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『限界社畜の異世界ホワイト転職〜『概念錬金』で村役場を無双していたら、元最強冒険者の料理人に胃袋を完全制圧されました〜』  作者: 月神世一


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ポンコツコンビを最速で稼がせるプロデュース術! 愛とキャッシュのゴッドチューブ配信

ポンコツコンビを最速で稼がせるプロデュース術! 愛とキャッシュのゴッドチューブ配信

 ポポロ村の中央広場。

 私は大きな羊皮紙をホワイトボード代わりに立てかけ、丸めたルナミス新聞で作った特製指示棒をピシャリと叩いた。

「いいですか、お二人とも。本日のミッションは『ゴッドチューブのライブ配信を利用した、超短期集中型のスパチャ(お布施)荒稼ぎ』です。目標金額は金貨十枚(約百万円)。これを本日の配信枠である二時間以内で達成します」

 私の目の前には、紫色の芋ジャージを着たルチアナ様とリーザちゃんが、緊張の面持ちで正座していた。

「に、二時間で百万円……? カレン、いくらなんでも無茶よぉ! 私の普段の配信なんて、同接(同時接続者数)五十人くらいで、スパチャなんて月に銅貨数枚がいいとこなのよ!?」

「そうですわカレンお姉様! 私のアイドル力をもってしても、一晩でそこまで稼いだことはありませんの!」

 弱音を吐くポンコツコンビに、私は冷酷な営業スマイルを向けた。

「だから、私がプロデュースするんです。あなたたちが売れないのは、素材が悪いからではなく、見せマーケティングと顧客体験(UX)の設計が根本的に間違っているからです」

 私は指示棒で羊皮紙の図解を指し示した。

「ルチアナ様、あなたは神様なんだから、見栄を張って『清く正しく美しい女神』を演じようとするからつまらないんです。天界の神々(リスナー)は、そんな退屈な配信に課金しません」

「えっ、じゃあどうすれば……」

「『借金まみれで泥水すする、ポンコツジャージ女神』というありのままの底辺の姿を晒すんです。他人の不幸と転落は、最高のエンターテインメントになります」

「鬼ぃぃぃっ! カレンの鬼! 私の神としての尊厳を切り売りしろって言うのぉ!?」

「尊厳と借金、どちらが重いか胸に手を当てて考えてください。ドナドナされたいんですか?」

「……売ります。尊厳、投げ売りしますぅっ」

 ルチアナ様が涙目で頷いたのを確認し、私は次にリーザちゃんを見た。

「リーザちゃん。あなたは以前、私の【概念錬金】で、お金を失う恐怖を『極上のバフ(幸福感)』に変換する究極のスパチャ体験を手に入れましたね?」

「はいっ! おかげで現物支給の差し入れには困らなくなりましたわ!」

「今回はそれを、天界のネットワーク越しに発動させます。ルチアナ様のゴッドチューブの回線を通じて、あなたの歌声に乗せて『課金すればするほど超絶気持ちよくなるデバフ(バフ)』をばら撒くんです」

 私はニヤリと笑った。

「つまり、『底辺女神への煽り(スパチャ)』と『人魚姫の歌声による強制的な課金快楽』のダブルコンボ。これで天界の暇を持て余した神々の財布を、合法的にすっからかんにしてやります」

 私のえげつない集金スキーム(社畜の知恵)を聞いて、ジャージコンビは青ざめながらもブルブルと震え、そして「や、やりますわ!」と力強く頷いた。

「よろしい。では、まずは舞台ステージの設営です」

 私は広場の中心に置かれた、三つの『使い古されたみかん箱』の前に立った。

 空中に右手をかざし、半透明のウインドウ『錬金術ラボ』を展開する。

「素材Aは、このみかん箱が持つ『底辺・路上ライブの概念』」

「素材Bは……前世の記憶から引き出した、【数万人の観客を熱狂させる、ドーム球場クラスの超絶ライブ演出の概念】!」

 二つの概念をウインドウにセットし、私は気合と共に叫んだ。

「――錬金、開始!!」

 眩い光がみかん箱を包み込んだ。

 光が収まると、そこにあったのはただのみかん箱――なのだが。

 なぜか、そのみかん箱の上に乗った瞬間、上空から神々しい七色のピンスポットライトが降り注ぎ、足元からは幻想的なスモーク(ドライアイスの霧)が吹き出すという、超常的な『ステージ空間』が錬成されていた。

