住居や食堂などの再整備
俺たちは、鉱石を少しだけ掘ると山を後にした。
来たときとは、何もかもが違っていた。
行きの道では、未知への期待と、ほんの少しの不安を抱いていた。
だが、帰り道の頭を占めているのは――もっと大きな疑問だった。
あの山はいったい何なのか。
なぜ、あれほど巨大な地下施設が造られたのか。
何のために、地下百二十八層もの設備を必要としたのか。
そして――。
あの《未知の高密度金属》は、いったい何に使われていたのか。
俺は、あの金属を思い出す。
異常な密度。
高い硬度。
そして、俺たちの知る金属とは明らかに違う、あの質感。
もしかすると――。
このファンタジー世界で語られる、ミスリルやオリハルコン、アダマンタイト。
そういった伝説級の超金属なのかもしれない。
……いや。
それは少し早計だ。
そもそも、この世界には俺が前の人生で知っていた科学とは違う技術体系が存在する。
魔法。
魔力。
魔導具。
そして、未知の素材。
だからといって、すべてが「魔法の金属」とは限らない。
もしかすると、チタンやクロムのような、現実世界にも存在する金属に近いものなのかもしれない。
あるいは――。
現実には存在しない合金。
超高温や超高圧、特殊な触媒を必要とする、俺たちの文明では作れなかった新素材。
考えれば考えるほど、分からなくなる。
「……考えることが多すぎるな」
思わず呟く。
隣を歩いていたナンシーが静かに頷いた。
『はい』
『ですが、ハーシス。都市に戻れば、確認できることがあります』
「確認できること?」
『今回、施設システムの一部が再起動しました』
「……そうだったな」
俺は、あの山を思い出す。
俺たちが開いたのは、巨大な施設の入口にすぎない。
地下百二十八層。
それだけでも規格外だ。
俺たちが見たのは、そのほんの一部。
『再起動したシステムから、いくつかの情報が都市側へ転送されています』
「何が?」
『施設構造』
『一部の設備情報』
『そして――』
一拍。
『過去の管理記録です』
「……!」
管理記録。
その言葉だけで、胸が高鳴った。
この山を使っていた人々は、何者だったのか。
何のために、これほど巨大な施設を造ったのか。
何を採掘し、何を加工していたのか。
あの未知の金属は、何だったのか。
ミスリルなのか。
オリハルコンなのか。
それとも、俺が前の人生で知っていたチタンやクロムのような、純粋な工業用素材なのか。
あるいは――。
そのどちらでもない、まったく新しい金属なのか。
そして。
なぜ、何千年という長い間も施設を維持し続けていたのか。
答えが、そこに残っているかもしれない。
「……帰るのが楽しみになってきたな」
『ただし』
「ただし?」
『管理記録の大部分は破損しています』
「……だろうな」
そう簡単にはいかないらしい。
施設は何千年という長い間も放置されていた。
しかも今回は、地下十二層まで侵入した謎の存在によって大きな損傷まで受けている。
完全な記録が残っているほうがおかしい。
それでも――。
以前とは違う。
これまでは、失われた文明を知ろうと思えば、遺跡を一つずつ調べるしかなかった。
何が残っているのかも分からない。
文字も読めない。
設備も動かない。
そもそも、そこが何の施設だったのかすら分からない。
そんなことばかりだった。
けれど今は――。
俺たちには都市がある。
マザークリスタルがある。
文明の継承者であるリリィがいる。
そして今回。
あの山そのものが、俺たちを受け入れた。
管理者認証。
文明継承者認証。
施設システムの再起動。
まるで――。
長い眠りについていた文明が、俺たちの存在を認識し始めたようだった。
ならば。
ここから先は、ただの採掘じゃない。
――文明の再発掘だ。
失われたものを掘り起こす。
その痕跡を読み解く。
そして、使えるものを現在へ繋げていく。
もし、あの金属が本当に未知の新素材なら。
それだけでも、この都市の未来を大きく変えるかもしれない。
