次の襲撃に備えて
石切場から石材を確保できる目処が立った。
エメイン・マハの街づくりを進めるうえで、それは大きな前進だった。
だが、俺が真っ先に考えたのは、新しい建物を増やすことではない。
「まずは、復元した外壁を本当の防衛拠点に仕上げよう」
会議の席でそう告げると、ガルドが大きく頷いた。
「そうだな。壁そのものは復元できたが、兵士が移動するための通路や、敵を迎え撃つ場所はまだ十分ではない」
「悪辣ジョーが、また攻めてくる可能性もありますからね」
ダグラスの言葉に、俺も頷いた。
「ああ。あいつがいつ戻ってくるかは分からない。それに、次に襲ってくるのが悪辣ジョーとも限らない」
悪辣ジョーは、すでにエメイン・マハを襲撃した相手だ。
再び攻めてくる可能性はある。だが、別の盗賊団が街の噂を聞きつけ、財産や物資を狙ってくることだって考えられる。
相手の人数も、装備も、戦い方も分からない。
だからこそ、特定の敵だけを想定した対策では不十分だった。
「どこから敵が来ても、早く発見して対応できるようにしたい。城壁を復元しただけで安心するわけにはいかないからな」
「まずは見張り塔だな」
ガルドが地図を広げた。
「敵の接近を早く察知できれば、兵士を集める時間も稼げる。それから、壁の上を移動できる通路も必要だ。敵が一か所に集中してきても、ほかの場所から応援を送れるようにしたい」
「見張り塔は四隅を基本に考えましょう。周囲を見渡せる位置に設け、死角がないか確認する必要があります」
ダグラスが地図に印をつけていく。
「それから、門の整備も欠かせません。敵の侵入を防ぐだけでなく、平時には荷車や商人が問題なく通れるようにしたいですね」
「そこはナターシアにも確認してもらおう。交易を止めてしまっては、街を守る意味が薄れてしまうからな」
「分かりました。商人たちが使う荷車の大きさや、普段の出入りについても調べておきます」
ナターシアが答えた。
俺はガンドたちにも視線を向ける。
「壁の基礎や周囲の地形、堀との位置関係も確認してほしい。見た目だけ整えても、実際に守れなければ意味がないからな」
「了解した。コルとデルブにも協力してもらおう。排水も含めて確認する」
ガンドが応じた。
そのとき、ミントが元気よく手を挙げた。
「ハーシス! 防衛用の武器なら、わたしが作るよ!」
「ミントのサンドボールキャノンは頼りになるな。でも、どこに設置するかは、ほかの防衛設備との兼ね合いも考えよう」
「えーっ。わたしが直接守った方が強いよ?」
「ミントが強いのは知っている。でも、ミントがいない場所でも街を守れるようにしておきたいんだ」
「むぅ……。じゃあ、わたしがいなくても使える武器を作ればいいんだね!」
「そういうことだな。ただし、安全に使えることも大切だぞ」
「分かった! 任せて!」
ミントは満足そうに胸を張った。
「武器の設置場所はガルドとダグラスで検討してくれ。兵士の移動を妨げず、必要な場所を守れる配置にしてほしい」
「任せてくれ」
「承知しました」
二人が答えた。
俺は改めて城壁を見渡した。
マザークリスタルによって復元された外壁は、すでに街を囲んでいる。しかし、次の襲撃がいつ起こるのかは分からない。
悪辣ジョーが戻ってくるかもしれないし、別の盗賊団が現れるかもしれない。
だからこそ、今ある石材を活用し、できるところから整備を進める必要があった。
「石切場の設備は、まだ安全が確認できていない。無理に動かすことはせず、今、確保できている石材で進めよう」
「分かった。危険を増やしてまで急ぐわけにはいかないからな」
ガルドが頷いた。
街を守るために必要なのは、壁を高くすることだけではない。
敵を早く発見すること。兵士が迅速に移動できること。門を適切に管理すること。そして、街の暮らしと交易を維持すること。
俺たちは、それらを一つずつ形にしていくことにした。
次の敵が誰であろうと、街を守れるようにするために。




