ネームレス
審判などなかった。
NO.133。俺の名は剥奪され、その数字へと置き換えられた。刻影石に向かい、俺がこの世に存在したという最後の証明を虚しく残す。それから俺は昇降井へと踏み込んだ。山体を垂直に貫くその穴は、四九〇〇メートルの高度を突き抜け、海底のさらに底へと直に刺さっている。垂直距離にして、およそ五二〇〇メートル。
俺はガル・マラカの地下監獄へと投じられた。
魔法の気配など、微塵も感じられない。それどころか、「生」と「死」の力も、何一つとして捉えることができないのだ。目を閉じても、そこに広がるのはただ空虚な無だ。背中の蓮華が微かな蛍光を放ち、そして力なく消えた。
一体、何が起きている。
俺は己の実力を過信していたらしい。あるいは――あのクソッタレな連邦が、最新の対魔法技術までもオークに売り飛ばしたというのか。
傍らの獄吏は慣れきった様子で、鼻で笑って首を振るだけだった。
「無駄な真似はやめな。ここで足掻いても死を待つだけだ」
他の囚人が、俺の様子を見て嘲笑を浮かべた。
「ああ、たまに保釈される奴もいる。十分な金があればな。だがそれは『名前』を持つ連中への特権だ。NO.133? 無銘か。俺はNO.79だ。お前と同じ、名前を奪われた男さ」
俺は彼に軽く頷きを返した。
我々の一団が監獄内部へと入り、壁灯が消された瞬間、肌を刺したのは陰冷な湿気と、反吐が出るような蒸し暑さだった。不快極まりない。この環境は人を急速に苛立たせる。俺でさえ、後悔の念が脳裏をかすめた。
――いっそ、囚車の中で檻を破壊し、あの犬の糞どもを皆殺しにしていれば。
連中が口にしていた「可汗」と直接相まみえるつもりだったが、どうやら本当に足元を掬われたらしい。
五分が過ぎたか、あるいは三十分か。時間の境界が曖昧になり、感覚が狂い始める。
誰かが泣き声を漏らした。直後、爆発的な嘲笑が響き渡る。
泣いている男は震える声で、自分はここに入るべき人間ではない、冤罪だ、と繰り返していた。
周囲の笑い声がさらに大きくなる。
「おい、NO.79! あのデブが泣きやがったぞ。お前が賭けてたあっちの小僧は、一言も発しねえな。俺のタバコ三パック、忘れるんじゃねえぞ!」




