和解と誓い
「……かつて、オークには数多のことがあり、数多の過ちもあった。
だが、よく考えてみろ。俺は滄江の源流に住み、貴殿らはその下流に住む。共にこの滄江の水を飲んできたのではないか。
思い出せ。あの大洪水を。オークとドワーフ、セイレーンにエルフ、四つに別れた種族が手を取り合って鎮めた日を。
俺たち二族がセイレーンやエルフと手を取り合い、共に鎮めたあの日を。俺は、当時のあの合言葉を心から愛している。『オークを救うは、己を救うなり』。
俺たちは、最高の友人であるはずだった。……者共! 城門を開け!」
鈍い地響きと共に、黒曜石の巨門がゆっくりと開かれた。
「この先にあるのは、我がオークの千年の基業だ。諸君、それでもなお満足できぬというのなら、このラスト・クラウンを粉々に踏みにじるがいい! だが! その前に、俺の屍を越えていけ! 全将士、命を聴け! 信仰も、出自も関係ない! 『天子、兵強馬壮なる者が之を為すべし、寧んぞ種あらんや!』——今日、このエフェ・カガンは、オークと栄辱を共にし、生死を共にする。王たる者、自ら国門を護り、社稷に殉ずべきなり! 俺が死んだ後、貴様ら一人一人が俺になれ! たった一兵一卒になろうとも、戦い抜け! オークは、ラスト・クラウンの廃墟の中からでも必ずや再建される! ……願わくば、我らすべてが、大地の母の懐で再び集わんことを!」
俺は同時に、抑え込んできた「息吹」を完全に解き放った。「生」と「死」の力が、俺の五周を奔流となって巡り、噴き上がる。朗らかな晴天は、一瞬にして禍々しい紅へと染まり、大地が戦慄を始めた。
亀裂から這い出してくるのは、無数のドワーフとオークの骸だ。彼らは俺たちの前方へと集い、生者には決して築けぬ「血肉の盾」を形成していく。
無数のドワーフとオークの骸が、亀裂から、土中から、這い出てきた。それらは無言で我々の前に集い、生者には決して築けぬ生ける屍の壁を形作っていった。
ラクトンの瞳には震撼と屈辱が、シルヴィアとクレアの目には理解を超えた茫然があった。
ラクトンの眼には震撼と不甘が、シルヴィアとクレアの瞳には絶望的な不解が宿っていた。
「ラクトン……俺がここに立っているのは、クドとエフェの意志に触れたからだ。あいつの勇気と決意は、すべてあんたの教えがあったからこそだ! 子を失った父親に、どんな言葉も気休めにならないことは分かっている。だが! あいつが生前に示した気概、その命を賭した決断だけは……たとえあんたであっても、否定させないし、侵させはしない! それがあいつの『兄』でありたい俺の、譲れない矜持だ!」
そこへ、坩堝皇帝が歩み出た。
「……何をそう、剣抜弩張と睨み合っておるのだ。ミンは我がドワーフにとっての貴客。鉄ドワーフの乱を平定したその恩義、我ら一族は忘れぬ。オークが和を乞うというのなら、それもまた美事であろう。特に、エフェ・カガンの口から**『王たる者、自ら国門を護り、社稷に殉ずべきなり』**との言葉を聞けたこと、余も深く感銘を受けた。……だが、オークには先例がある」
皇帝の眼光が鋭さを増す。
「ゆえに、要求する。貴公とすべてのオークの名において、大地の母に誓いを立てよ! 両族は永遠の友誼を結ぶ。もし背く者が現れたなら——その身は四分五裂し、その魂は大地の母の懐に帰ることは叶わぬと!」
「全軍、命を聴け! 誓いを立てよ!」
エフェは短刀を取り出し、自らの掌を切り裂いた。鮮血が傷口から滴り、大地へと零れ落ちる。無数のオークたちもまた、一斉に自らの血を地に捧げた。その血は合流し、せせらぎとなって大地を這う。
「よし! ドワーフたちよ、命を聴け! 誓いを立てよ!」
坩堝皇帝もまた掌を裂き、血を流し込む。それに続き、数多のドワーフ兵たちも同じように血を捧げた。
大地が、その呼びかけに応えるかのように微かに震える。流れる血のせせらぎは、突如として黄金の光へと変じ、大地へと吸い込まれるように消え去った。
エフェが静かに一歩、道を譲る。
「坩堝王よ。城内にて、語り合おうではないか」




