ラスト・クラウン城門前の断絶(ラクドンの視点)
ソクが消え去ると同時に、オークの大軍はラスト・クラウンの城門へと退いた。入れ替わるようにドワーフの大軍が圧し進み、攻城砲塔の銃口が重々しく城門を指す。
「そこまでだ!」
その声に顔を上げると、ミンが、黒いカウルと面具に身を包んだオークの背後に立っていた。彼らはグリフォンに跨り、背後にはオークの空騎団を引き連れている。その冷徹な眼差しが、俺たちを俯瞰していた。
グリフォンの羽ばたきが城壁の埃を巻き上げ、面具の男が策騎して前へ出た。その声は、石を砕き雲を裂くような重圧を孕んでいた。
「全軍、粛聴せよ!
今、天穹を証とし、血火を鑑とせん。
前カガン・ソクは、暴戻にして道を失い、弟を殺めて位を盗んだ。先祖の盟約を背き、四境に戦火を点じたその罪、天に届き、神人も共に憤るものである!
然れど天道は昭昭たり。義旗の指す所、正義は成された。
今朝、義勇の師が天に替わって誅を下し、ソクは陣前にて伏罪した。その死体は裂け目の深淵へと墜ち、魂は幽冥へと帰したのだ!
汝ら、知るがいい。サカン大人——ソクの甥にして、忠勇は日を貫き、仁徳は天を承く。
彼は国家傾覆の際に命を受け、斧鉞の飛び交う最前線に身を挺した。そしてついに暴君と共に深淵に果て、大義のために壮烈な最期を遂げたのだ!
彼が死に臨み、俺の手を執って託した遺言がある。
『願わくば我が命を以て、この兵燹を鎮めん。この軍符を執り、我が遺志を継げ。我が山河を護り、我が綱常を正せ!』と。
今、
俺——エフェは、サカン大人の遺命を承け、この兵符を執り、乾坤を鎮めるものなり!」
万軍が頭を垂れ、地を揺らす咆哮を上げた。
「エフェ・カガン——!!」
「ラスト・クラウンのために! ガル・マラカのために! カガンのために!」
俺は震える手で馬を下り、ラスト・クラウンの城門前へと歩み出た。喉を焼き切るような怒りを、大声で叩きつける。
「……よくもぬけぬけと『天道昭昭』などと言えたものだ! 問いに応えろ! 貴様がオークの新たな統率者か? 俺の息子、クドはどこだ! 我らドワーフがバラックザーからガル・マラカまで、二千里の路を超えて馳せ参じたのは、ただ一つの正義のためだ! 俺の息子を拐ったのは、一体どういう了見だ!」
エフェが、氷のように冷徹な声で応じる。
「たった一人の同胞のために、国軍を動かし二千里を行軍したというのか? その費用、割に合うのか」
「ふざけるなッ! 金などいくらでも稼げる、食い物が無ければ植えればいい。だがな、家族を失えば、二度と戻らんのだ!」
その時、ミンが俺の傍らに寄り、地を這うような小声で告げた。
「……クドは、サカンだ。ソクの甥であり、サルマンの息子だ」
衝撃が、俺の脊髄を駆け抜けた。
瞳孔が見開き、呼吸が止まる。手にしていた戦槌が、凍土に落ちそうになるのを辛うじて堪えた。
信じられない。俺のかつての兄弟が、今やオークの側に立っている。シルヴィアとクレアが駆け寄ろうとするが、ミンは首を振り、無言でそれを制した。
「……洗脳されたのか、ミン! 貴様、あんなオークを信じるのか! それとも、貴様も獣人の王座が欲しくなったか!
分かった……すべて分かったぞ! 貴様とあの子畜生が共謀したんだな! クドの隙を突き、ソクを殺させた後で、クドをも始末した……そうだろ! そうに決まっている!」
叫び声はもはや言葉をなしていなかった。ただ、この行き場のない痛みをぶつける対象が欲しかった。
クド。あいつを拾った時、あいつはまだほんの小さな塊だった。滄江の激流に流され、たらいの中で丸まっていた。あの酷寒の中、緑色の小さな顔を紫に変えて……。全部覚えている。初めて俺を「パパ」と呼んだ声も、俺の背中を追って鍛造を学んでいた後ろ姿も。
「貴様に、俺たちの何が分かる!」
エフェが吠えた。その声には、泥濘から這い上がった者特有の、鉄錆のような重みがあった。
「俺はエフェだ! ただのエフェだ! 何の后缀も持たぬ! サカン大人から軍符を授かるまで、俺には姓など存在しなかった! その意味が分かるか? 俺は下層のオークだ。最底辺のな! 俺の親父は、サルマン様の配下にあった一介の雑兵に過ぎなかった!
ソクが約束した土地も糧食も、俺たちの手には届かなかった! それを自腹を切って埋め合わせてくれたのは、サルマン様だ! 俺も、俺の親父も、あのお方の忠実な信徒だった!
サカン大人が俺に後継を託したのは、変革のためだ! 大人は教えてくれた、王侯将相の命も、平民の命も、等しく命であると! 何の差もありはしないと! 彼が先陣を切ったのは、平和のためだ! 搾取も、抑圧もない明日を見るためだ!
ここにいる少年兵を見ろ、誰もが底辺の家庭から無理やり戦場へ引きずり出された者たちだ! 俺たちは彼を信じている! 彼が俺たちを信じてくれたように!
……だが貴様はどうだ! たった一人のために、一国の軍を率いて敵の都へと攻め込んだ! 貴様の息子の命は命で、他の兵たちの命は命ではないというのか? 誰もが、親から産み落とされた、たった一つの命だろうがッ!」