「す、すごいですわ! みかん箱なのに、武道館のセンターステージのような圧倒的なオーラを感じますの!」

「音響も完璧です。さあ、ルチアナ様。エンジェルすまーとふぉんをセットして、配信開始のボタンを押してください」

 ルチアナ様が三脚にスマホをセットし、震える指で『配信開始』のアイコンをタップした。

『あー、あー……テステス。天界の皆さーん、こんにちは。女神ルチアナですぅ』

 ルチアナ様がみかん箱の上に立ち、引きつった笑顔で手を振った。

 スマホの画面には、パラパラとコメントが流れ始める。

【コメント】

『おっ、ルチアナじゃん。久しぶりだな』

『なんだその服? ジャージ? ダッサwww』

『神々しさゼロで草』

『背景、どこの田舎だよ』

 神界のリスナー(他の神々や天界の住人)から、容赦のない煽りコメントが飛んでくる。

 ルチアナ様が泣きそうになるのを、私はカンペボードを叩いて制止し、「泣き落としスタート!」と指示を出した。

「み、皆様ぁ……! 実は私、ソシャゲのガチャを回しすぎて自己破産寸前なんですぅっ! 今日までに借金を返さないと、マグロ漁船に乗せられちゃうんですぅぅっ! 助けてくださぁぁい!」

 ルチアナ様がみかん箱の上でジャンピング土下座をかました。

 その瞬間、コメント欄の流れる速度が爆発的に加速した。

【コメント】

『はぁ!? ガチャで破産!? アホすぎるwwwww』

『駄女神キタ━━━━(゜∀゜)━━━━!!』

『マグロ漁船www 神の末路がそれかよwww』

『最高にメシウマwww ちょっとだけお布施してやるよwww』

 ピロンッ!

 画面に『戦神アレス様から 1,000G のスーパーチャット!』という赤いエフェクトが表示された。

 天界からの投げ銭だ。

「よし、食いつきましたね。リーザちゃん、出番です! 歌いなさい!」

「はいっ! いきますわよーっ!」

 リーザちゃんがみかん箱に飛び乗り、マイク代わりに持った大根(源蔵さんの畑の産物)を握りしめた。

「皆さーん! 愛とキャッシュをくださいまし! 『Love & Money』!!」

 人魚姫の、脳髄を直接揺さぶるような圧倒的に美しい歌声が、広場に――いや、スマホの回線を通じて天界中に響き渡った。

 【概念錬金】で付与された『最強のライブ音響』が、リーザちゃんの歌声を何百倍にも増幅し、神々の鼓膜へと直接語りかける。

 さらに、彼女の持つ【貧乏神】スキルの効果が発動した。

【コメント】

『な、なんだこの歌声……!? すげぇ引き込まれる!』

『ジャージなのに天使に見えるぞ!?(※人魚です)』

『おい、さっき1,000G投げたら、なんか肩こりが治ったぞ!?』

『マ!? 俺も投げてみる……うおおおおっ! 課金したらめっちゃ幸せな気分になってきたぁぁっ!!』

 人魚姫の歌声と、お金を投げることで得られる強制的なバフ効果(快感)。

 それは、退屈な神界で刺激に飢えていた神々にとって、最悪で最高に依存性の高いエンターテインメントだった。

「ルチアナ様! ダンスです! リーザちゃんのバックで、必死に踊って煽りなさい!」

「や、ヤケクソよぉぉっ! 踊ればいいんでしょぉぉっ!!」

 ルチアナ様が涙を振り乱しながら、謎の盆踊り(芋ジャージVer)を踊り狂う。

 美しい人魚姫の歌声と、横で必死に盆踊りをする借金まみれの駄女神。

 そのあまりにもカオスでシュールな光景に、神界のリスナーたちは完全に熱狂の渦に巻き込まれた。

 ピロンッ! ピロロンッ! ピロロロロロロロッ!!!

