17.俺が選ぶのは……
集会当日。
言われたとおりに教会へと向かう。
太陽は真上に登り、爽やかな風が吹き抜いている。
ハヅキが洗ってアイロンまでかけてくれたワイシャツに袖を通し、ネクタイとジャケットを羽織った。久々に履いた革靴はどこか重たく感じた。
ナナミの家――おしゃれなカフェの裏側を少し奥に行ったところにある教会。大きな木造小屋のような建物は、イメージしていた通りの教会だった。
蔵にあるような重そうな木の扉――観音開きの大きな扉を開けると、目に映ったのは想像していたものとは違った。
普通の教会であるならば、教会の中心には大きな神を象った像が配置され、その前にはいくつもの長椅子が並べてあるはずだ。
しかし、この教会には長椅子は一つもなく、あるのは円卓だった。
しかも、神の像はキリストやマリアといったような、元の世界で見てことのある神ではなかった。
女神像ではあるが、女の人の身体には蛇が巻き付いている。
真昼なのに暗い教会の中で、ステンドグラスのカラフルな光に照らされた像は何とも不気味だ。
「お待ちしていました」
白いベールを被り、紺色の修道服を身にまとっているナナミが出迎えてくれる。
見たことのない姿のナナミは、どこかよそよそしく感じたが意識的にそうしているのだろうか。
「こちらです」
ナナミは円卓の一つの席――蛇に巻かれた女神像の真正面の席を一つ引いて座るように促してくる。
言われたとおりの座る。室内は暗くて気付かなかったが、辺りを見回すと全員が着席していた。
左隣から時計回りにハヅキ、リン、アキナ、サオリと座っており、最後の席――右隣の席にナナミが座った。
「お兄様、準備はいいですか?」
ナナミの問いかけに頷く。俺の動きに合わせてハヅキ、リン、アキナ、サオリも各々こくりと頷いた。
「では、選ぶ人の名前を呼んでください」
目を閉じて深く深く、深呼吸する。
早くなる鼓動を抑え、静かに立ち上がる。
そして、これまでのことを思い出す。
仕事帰りに迷い込んだこの世界。
ハヅキに拾われ、お世話をされ。リンのダークマターを食べたことを、アキナと本を読んだことを、サオリと畑をいじったことを、それからナナミにコーヒーを淹れてもらったことを思い出す。
目を開けて、覚悟を決める。
「俺が選ぶのは…………」




