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自分が作ったゲーム世界に転生した俺、都市管理システムで文明を一から復興する~ゲーム開発者の建国記~  作者: 水源


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また天災イベントかよ

 城壁や門の整備が進み、エメイン・マハの防衛体制も少しずつ形になってきた。


 悪辣ジョーの襲撃で破損した石壁の修復も進み、街の周辺を守るための設備も整いつつある。まだ石切場の設備には安全確認が必要だが、使える石材を活用して、できるところから整備を進めていた。


 そんなある日のことだった。


『ハーシス、大変なの!』


 領主館で今後の街づくりについて考えていると、ミズハが慌てた様子でやってきた。


「どうしたんだ、ミズハ?」


『南の方で、大型のハリケーンが発生したみたいなの』


「ハリケーン?」


『うん。かなり大きなものらしいよ。こちらに向かってくる可能性もあると思うの』


「……そうか」


 俺は思わず天井を見上げた。


 秋になった頃から、そろそろ来るんじゃないかと思っていた。


 この世界の元になったゲームには、季節ごとにいくつかの天災イベントが設定されている。


 大洪水に旱魃。そして、秋に発生する大型ハリケーン。


「また天災イベントかよ。いったい誰だよ、こんなひどいイベントを考えた奴は……」


 思わず愚痴が漏れた。


 ……俺だよ。


 ゲームを作っていたときは、季節ごとに違った災害が起きれば、プレイヤーも楽しめるだろうと思っていた。


 でも、実際に自分がその世界で暮らしていると、まったく笑えない。


 しかも、今回の相手は巨大ハリケーンだ。


 強烈な風は建物を壊し、木々をなぎ倒す。大量の雨が降れば、農地や水路にも影響が出る。海に面したエメイン・マハでは、高潮や高波も心配しなければならない。


「とにかく、早めに準備を始めよう。ミズハ、知らせてくれてありがとう。みんなにも集まってもらえるかな?」


『うん、分かったの!』


 ミズハは急いで仲間たちに知らせに向かった。


     ◇


 しばらくして、関係者が領主館に集まった。


「南で大型のハリケーンが発生したらしい。まだ詳しい進路は分からないが、こちらに来る可能性も考えて備えておきたい」


 俺が説明すると、みんなの表情が引き締まった。


「まず、農作物の収穫を急ぎたい」


 俺は地図に目を向けた。


「オーツ麦とライ麦が、ようやく収穫できる時期になっている。ここまで育てた作物を、ハリケーンで駄目にするわけにはいかない」


『そうじゃのう。せっかく実った麦じゃ。収穫できるところから急いで刈り取った方がよいじゃろう』


 ノエも畑のことを心配しているようだった。


「農夫たちにも協力してもらって、成熟した区画から収穫しよう。刈り取った麦の運搬や乾燥も遅れないようにしたい」


『分かったのじゃ。わしも畑の様子を確認して、収穫できる場所を見てくるのじゃ』


「頼むよ」


 ノエは畑のこととなると、いつも以上に張り切ってくれる。


「それから、収穫した麦の保管場所も確認しておきたい。ナンシー、現在の保管容量で足りるか調べてくれるか?」


『現在の収穫見込み量であれば、叡智の塔の保管庫で収容可能です。今回の収穫について、新たな保管施設を建設する必要はありません』


「それなら一安心だな」


『ただし、今後さらに農地を拡大し、収穫量が増加した場合は、農産物専用の保管庫を建設することを推奨します』


「やっぱり、いずれは必要になるか」


『はい。農地の拡大に伴って収穫量も増えます。継続的な農業生産を支えるためには、専用の保管施設があった方が効率的です』


「交易用の一時倉庫とは別だな?」


『はい。交易用の倉庫は、商人が持ち込んだ商品を一時的に保管し、仕分けや積み替えを行うための施設です。農産物を継続的に保管する施設とは用途が異なります』


「分かった。今回は叡智の塔の保管庫を使おう。専用の農産物保管庫については、農地の拡大に合わせて計画すればいい」


『その方針で問題ありません』


「ローズとベルには、保管庫の確認を頼みたい。収穫した麦を乾燥させる場所も含めて、必要な準備をしておいてくれ」


「分かったわ。収穫量に合わせて、保管場所を整理しておくわね」


『食料庫の確認はあたしに任せるにゃ! 大事な食料はしっかり守るにゃ!』


 ローズとベルも頷いた。


「それだけじゃない。収穫を進める一方で、建物や城壁の補強も必要だ」


 強風で屋根が飛ばされたり、窓や扉が壊れたりすれば、住民の生活に大きな影響が出る。


「建物の屋根や扉は、強い風で壊れる可能性がありますね」


 ダグラスが地図を確認しながら答えた。


「窓や出入口の固定も必要だな。それから、城壁上の通路や門、見張り設備についても、今のうちに状態を確認しておこう」


 ガルドも頷いた。


「兵士たちにも補強作業を手伝わせよう。ただし、通常の防衛任務に支障が出ないよう、人員を分ける必要がある」


「そうだな。収穫と街の補強を同時に進めるんだ。どちらかを後回しにはできない」


 俺は二人に作業の調整を頼んだ。


 屋根材や扉だけでなく、風で飛ばされそうな資材や道具も固定しておく必要がある。使っていない設備についても、倒れたり飛ばされたりしないように片付けなければならない。


「ナンシー、建物や施設についても、点検が必要な場所を整理してくれるか?」


『承知しました。都市管理システムに登録されている施設情報をもとに、優先して確認する場所を整理します』


「頼むよ」


 そのとき、ガンドが口を開いた。


「ハーシス、石切場のことも考えておかねばならんぞ」


「石切場?」


「うむ。あそこには、まだ安全確認が終わっていない設備が残っておる。大雨が降れば、周囲の地盤や斜面にも影響が出るかもしれん。それに、せっかく見つけた加工設備が傷んでしまっては大変じゃ」


