街を守る門とミントの新兵器
城壁上の通路の整備が進む一方で、俺たちは街の門についても確認を進めていた。
門は、敵の侵入を防ぐための重要な場所だ。
しかし、エメイン・マハは交易によっても発展していく街である。門を厳重にすることばかり考えて、商人や荷車が通りにくくなってしまっては困る。
「実際に荷車を通して、使い勝手を確認しましょう」
ナターシアの提案を受け、門の周辺に荷車を用意した。
商人が普段使うものを想定し、荷物を積んだ状態で門を通過させてみる。
「この幅なら、通常の荷車は問題なく通れそうですね」
ナターシアは荷車の通過を確認しながら言った。
「ただ、複数の荷車が続けて来た場合も考えておきたいです。門の内側に待機できる場所がないと、後ろの荷車が街の外に並んでしまいます」
「確かに。門の前で荷車が滞れば、商人たちにも迷惑がかかるな」
俺は門の内側を見渡した。
「待機場所を確保して、荷車が出入りしやすいようにしよう。戦時には門を閉じられる構造も必要だけど、平時の交易を妨げないことも大切だ」
「ありがとうございます。実際に荷車を通してみてよかったです。図面だけでは気づけない問題もありますから」
ナターシアはほっとしたように頷いた。
門の構造については、ダグラスが中心となって設計を進めることになった。
石材を使って門の土台や周辺の防御部分を整え、門扉などの可動部分には木材も活用する。頑丈さだけでなく、開閉のしやすさや、兵士が操作するときの安全性も考慮する必要がある。
「敵が近づいたとき、すぐに門を閉じられるようにしておきたいですね」
ダグラスが設計図を示した。
「ただし、普段の出入りに支障が出ないよう、開閉の手順も確認しておきましょう」
「そうだな。門の使い方も含めて、兵士たちが訓練できるようにしよう」
俺が答えると、ダグラスは頷いた。
そこへ、待ちきれない様子のミントがやってきた。
「ねえねえ、門の守りができたら、今度は武器だよね!」
「そうだな。城壁から敵を迎え撃つための武器も必要になる」
「だったら、わたしのサンドボールキャノンを使おうよ!」
ミントは胸を張った。
「強いし、遠くまで攻撃できるし、すっごく役に立つよ!」
「性能は期待しているよ。でも、どこに設置するかは慎重に決めよう」
俺が答えると、ミントは少しだけ不満そうな顔をした。
「えーっ。わたしなら、敵が来たらすぐに倒せるのに」
「ミントが強いのは分かっている。でも、街の守りをミント一人に任せるわけにはいかないだろう?」
「むぅ……それもそうだけど」
「悪辣ジョーが戻ってくるとも限らないし、別の盗賊が攻めてくるかもしれない。どんな相手でも兵士たちが街を守れるようにしたいんだ」
俺が説明すると、ミントは少し考え込んだ。
やがて、ぱっと顔を輝かせる。
「じゃあ、兵士たちでも使える武器を作ればいいんだね!」
「そういうことだな。もちろん、安全に使えることも大事だよ」
「任せて!」
ミントは元気よく返事をした。
ガルドはサンドボールキャノンの設置場所を確認しながら、兵士たちの移動経路を塞がない位置を検討した。
「武器を置くなら、射線を確保する必要がある。だが、兵士が通路を移動するときの邪魔になっても困る。見張り塔との連携も考えたいな」
「門の近くを守るものと、城壁の上から周囲を守るものでは、適した配置も異なります」
ダグラスが設計図を広げた。
「武器を置く場所だけでなく、兵士が操作するための空間も確保しましょう」
「まずは設置候補を決めて、試験できる場所で性能を確認しよう」
俺の指示に、二人は頷いた。
その後、ミントが用意したサンドボールキャノンを使い、実際の運用を想定した試験が行われることになった。
攻撃力だけを確認するのではない。兵士が安全に扱えるか、狙った方向へ攻撃できるか、再び使用するまでにどれくらいの手間がかかるか。街の防衛に使う以上、確かめておくべきことは多い。
「うーん、わたしが使うなら簡単なんだけどなあ」
ミントは試験の様子を見ながら、少し考え込んでいた。
「誰でも同じように使えるようにするのは、なかなか難しいね」
「だからこそ、試験する意味があるんだよ」
俺は笑って答えた。
「ミントが作った武器を、兵士たちが安心して使えるようになれば、それだけ守りも強くなる」
「そっか! じゃあ、もっと使いやすくする方法も考えてみる!」
ミントは再び張り切り始めた。
門の整備では、荷車の通行を妨げない待機場所を確保する必要があると分かった。城壁上の通路では、兵士が移動しやすい幅や、見張りの死角を減らすための工夫が進んでいる。
そして、防衛用の武器についても、実際に兵士が扱えるようにするための試験が始まった。
石切場の設備は、まだ安全が確認できていない。
それでも、今ある石材を活用することで、街の整備は着実に前へ進んでいた。
「よし。この調子で進めよう」
俺は整備の進む城壁を眺めた。
悪辣ジョーが再び攻めてくるのか。それとも、別の盗賊がエメイン・マハを狙うのか。
今はまだ分からない。
だからこそ、敵が現れてから慌てるのではなく、今できる備えを進めておく。
街を囲む壁は、すでに取り戻した。
これからは、その壁を人々の暮らしと交易を守るための仕組みへと変えていく。
エメイン・マハの新たな防衛体制は、少しずつ形になり始めていた。




