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死して八年、デスナイトとして蘇る。――この食い荒らされた世を切り裂き、狂った因果に復讐を  作者: Tiny Abomination in a Jar


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自由と枷鎖、そして旅立ち

この先、何十年生きようとも、あの短い一週間足らずの囹圄れいごの生活を忘れることはないだろう。骨の髄まで刻まれたのは、自由を奪われた窒息するような痛みや、地下監獄の湿った腐臭、絶望だけではない。そこには、不意に訪れた幸運もあった。あの暗無天日の籠の中で、ロデリアンとシークに出会えたという幸運が。


脱獄すればまた孤身ひとりに戻ると思っていたが、少なくとも今は、そば相棒パートナーたちがいる。骨の髄まで浸み込んでいた孤独が、いくらか和らぐのを感じた。




だが、心では理解している。会うは別れの始め。僕たちは結局、それぞれの人生という旅路につき、異なる遠方へと赴く定めなのだ。




荒涼とした波打ち際に立ち、ロデリアンとシークの後ろ姿が次第に遠ざかり、地平線の彼方へと消えていくのを見送る。風は潮の香りを孕んで僕の髪を乱し、心の奥底にぽっかりと穴を空けた。


一瞬、一つの念が制御を失って浮かび上がる。


——僕のこの一生は、彷徨うろたえ、流浪の末、最後には誰かが寄り添って終わるのだろうか?




その念が浮かぶや否や、脳裏には勝手に馴染み深い顔ぶれが浮かんできた。


最初のクレアから、ベリサリウス、そしてラグ、ルル、シルヴィア……。


道のりの一端を共に歩み、温もりと力をくれた人々が、映画のフラグメントのように目の前を過ぎる。歓笑、熱血、別れ、そして繫がり。


僕は軽く頭を振り、複雑な笑みを浮かべた。死後、この世界を彷徨った八年間は麻痺したように空虚だったが、この半年余りで経験したことは、以前の八年間の総和よりも厚く、あざやかだ。一つ一つの記憶が、格別に深く刻まれている。




遠くの砂浜では、ケドがオークの戦士たちの中心に立ち、低声で言葉を交わす。表情は厳かで、その周身には、次第に可汗カガンの継承者としての沈着と威厳が漂い始めていた。




僕は視線を戻し、波に洗われて平らになった足元の砂浜を見つめる。指先が無意識に湿った細砂を弄ぶと、一つのぼんやりとした記憶の破片が、突然制御を失って湧き上がってきた。


——それは前世、まだ海辺で遊んでいた頃の日々だ。




記憶の中では、陽光は暖かく、海風は優しかった。母親が砂浜に座り、僕の手を握って一筆一筆、文字を教えてくれていた。字跡は工整こうせいで温かい。


少し離れた場所では、小さな影が波頭を追いかけ、清脆せいさいな笑い声を上げていた。


……待て。あの影は、僕の弟だろうか?


僕は眉をひそめ、懸命に思い出そうとする。だが記憶は薄霧に覆われたように模糊もことしており、どんなに努力しても彼の容貌かたちは思い出せず、そもそも自分に弟がいたのかさえ定かではない。模糊とした怅然ちょうぜんが、潮のように心に満ち、淡く、しかし拭い去れずに残った。