……まあ。
その前に、やることは山ほどある。
◇
数時間後。
「……帰ってきたな」
森を抜けた。
その先に、エマイン・マハが見える。
以前とは、もう違う。
防水壁が街を囲み、その内側では建物が少しずつ増えている。
畑。
放牧地。
煙を上げる厨房。
そして、人の姿。
以前より、ずっと多い。
まだ「都市」と呼ぶには小さい。
けれど――もう「集落」と呼ぶには大きくなっていた。
「やっぱり……街っていいな」
思わず呟く。
『良く無事に帰った』
遠くから声が飛んできた。
「ああ。留守番、すまなかったな。ユグドラ」
『わしは森に住む竜じゃからな』
ユグドラが鼻を鳴らす。
『鉄臭い山など、わざわざ行きたくもないわ』
「そう言いながら、ずっとこっちを見てたんじゃないのか?」
『……気のせいじゃ』
その隣で、リューネがくすっと笑う。
「こう言いながらも、ずっと心配していたのですよ」
『余計なことを言うでない』
「はいはい」
そんな二人のやり取りを聞いていると――。
小さな影が一斉に飛んできた。
『おかえりです!』
トモロが尻尾を振る。
『おかえりにゃー!』
ベルが俺の顔をぺろぺろ舐める。
『遅いぞ!』
ノエが頬を膨らませた。
「いや、遅いって言われてもな……」
『まったく、困ったものです』
リッカが肩をすくめる。
俺は苦笑した。
帰ってきた。
その実感が、ようやく湧いてきた。
「ハーシス」
ナターリアが声をかけてくる。
「結果を聞かせてもらおうか」
「ああ」
俺は背負っていた袋を下ろした。
中から、今回採掘した鉱石を取り出していく。
「鉄」
「銅」
「石炭」
「それから――銀」
「銀まで……しかもかなり品質が良さそうだ」
ナターリアが目を丸くする。
「これがあれば、この街に多くの支援物資を集められるよ」
「それはありがたいな。
ただ、問題もある」
「問題?」
「あの山は、ただの鉱脈が眠ってる山じゃない」
俺は山の方向を振り返った。
「あの地下には、とんでもなく巨大な施設が眠ってる」
「……施設?」
「ああ。しかも、何千年も前から維持されていた可能性がある」
「何千年……?」
「しかも、まだ動いてる」
俺は説明した。
管理者認証。
文明継承者認証。
非常用電力。
清掃ユニット。
地下百二十八層。
そして――侵入者。
話が進むにつれ、周囲の空気が変わっていく。
「つまり……」
ナターリアが呟いた。
「鉱山を見つけたと思ったら、古代文明の巨大施設まで見つけた、と」
「そういうこと」
「……あんた、どんどんとんでもないものを見つけるね」
「俺もそう思うよ」
苦笑する。
「それから――」
少し間を置いた。
「まだ名前の分からない金属も見つかった」
『おおおおおお!』
ガンド、デルブ、コルが一斉に身を乗り出す。
特にコルなんて、今にも山へ戻っていきそうな顔だ。
『今すぐ戻って掘り出そう!』
「いや」
『え?』
「すぐに採掘を始めるつもりはない」
『えー!』
「えー、じゃない」
『なぜじゃ!』
ガンドまで抗議する。
「未知の金属だからだよ」
俺はため息をついた。
「性質も分からない。何に使えるかも分からない。
そもそも今の俺たちに加工できるかも分からない」
それにデルブが反論する。
『ノームであるわしに加工できぬ金属などないわい!』
「まあ、それにここにたどり着いた難民を放置しておくわけにもいかないだろ?」
ガンドが悔しげに腕を組みながらいった。
『たしかにそれはそうじゃ』
そして、山を見る。
「ミスリルかもしれないし、アダマンタイトかもしれない」
コルたちが目を輝かせる。
「……まあ、俺はそんな簡単な話じゃないと思ってるけどな」
『では何じゃ?』
「チタンみたいな金属かもしれない」
『……?』
「クロムみたいなものかもしれないし、俺たちの世界にも存在しなかった新素材かもしれない」
俺がそう言うとデルブが不思議そうに聞いてきた。
『チタン?クロム?』
俺は肩をすくめる。
「ああ、そういう名前に金属もあるはずなんだ。