 ガンドは石切場のことが気になって仕方がないようだった。


 確かに、あそこは街づくりにとって重要な施設だ。


 石材を確保できるだけでなく、古代文明の加工設備が安全に使えるようになれば、今後の建築にも大きく役立つ。


「ガンドの言うとおりだ。コルとデルブにも協力してもらって、石切場の周辺を確認しよう」


「分かった。通路や排水の状態も調べてみよう」


 コルが頷いた。


「石切場は、設備だけでなく周囲の岩盤も確認しておく必要がありますね。大雨で地盤が緩んでいないか、斜面に危険な兆候がないかも調べましょう」


 デルブも地図を見ながら答えた。


「頼むよ。ただし、まだ安全が確認できていない場所には入らないでくれ。設備を守るために人が怪我をしたら意味がないからな」


「分かっておる。まずは安全に確認できるところから進めよう」


 ガンドは少し残念そうだったが、納得してくれた。


「マウンテンコアについても、同じように確認しておきたい。地下施設だからといって、大雨の影響を受けないとは限らないからな」


 俺の言葉に、コルとデルブも頷いた。


 地下施設への浸水や、入口付近の崩落も考えられる。復興に役立つ施設を失わないためにも、早めに確認しておく必要がある。


「それから、もう一つ気になる場所がある」


 俺は地図の海岸沿いを指差した。


「港の予定地だ」


 ダグラスが地図を覗き込んだ。


「エメイン・マハは海に面している。ハリケーンが近づけば、強風だけでなく高潮や高波も心配しなければならない」


 ハリケーンによって海水面が上昇すれば、普段は問題のない海岸でも海水が陸地へ押し寄せる可能性がある。


 そこに大きな波が重なれば、海岸沿いの低地は危険だ。


「まずは港の予定地周辺の地形を調べよう。どこまで海水が入り込む可能性があるのか、低地や水路の位置も確認したい」


「排水路から海水が逆流する可能性もありますね」


「そうだな。水路の出口や、海岸に近い場所も確認しておこう」


 俺は港の予定地を見つめた。


 港は、これからエメイン・マハが交易によって発展していくための重要な施設になる。


 今回のハリケーンで大きな被害を受ければ、将来の港の整備にも影響しかねない。


「海岸沿いに置いてある資材があれば、先に安全な場所へ移しておこう。港の予定地に人が近づかなくて済むよう、危険な区域も確認しておきたい」


「分かりました。海岸部の調査も進めましょう」


 ダグラスが答えた。


 今はまだ港の建設前だが、だからといって何もしなくていいわけではない。


 将来、防波堤や護岸を整備するときにも、今回確認した地形や高潮の影響は役に立つはずだ。


 城壁は陸からの敵に備えるためのものだ。


 だが、海から押し寄せる自然災害は、まったく別の問題になる。


 今回のハリケーンでは、街の防衛設備だけでなく、海岸部の安全も考えなければならなかった。


     ◇


 話し合いを続ける中、リューネが世界樹の森について心配を口にした。


「世界樹の森も心配です。強風で大きな木が倒れたり、枝が折れたりすれば、森で暮らす生き物たちにも被害が出てしまいます」


 リューネにとって、世界樹の森は大切な場所だ。


 ハリケーンの規模を考えれば、森全体を守ることは難しい。それでも、何もせずに被害を待つわけにはいかない。


「まずは森の状態を確認しよう。特に弱っている木や、倒れると周囲にも被害が出そうな木があれば、事前に調べておきたい」


『私も森の様子を確認してきます。危険な場所や、気になるところがあれば報告します』


 リッカも協力を申し出た。


「ありがとう。ただ、危険を感じたら無理をせずに戻ってきてくれ」


『分かりました。無理はしません』


 森を守るために、リッカまで危険にさらすわけにはいかない。


 トモロは家畜のことを心配していた。


『小屋や柵が壊れてしまったら、家畜たちが危ないです。避難できる場所と、飼料の保管場所も確認しておきたいです』


「それも大切だな。家畜を安全な場所へ移せるように準備しておこう。飼料も雨に濡れない場所へ移しておきたい」


『はいです! みんなを守れるように頑張るです!』


 トモロは力強く頷いた。


 ノエが畑を心配するのと同じように、トモロにとっては家畜たちを守ることが重要なのだ。


『わしも畑の収穫だけでなく、周囲の排水を確認しておくのじゃ。大雨で畑が水浸しになったら困るのじゃ』


