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15.星を見る

 頂上に一本大きな木がランドマークのように生えている丘の上。


 ライトアップはしていないけども、太陽が沈んだ後でも目印になるように佇んでいる。雲一つ無い夜空、に満天の星空。

 真っ黒なキャンバスの上に白いインクを散らしたように、はっきりくっきりと輪郭すら見える星をハヅキと眺めに来た。


 自分の背丈ほどある望遠鏡のセッティングをするハヅキを横目に空を見上げる。


 都会では絶対見れない景色。

 新月なのか、はたまたそれとも月そのものが存在しないのか。理由は分からないが、月も街灯もビルの明かりさえも無い空は星で埋め尽くされていた。


「セッティングできそう?」


「はい、もう少しでできます」


 一生懸命なハヅキの声が隣で聞こえる。小さな懐中電灯で手元を照らしているハヅキは、器用に作業を進める。


 田舎でも綺麗に星は見えるが、比にならないほど綺麗に思える。今ストレスがない心情がそうさせるのか、実際に綺麗に見えてるのかはわからない。


「セッティング終わりました」


 望遠鏡の用意ができたようで、ハヅキは手のひらを表にしておでこに付け、敬礼をするように合図をしてくれた。


「覗いてみてください」


 言われて望遠鏡を覗くと、綺麗に惑星が映っていた。赤く光る惑星は、とても幻想的に見えた。望遠鏡で星を見たことがなかったので、こんなにもちゃんと見えるのかという驚きももちろんあった。


「めちゃくちゃ綺麗だよ」


「アタシにも見せてください」


「はい、どうぞ」


 ハヅキに望遠鏡を譲る。


「ハヅキはいつも星見てるの?」


「晴れてる時だけですけどね」


「天体観測好きなの?」


「好きというか、そうですね。宇宙も外の世界なので、すごく興味深いです」


 ハヅキにとって宇宙とは外の世界の一部という認識であるらしい。

 確かにこの村の外の世界ではある。しかし、村の外と違い宇宙には技術的に行くのは難しそうだ。


「あのさ、集会のことなんだけど」


 ビクッと体を跳ねさせるハヅキ。聞かれたくなかっただろうか。


「明後日ですよね、集会」


「そう、そのことなんだけど」


 集会――俺が一人選ぶことになる集まり。

 ハヅキ、リン、アキナ、サオリ、ナナミの中から一人選ぶ。

 選ばれた人と村の外に出れる。


 だが、こんな大役、俺には責任が重すぎて。


「どうしても選ばなきゃダメ?」


「どうしてそんなこと聞くんですか?」


 ハヅキはカバンから手帳のようなものを出し天体観測の記録を付けていたが、その手を止めた。


「俺には重すぎるよ、こんな大役」


「みんなと話して、いろいろ知ったんですね」


「ああ……」


 幼女に囲まれてハーレムだ、なんてどこか心の奥で軽くこの村を見ていた。


 だが、実際そんな軽いものではなかった。

 選ばれないままこの村に過ごし、最後は自ら命を絶つもの。一発逆転を狙って森を走り抜けようとするもの。自らの権利を放棄するもの。


「そう簡単には決められないよな……」


「お兄さん、アタシたちに憐れみはいらないですよ」


「寂しいことを言うんだね」


「お兄さんはわかってないよ。いや、わかった気になってるだけなんです」


「どういうこと?」


 目をつぶり、首を振るハヅキ。そして、えへへと笑って。


「アタシを選んだら教えてあげますよ」


 ハヅキはそういって、いたずらっ子みたいに笑った。


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