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死して八年、デスナイトとして蘇る。――この食い荒らされた世を切り裂き、狂った因果に復讐を  作者: Tiny Abomination in a Jar


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枷鎖を打ち破れ

もし一人の人間が街で盗みを働けば、俺はその不道徳を糾弾するだろう。


だが、もし一人の人間が飢えゆえに盗みを働くのなら、果たして批判されるべきは、その社会の側ではないのか?


翌日、俺は早くに目を覚ました。というより、一睡もできなかったのだ。人という生き物は、自分が見たこともないものを想像することなど決してできない。


太陽はいつも通り昇った。だが、その光は温もりを運ばない。ただの鈍いナイフだ。ただれた瘡蓋かさぶたのようなゴビの荒野を、一層ずつ削り取っていく。下層区はその光の下で瑟縮しゅくしゅくとしていた。道端に転がる女の死体のようだった。痩せこけた肋骨が干からびた皮を突き上げ、生気のかけらもない。生命も、樹木も、土地もない。あるのは荒廃と、廃墟を叩く砂塵の音、重圧に耐えかねたような死寂だけだ。


アイは泥の上に跪いていた。爪の間には黒い垢が光っている。彼女は暗褐色の細長い何かを、機械的に揉みほぐしていた。その動きは粘りつき、ひどく遅い。風乾してしわの寄ったそれは老人の皮膚に似て、古びた苦みを漂わせていた。


俺は彼女の手に落ちる光を遮った。彼女は顔を上げず、ただ乾いた木屑を口に放り込んだ。喉が引きり、歯の浮くような嚥下音が響く。


「何をしている?」俺は白濁した泡の浮く、泥水混じりの粉屑を見つめた。「それは……木の皮か?」


彼女の手が止まった。瞳には光がなく、ただ錆びた鉄のような麻木まひが重く沈んでいる。


「……」俺は喉が渇き、砕石でも詰め込まれたかのように声がかすれた。俺は無理やり感情を抑え、声を潜めた。「俺たちは味方だ。糧食はもう渡した。食べてくれ」


彼女はようやく顔を上げた。木訥ぼくとつとした眼差しが俺を通り過ぎ、屋内にある乾燥した香りを放つ精良な糧食へと向けられた。そして、彼女は小さく首を振った。


「神様が、私たちのような賤しい者は、これほど高貴なものに触れてはならぬと仰いました。昨日頂いた一食で、すでに後半生の運命を使い果たしたようなものです。お方様たちは善人ですが、一生は助けてくださらない。大人の皆様に知れれば、黜肢ちゅっしに処され、血を抜かれてしまいます」


砂紙を木材に擦り付けるような、ざらついた声だった。


剥ぎ取られた木栓層。傍らには煮え繰り返り、わずかな粉の混じった泥のような塊がある。


子供たちがその器を凝視していた。瞳の奥に宿るのは、文明が剥げ落ちた後に残る野獣の飢餓感。それこそが、最も原始的な「獣性」だった。


遠くから砂煙が近づいてくる。喧騒を撒き散らす「存在」が戻ってきたのだ。


女の瞳が恐怖に染まる。老人は慌てて皆を隠れさせようとする。


……いい加減にしろ。


一体、どれほど踏みつけられれば、脊梁せきりょうを叩き折られた獣のように、怯えながら一生を終えることになるのだ。


「いい加減にしろ!」俺は咆吼した。「貴様ら、一生怯えて暮らすつもりか! その目を見開いてよく見ろ! 向こうから来るのは、幾世代にもわたって貴様らを虐げてきた悪党どもだ。それを、こうも容易く見逃すというのか!」


「太陽も空も、貴様らの頭上にあるのだ! なぜ一生、そして子々孫々まで、家畜のように奴らに命を売り渡さねばならん! 何が『賤しい』だ、ふざけるな! 誰もが親から生まれた命ではないか! なぜ血を売り肉を削らねば生きられぬと決まっている! 奴らの息子が、貴様らの息子より高貴だとでも言うのか!」


「刺せば白い刃が入り、赤い血が出て死ぬ。奴らも同じだ! 言ってみろ! 貴様らと奴らの間に、一体どんな違いがあるというのだ!」


将軍の唇が微かに震えたが、ついに言葉が漏れることはなかった。


彼はただ、肺腑を震わせるような怒号を上げた。


「義勇軍、命令を聞け! 各員、配置につけ! 敵を迎え撃つぞ!」

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