「そうだな。収穫が終わった場所も、排水を確認しておこう」


 ノエが心配しているのは、麦の収穫だけではない。これからの農業を続けるためにも、畑そのものを守る必要がある。


「何より、人に怪我人が出ないようにしなければなりません」


 セレナが真剣な表情で口を開いた。


「強風で飛ばされた物や倒れた木、建物の破損などで怪我をする人が出るかもしれません。避難場所と診療所の準備を進めておきたいです」


「頼むよ。住民の安全を最優先に考えよう」


「はい。必要な医療品や道具も確認しておきます」


 今回のハリケーンは、単に建物が壊れるだけの災害ではない。


 人命に関わる被害が出る可能性もある。危険な場所から住民を避難させる準備も必要だった。


 泉については、ミズハが周辺の水の流れを確認する。


『大雨が降ったときに、土砂や汚れた水が泉に入り込まないか調べておくね』


「ありがとう。泉は大切な水源だからな」


『うん。泉の周りの様子をよく見ておくの』


「それから、ナンシー。調整池についても確認してくれるか?」


『はい。現在の貯水量と、追加の雨水を受け入れられる容量を確認します。また、排水路の状態と処理能力も調べます』


「旱魃に備えて水を確保してきたけど、今度は大雨に備えて余裕を作る必要があるかもしれないな」


『そのとおりです。ただし、貯水量を減らす場合は、水の利用計画と下流への影響を確認したうえで判断する必要があります』


「分かった。水を無駄にしないことも大切だから、状況を見て決めよう」


『承知しました』


 ナンシーはすぐに情報の整理を始めた。


 洪水のときは、天然ダムの決壊によって大量の水が押し寄せてきた。


 今度はハリケーンによる大雨と高潮だ。


 同じ水害でも、発生する場所や原因が違う。以前の経験だけでは対応できない部分もある。


「ナンシー、ほかにも危険がありそうな場所があれば教えてくれ」


『承知しました。地形情報と施設情報を照合し、優先して確認すべき場所を整理します。ただし、ハリケーンの正確な進路や到達時刻については、追加の気象情報が必要です』


「そこは分かっている。今ある情報で、できるだけ被害を減らせるようにしてくれ」


『承知しました』


 ナンシーの助言はありがたい。


 だが、実際に作業を進めるのは俺たち自身だ。


 世界樹の森を心配するリューネやリッカ、泉を守るミズハ、家畜を守るトモロ、畑を守るノエ。それぞれが自分のできることを進める必要がある。


 そして、ユグドラにも相談してみるつもりだった。


 世界樹に関わる大きな力を持つ存在ではあるが、さすがにハリケーンそのものを止めることは難しいだろう。


 世界樹を守る力と、自然災害を消し去る力は別物だ。


「まずは、できることから始めよう。危険な場所で無理に作業をする必要はない。安全を確保できるうちに準備を進めておいてくれ」


 みんなが真剣な表情で頷いた。


     ◇


 話し合いを終え、俺は改めて農場へ向かった。


 畑では、オーツ麦とライ麦が黄金色の穂を揺らしていた。


 夏の旱魃を乗り越え、ようやく収穫の時期を迎えた作物だ。


 ここまで育ててくれた農夫たちの努力を思えば、簡単に諦めるわけにはいかない。


『ハーシス、こっちは収穫できそうなのじゃ』


 ノエが畑の一角を指差した。


「分かった。まずはここから始めよう」


『うむ。みんなが頑張って育てた麦じゃ。できるだけ無駄にしたくないのじゃ』


 ノエは農夫たちの方へ向かった。


 俺も収穫作業の準備を進めるため、近くにいた農夫たちへ声を掛けた。


 まだハリケーンがこちらへ向かってくると決まったわけではない。


 それでも、ゲームのイベントを知っている俺には、のんびり構えている余裕はなかった。


 洪水に旱魃。そして、今度は巨大ハリケーン。


 自然災害は、こちらの都合などお構いなしにやってくる。


「まずは、麦の収穫だ。できることから急いで進めよう」


 俺は黄金色に実った畑を見渡した。


 収穫を進めながら、街の建物や城壁を補強する。石切場やマウンテンコアの安全を確かめ、海岸部の高潮にも備える。


 守らなければならないものは多い。


 せっかくここまで復興してきたんだ。


 今度の災害でも、できる限り多くのものを守ってみせる。

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