その4 アウローナ・フランクリンの供述
数多くの作品から目に留めていただき、ありがとうございます。
ユトゥルナ王国歴1026年5月25日、10時00分、最初に聴取するアウローナ・フランクリンを私たちは待っていた。
昨日はフィノーラ・リベル、ルフタ・ドナルドソンの後、夜会でクロエと話をしていた相手、モーロス伯爵、エトラ侯爵夫人、カメーネ子爵、デオドラ伯爵の順に供述を取った。しかし、ただの世間話しかしておらず事件に繋がる情報は得られなかった。
夫であるルフタは別にして、他の五人はハッキリと口にはしないが、クロエに対してあまりいい感情を持っていない印象を受けた。
レイチェルは皆があまりに余計な話ばかりするので少々うんざりしていた。事件に関係ない身の上話まで聞く必要があるのか? いくら人の話を遮るのがマナー違反だと言っても、事情聴取なのだから必要ない話はバッサリ切ってもいいのではないかと言うが、一見無関係と思える出来事もどこかで繋がっている可能性もある。
リベル子爵夫人フィノーラの話からドナルドソン公爵家の財政状況が垣間見られた。まさかあの名門公爵家が金に困っているなどとは思っていなかったし、まだそのような噂は流れていない、夫も把握していないようだ。クロエは相変わらず豪華なドレスに身を包み、高価な宝石をあしらったアクセサリーも……でも、そう言えば、あの夜は控えめだったかも、と夜会にいた私は思い起こす。
昨日は寝込んでいたフランクリン伯爵夫人が起き上がれるようになり、取調室に姿を現した。
ダークブロンドに深緑の瞳、内気で大人しそうな女性である。夫のフランクリン伯爵に付き添われて来たが、伯爵は別室での待機となる。
アウローナ・フランクリンの供述がはじまった。
◇
「お気遣い痛み入ります。もう大丈夫です。一昨日は取り乱してしまい、お見苦しい姿を晒してしまいました。お恥ずかしい限りです。
あの夜は久しぶりの夜会で人混みに酔ってしまったので、夜風に当たろうとテラスに出ましたところ偶然リベル子爵夫人のフィノーラ様とお会いしました。彼女とは王立学園時代の友人で、懐かしさに昔話をしながら庭園へ行きました。
満月でしたから明るかったですし、小径の角にはランタンも灯されていました。そこで人が倒れているのを見つけたのです。どうなさったのかと様子を窺うと……。
倒れていたのがクロエ・ドナルドソン女公爵だとすぐにわかりました。仰向けでしたから。
血が……頭の下の地面に血液らしき物が広がっていたのです。
それを見た瞬間、私は悲鳴を上げていました。
パニックになったのですが、助けを呼ばなければならないことはわかっていました。だから会場に戻ったのです。今思い出すととんでもないことをしてしまいましたわ。貴族らしからぬ大声をあげながら舞踏会場に飛び込んだのですもの、本当にお恥ずかしい限りです。
その後はご存じの通り、現場に案内しました。
フィノーラ様はまだそこで固まっておられました。彼女には申し訳ないことをしました。恐ろしかったのはフィノーラ様も同じなのに、彼女を放って一人で逃げたのですから。
えっ? 無理もなかったと仰っていたのですか? 良かった……フィノーラ様がお怒りじゃなくて。
ドナルドソン女公爵と面識はありますが、親しくはありません。私は主に領地の本邸で生活しておりますから……。それに年子で出産したのですが二回とも産後の肥立ちが悪く、しばらく社交界から遠ざかっておりました。
伯爵夫人としての社交が出来ず、夫には迷惑をかけてしまいましたが、最近ようやく体調も戻り、夜会に参加できるようになったのです。
ドナルドソン様にもお子様がいらっしゃいましたよね。幼い我が子を残して非業の死を遂げるなんて本当にお気の毒ですわ。お子様方の成長を見届けたかったでしょうに……。(ハンカチで目頭を押さえた)
それがあの夜の全て……いいえ、一つ思い出したことがあります。ご遺体を発見する前、怪しい人影を見かけたのです。
フィノーラ様はなにもおっしゃっていなかった、そうですか、彼女の位置からは見えなかったのでしょう。
どう怪しかったかですか? それは、貴族夫人に見えなかったからです。もちろん侍女や使用人ではありません。市井の方のようにお見受けしました、それも……夜のお仕事をされている類の女性のようでした。露出が多くて下品な服装でしたから、なぜそのような方が王宮内にいるのか不思議でした。
似顔絵の作成ですか? もちろん協力させていただきますが、眼鏡をかけてらしたので顔はハッキリとは……」
読んでいただきありがとうございました。12話完結の予定です、毎日投稿しますので続きも読んでいただければ幸いです。
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