16.ハヅキ姉、襲来
――集会前日。
誰にしようかまだ決めかねている。
頭をスッキリさせようと、ナナミにお願いしてコーヒーを淹れてもらった苦味の少し強い香り高い豆を選んでくれたようだ。正直味に違いはわからないが美味しいことだけは確かだ
「悩んでますの?」
「ああ、そうなんだ」
「無理もないですわ」
コーヒーを飲もうとしカップに口をつけた瞬間、後ろの方で音が鳴る。
カランカラン。
扉についている小さな鐘が鳴る。誰か来たようだ。振り向いて姿を見ると、大人の女性だ。この世界に来て初めて幼女以外の人間を見た。
ハヅキに似てる髪、目、佇まい。ハヅキをそのまま大きくしたみたいな女性だ。
「アタシにもコーヒーくださいな」
「はーい」
「誰ですか!?」
「アタシはカノン。ハヅキの姉だよ」
聞き覚えがあるような名前だったがどこで聞いたかは覚えてない。
ハヅキにお姉さんがいるというのは話には聞いていたが初めて見た。たぶんハヅキが言っていたのだろう。
「へぇー今回の男はこの子かい?」
「ええ、こちらはショウお兄様ですわ」
「よろしくね」
「よ、よろしくおねがいします」
幼女ばかりの世界に来て大人の女性なんて久しく見てないから敬語になってしまった。
「明日集会かい?」
「そうなんです」
「そうか、誰が選ばれたって恨みっこなしだからな」
カノンと名乗ったハヅキの姉は、ナナミから出されたコーヒーを息をかけて冷ましながら少し飲む
「お姉さんも選ばれたんですか?」
「私も選ばれた。男の人に。悪いことしたよな、サイカには」
サイカ……、そうだ。どこかで聞いた名前だと思ったら、図書館で死んだ子の名前が確かサイカだった。
ってことは、この人が……。
「ハヅキはどう?」
カノンはコーヒーを飲みながら話題を変えるように。
「どうって、いい子だとは思いますよ。すごく可愛いし」
「あっははは、そうだよね。でも即答で選べるくらいじゃないんだ」
豪快に笑うカノン。
「悩んでて」
「男の心掴むには胃袋からって言ってるはずなんだけど、引っ込み思案でね」
「そうかな? 結構グイグイ来てたけど」
「じゃあ、お兄さんが話しやすかったんじゃないかな」
「まあ日は短いけど残りの時間仲良くしてやってよ。じゃ、ハヅキに用あるから」
カップに残ったコーヒーを一気飲みして出て行く
「ですってよ、お兄様?」
「困ったな……」
微温くなったコーヒーを飲み込む。
「選ばなきゃダメなんだよな……」




