか持ってたら、出来たんだろうな......はぁ。
ま、考えてても仕方ない。
〇蘭のとんこつラーメンの麺のように、細くすることを念頭に置く。
それだけを思考にとどめて集中し、太さが均等になるように淡々と麺を切っていく。
そうして、かれこれ何時間かが経ち...
「ふぅ、とりあえずは麺はこれでいいかな」
それっぽい感じの麺が出来上がった。
「あとは......」
俺は違うところで同時進行で準備していた、骨を煮込んだままの鍋の元に移動する。
さすがに豚は狩りではゲットしない...というか、任務で狩るような生き物ではないので居ないが、さっき兵士さん達が倒して持ってきたドラゴンの骨がある。
美味しかったし、弾力もある肉だったから、多分竜骨の出汁も美味しいに違いない。
そう信じて、こうやって骨を煮込んでいたわけなのだ。
「どれどれ、どんな感じ...かな?」
鍋の蓋を開けて、中をのぞき込む。
......そこには、程よく煮込まれた骨と、その出汁があった。
よし、成功だ。
となれば、残りは出汁と醤油スープを混ぜ、器によそえばスープは完成だ。
やっぱ、料理って楽しいな。
ラーメンを作るのは実に根気のいる作業が必要だが、それを楽しく感じている自分が確かに、ここにいた。
◆◆◆
「ふぅ......。疲れたぜ...」
「あの火蜥蜴、ちょこまか動くんで倒すの大変だったっすよ...」
「全くだ...過重労働で訴えてやるからな......」
などと口々に騒ぐ集団が帰ってきた。
兵士さん達が戻ってきたのである。
「おかえりなさい!お疲れ様です!」
なんて言葉を口にして、笑顔で出迎える。
「おお、ありがてぇ...やっぱ可愛い嬢ちゃんの笑顔ってのは癒しになるもんだ...」
それ。俺も同感。
女王様はともかく、ヴィオラの笑顔に俺が何度癒されたことか。
...ま、細かく言うとヴィオラじゃなくて紗苗の時なんだけど...、細かいことを気にしたらワ〇チコされるからな。
テーブルを囲み、お昼時のようにまたワイワイと談笑する兵士さん達。楽しそうだ。
話に夢中になっている間に俺は麺とスープを器によそい、トッピングとして持ってきていたネギを載せる。ネギあったのにはびっくり。もしかしたら初〇ミク居るんじゃないの?
兎にも角にも、出来上がったラーメンを1つずつ、兵士さん達に配っていく。
そのうちにラーメンが冷めてしまわないかが心配だが、どうやらみんなラーメンを見た事がないらしい。怪訝そうに眉間に皺を寄せている。
「はい、これで最後です」
最後の人にも渡し切ったところで、食事が始まった。
みんなに配り終わってから食べるとか律儀だよねみんな。給食を思いだすよ。
どうだろう。美味しい...かな?
美味いって言って貰えるかな...?
ドキドキしながら、兵士さん達がラーメンを啜るのを見守る。
自分ではまだ味見をしてないので、美味しくできたかは分からないんだが......。
「嬢ちゃん、ちょっとこっち来てくれや」
俺は、隊長らしき人に呼ばれる。
「はい。......不味かった...、ですか?」
口に合わなかったのだろうか。恐る恐る、訊いてみる。
すると隊長のみならず、全員が首を横に振って────
「違う違う。うめぇ食べ物を作ってくれた嬢ちゃんに、お礼が言いたかったんだ」
「......お礼...?」
ああ、と首肯する隊長。
「俺たちのために、こんなにもうめぇ食い物作ってくれて............ありがとうな。みんなの言葉を代表して言わせてもらうぜ」
俺の心配は無用だったようだ。
みんなはこの竜骨醤油ラーメンを気に入ってくれて、そしてお礼まで言ってくれて。
嬉しくてつい、目から雫が垂れた。
誰かに、これ程に感謝を伝えられたことがなかったから。
......だけなのかは分からなかったけど、俺は、顎に流れる水滴を確かに感じとっていた。
「はい、こちらこそ......ありがとうございます...」
俺は泣きながら、満面の笑みでそう返答した。
......この時、ここにいた全員の兵士が隊長のことを憎らしく思い、さらにいうと全員がヒスイに恋心を抱くのだが.........ヒスイには、そんなことは微塵にも分からないのだった。
ラーメン大好き。




