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ドラゴニック・マナ  作者: ボケ封じ
第一章
31/65

魅了

ちょい短めです。


31話目です。宜しくお願い致します。

 広いロビーに敷き詰められた赤い絨毯は、あの日の事を思い起こさせる。

 吸血鬼(ヴァンパイア)、魔神に蹂躙された騎士隊、夜の帳が降りた中煌々と赤い染みを照らす松明の灯りの中で、直人が見ていた光景は、地球での生活の中では見なかったものだ。

 昨今の映画のシーンにも使われない、血の池という描写がピタリと当てはまる、人が生を吐き出した跡。


 軽く頭を揺すり自らの中の雑念を払う。しかし、一度沸き上がれば振り払えないのが雑念だ。

 こんなくそったれな世界には居たくない、という考えと、自分の母が産まれ育ち、今仲間と呼べるニースやティナが生きる世界、どこかに居るだろう家族を助けたい。

 そんなとき、雑多な考えが頭を駆け巡り少しながらにも集中が切れそうになっていた直人に、上階から窓の割れる音がした。


 一瞬階上に意識が向く直人。それを待っていたかの様に宿の正面扉が文字通り吹き飛んできた。


 しまったと思った時には既に振り返った直人の眼前に重厚な扉が迫っていた。

 

 「くっ……」


 かわす機を逃し、腕を畳んでガードしながら後方に跳んで少しでも衝撃を逃がしにかかる。今の直人なら正面から迎え撃っても、迫り来る扉を弾く事が出来た筈だが、直人にはまだそこまでの自信が無かった。

 実戦の乏しさと、何より自分自身の力の把握が出来ていないのだ。


 車の事故のような一際大きな衝突音と共に、木材で出来た扉の砕ける音がロビーに響き渡る。


 階段と扉に挟まれる形となってはしまったが、身体強化のお陰か動けないダメージではない。所々痛む身体を無理矢理起こしながら扉の無くなった玄関部を見据えて立つ。


 暗くなり始めた通りには人の姿も気配も無くなっていた。上からも敵意は感じない。どうやら、こちらが先手を取ったことで退いてくれたようだ。最後の扉爆弾も無しにしてくれればと直人は思わず苦笑いした。胃が絞まるような戦いの緊張感から解放されほっと溜め息も溢れ出る。


 手足をぶるぶると震わせて骨や腱に異常が無いことを確認すると、大きく空いた正面玄関から外に出てみる。上や宿の横をはしる狭い路地を確認し、怪しい人影も無いことからランス達と合流するため、中に入り扉の破片が散乱する階段を登る。


 (宿の人がいたはずだけど……)


 階段を登りながら、チラッと自分も泊まっている従業員用の部屋のある通路を一瞥するが、人の気配は無い。


 まぁいいか、と階段を登りきり部屋の扉をノックしながら直人ですと伝えると、暫くして扉が開きランスが笑顔で迎えてくれた。笑顔はフォルディスとは違うなと、場違いに考えながら部屋へと入っていった。



 灯りの無い薄暗い階段を登りいくつかある部屋の一つにはいり、肩に担いでいた痩せ気味の男をベッドへ無操作に放り投げる。痩せ気味の男が小さく呻きをあげるが目は覚まさなかった。続いて入ってきた男も肩に担いでいた、こちらも痩せ気味の男を同じベッドへと放り込んだ。


 「ったくよ、糞の役にも立たねえなぁ」


 始めに部屋へと入った坊主頭で大柄な男が悪態をつきながら、ベッドで仲良く気を失っている二人に唾と吐きながら部屋を出る。それにもう一人の、大柄だが引き締まった体躯を見せる男が続く。


 階段同様に薄暗い廊下を歩き一番奥の部屋の前で止まると、一度ノックをし、失礼しますと告げて部屋へと入っていった。


 灯りを点けていない為部屋の中も薄暗い。外の光も閉められたカーテンによりそのほとんどを遮られている。

 目の前にある作業机にうっすらと人影が見えるので、恐らく能面のような顔つきの自分達のボスがいるのがわかる。坊主頭はあの辛気臭いを通り越した死人のような顔を見なくて済んだ事を沈んだ太陽に感謝した。


 「相手に先手を取られやした。しかも手練れの助っ人がついてやす。騒ぎはまずいかと一旦引きやしたが、今日の計画は破産です」


 坊主頭が報告するが、目の前の男は反応を示さない。


 「手持ちの奴らだと隠密には運べそうにありやせん。どうも向こうの助っ人も隠密に長けてるのか、気配を探るのが上手いようで……」


 話ながら影のように居座るボスを見るが変わらず身動ぎ一つしない。流石にお怒りかと坊主頭もそこで黙ってしまった。が、待てどボスは何の反応も示さない。

 坊主頭が不審に思い一歩近づくと、ボスの傍らにもう一人いることに今更に気が付いて身構えた。


 「なんだ? てめえは?」

 「うふふふ、あなた方のボスの愛人、今はそうしておきましょう。この人は今とても疲れているの、あなた方のお相手も出来ないくらい」


 坊主頭は女とわかっても緊張は解かない。この世界男も女も関係はない。むしろ女でこの世界に足を踏み込んで生きている事が坊主頭の緊張を解かさない。女は音もなく机を廻り坊主頭の横に進み出てきた。