 スマホの画面が、七色のスーパーチャットのエフェクトで完全に埋め尽くされた。

『美の女神アフロディーテ様から 50,000G!【そのジャージ、逆に一周回って最先端かも!】』

『海神ポイセドン様から 100,000G!【人魚ちゃんの歌声最高ぉぉっ! もっと俺から搾り取ってくれぇぇ!】』

『雷神ゼウス様から 300,000G!【ルチアナの盆踊り腹痛いwww 借金返済がんばれよwww】』

「す、すごい……! 滝のようなスパチャですわ!」

「うおおおおっ! 借金のカウンターが、みるみる減っていくわぁぁっ!」

 ルチアナ様とリーザちゃんが、みかん箱の上で歓喜の叫びを上げる。

 私は腕を組み、社畜の笑みを浮かべながらその光景を見守った。

 神様の財布の紐なんて、承認欲求とエンタメのツボさえ押さえれば、いとも簡単に弾け飛ぶものなのだ。

 そして、配信開始からちょうど一時間半後。

『――借金残高:0(完済)。ご利用ありがとうございました』

 大宇宙管理局の決済システムから、完済を知らせるファンファーレが鳴り響いた。

「お、終わった……? 返せたの? 私の借金、ゼロになったの!?」

「やりましたわ、ルチアナ後輩! 私たちの完全勝利ですわーっ!」

 ルチアナ様とリーザちゃんは、配信終了のボタンを押すや否や、みかん箱から崩れ落ちて抱き合い、ボロボロと号泣し始めた。

 たった一時間半のライブで、約百万円の借金を完済むしろプラスさせたのだ。私のプロデュース大成功である。

「お疲れ様でした、お二人とも。これで晴れて自由の身ですね」

 私がカンペボードを下ろして労いの言葉をかけると。

「……またとんでもねぇ錬金術を使ったみたいだな、お前」

 背後から、呆れたような、けれどひどく甘い声が聞こえた。

 振り返ると、ジークさんが大きなお盆を持って立っていた。

「あ、ジークさん! 見てくれましたか? 私たちのプロデュース大作戦!」

「あぁ。相変わらずデタラメな手腕だ。だが、お前が仕切ってる時の生き生きした顔は、嫌いじゃねぇよ」

 ジークさんはフッと笑うと、お盆の上から、とびきり美しく盛り付けられた『メロロンと太陽芋のひんやり特製パフェ』を取り出し、私の手元にそっと手渡した。

「ほら、プロデューサー殿への差し入れだ。頭使って疲れただろ、甘いもん食って休め」

「わぁっ! ありがとうございます! すっごく美味しそう……!」

 冷たいアイスと、メロロン(メロンのような果物)の爽やかな甘さが、疲れた脳に染み渡る。最高のご褒美だ。

「ジ、ジーク様ぁ! ライブを成功させた私たちへの差し入れはぁぁっ!?」

 床に転がっていたジャージコンビが、パフェに釣られてゾンビのように這い寄ってきた。

 ジークさんは心底どうでもよさそうな顔で、お盆の隅に乗っていた『水の入った木製ジョッキ』を二人の前にドンッと置いた。

「ほらよ。ポポロ村の冷たい天然水だ。借金がゼロになったからって、調子に乗るなよ」

「お、お水だけぇぇっ!?」

「格差社会ですわぁぁっ!」

 悲鳴を上げるジャージコンビを他所に、私はジークさんの作ってくれた甘いパフェを堪能し、至福の笑顔を浮かべた。

 とにもかくにも、これでルチアナ様の借金問題は一件落着だ。

 平和なスローライフが、ようやく戻ってくる――はずだった。

読んでいただきありがとうございます。

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