七人目
七人目は、生きていた。
見つけたのはミアで、葦の茂みの奥に脚だけが突き出しているのを引っ張り出したら、その脚が動いたのだという。悲鳴を上げなかったのは偉いと思う。あの子はランタンをこぼしたことも、死体の前で吐いたこともない。抱えるには大きすぎる男を土手の下まで引きずってきて、それから初めて俺たちを呼びに走った。
男は二十代の半ばで、左の肩から胸にかけて深く裂かれていて、傷の中に葦の切れ端と泥がびっしり詰まっていた。三日は水に浸かっていた体だった。皮膚が白くふやけて指の腹が波打っていて、それでも息をしていたのは、この季節の河が冷たかったからだとゲルダは言った。冷たい水は人を殺すが、殺しきる前に腐敗を止めることもある。
記章はなかった。切り取られた糸の跡が、肩の縫い目に六人と同じ形で残っていた。
ゲルダは男を野戦病院に運ばず、うちの馬房に運ばせた。理由を聞くと彼女は器具を煮る湯に目を落としたまま、この男には名前がないのだから、名簿のある場所に置けば必ず誰かが名簿と照らして、照らして無いと分かった瞬間にこの男は消えるのだと言った。無い者を消すのに手続きはいらない、と。
その夜、ダグが馬房の入口に座って、鋤を膝に載せたまま朝まで動かなかった。誰も頼んでいない。彼は「重い」でも「違う」でもなく、その晩は何も言わずにただ座っていて、俺が明け方に交代を申し出ると首を横に振っただけだった。
男が口をきいたのは、四日目の夜だ。
フェリクスが【聖句】を三度使って、そのたびに自分が壁にもたれて座り込んでいた。二等の治癒でも、腐りかけた傷を戻すのは別の話らしい。彼は自分の爪の状態が悪くなっていくのを気にする余裕もなくしていて、それを見て俺は、この男が本気で誰かを助けようとするときには本当に黙るのだと知った。
「……水」
男が言ったとき、ミアが飛び上がって水差しを倒した。
ゲルダが匙で少しずつ飲ませてやりながら、名前を聞いた。男は天井の梁を見ていて、しばらくしてから、掠れた声でキリアンと答えた。姓は言わなかったし、誰も聞かなかった。
「所属は」
俺が聞くと、キリアンは初めてこっちを見た。目の焦点が合うまでにずいぶんかかって、合ったあとで、彼は俺の胸の徽章を見た。烏の徽章だ。
それを見た瞬間に、彼は笑った。
笑いというより、喉の奥が鳴っただけのような音だった。
「烏に拾われたのか、俺は」
「そうです」
「じゃあ、俺は死んでるんだな」
ゲルダが匙を止めて、そんなわけがないでしょうと言った。生きているから飲めているし、生きているから痛がっているのだと。だがキリアンは首を横に振って、それから、天井に向かって喋り始めた。喋り方が奇妙だった。誰かに答えているのではなく、ずっと前から続いている話の途中から声を出したような喋り方だった。
「名簿から抜かれるんだよ、行く前に。抜いてから記章を切る。だから俺は先月の末から、この軍にいないことになってる。いないやつは死なないし、生きてもいない」
「何をしに行ったんですか」
「渡し」
彼は言った。
「そう呼んでる。誰が呼び始めたかは知らない。俺で四回目だ」
馬房の中が静かになって、外で誰かの馬が鼻を鳴らす音が聞こえた。
「四回」
「月に一度。月が細い晩に行く。舟は葦の中に隠してある。向こう岸の砂州に印があって、そこに置いて、置いたら別のものを取って帰る」
「何を置いて、何を取るんですか」
キリアンは答えなかった。
目を閉じて、しばらく息をしていた。ゲルダが脈を見て、こちらに小さく首を振った。今夜はここまでだという合図だった。
俺は立ち上がりかけて、それでも一つだけ聞いた。
「六人目の腹を裂いたのは、あなたですか」
彼の瞼が動いた。
「ヨーゼフだ」
キリアンは言った。
「あいつの名前はヨーゼフだ。あんたたちは何て書いた」
「不明と書きました」
「そうか」
彼は目を開けなかった。開けないまま、掠れた声で、書き直してくれ、と言った。