僕は腰を屈め、波に打ち上げられた干枯かんこした木の枝を拾い上げる。指先であらい枝を握り、湿った砂浜に、前世の文字を書き始めた。


筆先が細砂をかくし、深いあさい痕跡を残す。




「自由」——。




二文字が、砂浜に形を成す。


僕はその二文字を凝視し、突然、幾分いくぶんかの感慨かんがいが湧いた。


見ろ、この「自由」という二文字を。もともと枠組みに縛られている。筆画の間、すべてが枷鎖だ。


だが、その中の一画だけは。最後の一筆だけは、桀驁不馴けつごうふじゅんにその籠を突き破り、外へと奔る。




僕はまた手を上げ、隣に「牢籠ろうろう」と記した。


三方は開け放たれ、一見すれば無防備だ。しかし、その頭上に横たわる枷はあまりに重い。牛龍の如き蛮勇をもってしても、その一線を越えることは叶わない。




この一字一画は、僕たちが逃げ出したばかりの地下監獄に似ており、またこの世のすべての束縛と諦観ていかんに似ていた。




突然、地震の時のロデリアンの詠唱を思い出す。僕もそれに従い、軽く読み上げた。




「海は広き世界にて渦巻き、巌の奥底に憤りの咆哮を轟かせり。


されどこの咆哮は自然の調べにはあらず、囚われた質量が因果の理にて死に悶うる唸りなり。


星辰はもはや灯火ではなく、万物を噛み合う歯車となりにき。


常世の星辰は速めり、聖なる軌道を奔る。


星位重なるとき、潮汐の鋭鋒紅く焼け、海床の最深なる脈を断ち切らん。


意志はもはや卑しき妄念にあらず、質量を持ち、勢いを持ち、鉄錆色の現実を引き裂く絶対の暴力となるべし。


されば自由を意志とする鳥どもは、決して籠に繋がれぬ定めなり。


その翼羽の一枚一枚、二百七十余年の毒せる執念に浸り、超越の光を放てり。


羽搏つごとに、


現実を歪める質量きらめく。」




呪文が落下しても、四方は相変わらず波が礁石しょうせきを叩く音だけが響いていた。狂風が吹き荒れることも、星光が閃爍せんしゃくすることもなく、ましてや天地を揺るがすような力など、何も起きなかった。


僕は軽く溜息ためいきをつき、眼底に一筋の了然りょうぜんと、一筋の気づかれぬ失落しつらくを浮かべる。


やはり、このレベルの力は、単に詠唱の祝詞スペルを覚えているだけで掌握しょうあくできるものではない。これはロデリアンの「道」だ。彼は文中の鳥のように、決して籠に繋がれぬ定め。




ならば、僕自身の「道」は?




再び魔力の潮汐を感じ、生と死の力の脈絡を空気の中に感じる。


僕の背後の蓮の花が、幽幻ゆうげんな藍色の炎を放って再びほころんだ。


双眼は再び氷炎に覆われる。この重拾じゅうしゅうした力の感覚が、力を失った不安をたいらげた。


不急不躁ふきゅうふそう。道は足元にある。歩めば、それが「道」となる。




その時、僕の頭上の陽光が突然、一筋の黒影こくえいに覆われ、周身の温度もそれに伴い数度下がった。


僕は下意識に顔を上げ、鋭利えいりで威厳のある黄色い眸子ぼうしと対峙する。


——それは一羽のグリフォンだった。羽翼は豊満ほうまんで、羽毛は深褐色しんかっしょくくちばしは鋭利な刃の如く、今は警戒けいかい温順おんじゅんの入り混じった眼差しで僕を注視していた。首筋くびすじ微微びび彎曲わんきょくし、姿態は恭順きょうじゅんだ。




ミンさん、出発の時間だ」


ケドの声が横から聞こえ、彼は別の通体つうたい漆黒しっこくで、身形の矯健きょうけんなグリフォンを引いて僕の前へと緩緩かんかんと歩いてきた。顔には幾分いくぶんかの温和な笑みを浮かべて。


「こいつはグリフォン。こいつに乗れば、最速でガル・マラカに到着できる」




僕は目の前のグリフォンを見つめ、またケドの背後に整然と列をなすオークの軍隊を見つめる。


心底の悵然は次第に、坚定けんていに取って代わられた。


別れはより良い出会いのために。そして今、僕には未完成の事があり、守るべき人がおり、暴く(あばく)べき真相がある。




僕は手を上げ、グリフォンの順滑じゅんかつな羽毛を軽くで、その脊背せきはいへと翻身ほんしんして座る。グリフォンは一声いっせい低く鳴き、羽翼を振るって、一陣の風沙ふうさを巻き上げた。

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