 

 「うふふ、そんなに固くならないで、殺し合いをするわけでも無いのだから」

 「てめえ……」


 坊主頭は動けなかった。女が進み出た時にはもう身体の自由を奪われていたのだ。魔法使いだったのかと後悔するよりも女の動向を探り隙を探るのでいっぱいだった。隙を見つけた所でどうすることも出来ないが。

 追い討ちをかけるように女が坊主頭の逸物をグッと握り込む。坊主頭は小さく呻き女を睨み付けるが、実際は背筋を駆け巡るような快感に耐えていた。とても握られただけでの快感とは思えない。

 女の手を通して神経に直接快感を流されているようだ。


 「うふふふ、別のものまで固くなさらないでも良いのよ」

 「ぐぅ……おまえ、なんなんだ……俺をどうする……気だ?」


 鼻息が荒くなるのも抑えられず握られただけで何度も果てそうになりながらも、快感の頂点を迎えられないまま女に問い質す。

 女は坊主頭を尻目に後ろに控えていた逞しい男に身を絡めるように抱きつきながら、伸ばした足で扉を閉めた。


 「こっちの男の方が私の好みだわぁ、この張り詰めた筋肉……食べちゃいたいわぁ」


 女は舌を這わせながら身体を絡ませ、確かに逞しく張った筋肉を堪能していた。


 「だから、一体何が……何だ? 何してやがる?」

 「ジュル……何って? ジュルジュル……食べてるのよぉ……ボギ……」


 坊主頭の後ろで肉食の大型獣が獲物を貪るような音が響きだした。肉が千切れ、骨が砕け、何かが何かを咀嚼するクチャクチャという音が続く。

 坊主頭はいつのまにか震えが止まらない自分に気付いた。自分には見えないが確かに背後には自分を捕食する何かがおり、今そいつに対してただ待つことしか出来ない事への震えに。


 「美味しいわぁ、やっぱり、若くて、身も詰まってるわね」


 そう思わない? と坊主頭は問い掛けられながら足下に転がってきたモノに視線をやった。ついさっきまで行動を共にし部屋へと、いや、女の巣へと立ち入ってしまった仲間の頭が、半分ほど顔の上をかじり取られてそこにはあった。


 「頭って肉が少なくて固くて嫌なのよねぇ、フレイヤちゃんは好きって言ってたけど……私はやっぱりお肉が好き。ねぇ、そう思うでしょ?」

 「ひ、ひぃぃ……」


 身体の自由を奪われ、神経も快楽に染め上げられながら、足下の床に広がってくる仲間の血と耳に残る女が咀嚼する音が、男の精神を蝕んでいく。


 「恐がらなくても良いのよ……貴方には快感をプレゼントしてあ、げ、る」


 背中に差し伸べられた手の温もりよりも、耳元で囀ずる思考を縛る声よりも、鼻をつく血と女の甘い匂いよりも、坊主頭の男はその身に疾る何にも替えがたい快楽の渦に呑まれていった。



 「うふふふ、あの子達も美味しそうだったわねぇ」


 カーテンを開けた窓からはすっかりと暗くなった空に浮かぶ月が明かりを差し入れ、整った線を浮かび上がらせて椅子に身体を預けた全裸の女が、組んだ足の下で爪先を懸命に舐める坊主頭の男を愛しそうに見下ろしながら思いを馳せていた。


 「姫様もあの子達もまとめて面倒見てあげようかしら? フレイヤちゃんは怒るかも知れないな」


 白い光を放つ月に目を移しながら、赤髪赤目の少女を思い浮かべ、苦笑混じりに肩下まで伸びたグレーの髪を掻き上げた。エルフの銀髪とは違いあまり光沢を出さない髪を弄りながら、いつまでも足の指を舐めている坊主頭を鬱陶しそうに蹴りあげる。坊主頭は蹴られたことにも恍惚の表情を浮かべそのまま床に頭を擦り付けて平伏した。機嫌を損ねると快楽が途切れると思っているのだろう、そのままぶるぶると震えて縮こまっている。


 そんな男を気にも掛けずに女は月を見上げている。


 「あのハーフエルフ……綺麗な髪……白い肌……許さない……私より……」


 ぶつぶつと独り言を溢し続ける女の足下では、我慢出来なくなった男がまた女の足の指を舐めようとしたところを、女の組んでいた足が降り下ろされて止められた。

 痙攣しながらもその衝撃に快感の頂点を迎えた男は、自身を吐き出しながら女の踵で頭を砕かれて絶命していた。


 


先ずはGWの疲れを癒す……。


またまた異動があるので、今月、来月は短めか、ライトな内容か投稿遅れるか……。

まあ、ボチボチ書いていきます。


/14 1時にもう一つ短いのを掲載しますので続けてお楽しみ下さい。


こんな話ですが、楽しんで頂ければ最上です。

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