もっとも今は何も分からないから、未知なんだよ」
『むぅ……』
「だから、まず調べる」
指を一本立てる。
「山を調べる」
二本目。
「施設を調べる」
三本目。
「地脈を調べる」
四本目。
「金属を調べる」
そして――。
都市中央にそびえる《叡智の塔》を見上げた。
「この世界の文明について、もっと知る」
そう。
今回見つけたものは、鉱山だけじゃない。
そこに眠っていた――文明そのものだ。
◇
都市へ戻ると、俺はナンシーたちに山岳施設の情報整理を任せた。
ただし。
今のエマイン・マハには、それ以上に優先すべきことがある。
「難民の受け入れ状況は?」
『現在、都市外縁部に滞在している人数は五十七名です』
「……増えたな」
『はい』
「今後も?」
『その可能性は高いかと』
「やっぱりか」
俺は防壁の向こうを見る。
そこには仮設の天幕が並んでいた。
疲れた顔。
不安そうな顔。
子供を抱えた親。
着の身着のままで逃げてきた者。
家族を失い、一人で歩いてきた者。
ここへ来れば、生きられる。
そう聞いて集まってきた人たちだ。
食料がある。
水がある。
住む場所がある。
そして――魔物や盗賊から身を守れる。
この世界で、それがどれほど大きな意味を持つのか。
考えるまでもない。
人が集まるのは当然だった。
「なら、急がないとな」
『何をでしょう?』
「家だよ」
『共同住宅ですか?』
「ああ」
俺は都市管理UIを開いた。
建設一覧が表示される。
住む場所。
共同住宅。
食べる場所。
厨房付き大食堂。
水と衛生。
井戸。
公衆浴場。
さらに診療所。
そして――安全。
監視塔。
外部防壁。
共同倉庫。
製粉設備。
必要な施設を頭の中で並べていく。
都市は、ただ建物を増やせばいいわけじゃない。
人が増えれば食料が必要になる。
食料が増えれば、保管場所が必要になる。
人口が増えれば、水が必要になる。
病気を防ぐには衛生設備が必要になる。
職人が増えれば、工房が必要になる。
そして、それらを守るために――防衛施設が必要になる。
街は、一つの巨大な生き物みたいなものだ。
一つが足りなければ、別の場所に負担がかかる。
だからこそ。
順番を間違えてはいけない。
「まずは、生きるための基盤からだ」
建設候補地を指定する。
すると――。
都市の各所に淡い光が浮かび上がった。
【共同住宅 Lv2】
【建設可能】
【厨房付き大食堂 Lv2】
【建設可能】
【井戸 Lv2】
【建設可能】
【公衆浴場 Lv2】
【建設可能】
「よし」
俺は建設を開始した。
――その瞬間。
ゴゴゴゴゴゴゴゴ……!
「な、なんだ……!?」
大地が震えた。
住民たちから悲鳴が上がる。
『建設システムです!』
「皆、これから起こることをよく見ておいてくれ!」
地面が盛り上がる。
土が押し退けられ、石材が宙に浮く。
まるで見えない巨人が、街を組み立てているようだった。
石が積まれる。
木材が飛ぶ。
丸太が空中で加工される。
柱へ。
梁へ。
床へ。
そして――。
屋根が載った。
「あいかわらず……速いな」
人間なら何日も、場合によっては何週間もかかる工事が、目の前で進んでいく。
難民たちも驚きの表情でその様子を見ている。
「これは、すごい」
「魔法なのか?」
共同住宅。
大食堂。
公衆浴場。
そして――井戸。
最後の石材が組み込まれた瞬間。
地下から、ごぼり、と音がした。
次の瞬間。
透明な水が湧き出した。
「水だ……」
「本当に水が出たぞ!」
「これで、遠くまで水を汲みに行かなくていい……」
住民たちの声が広がっていく。
俺は井戸を見つめた。
ゲームの建設メニューでは、ただの施設の一つだった。
だが。
ここでは違う。
この井戸一つで、誰かの一日の労働時間が変わる。
子供が水汲みに駆り出されなくなる。
老人が重い桶を運ばなくて済む。
水を求めて危険な場所へ行く必要もなくなる。
「……すごいな」
『何がでしょう?』
「建物って、完成した瞬間より、その後のほうが大事なんだなって」
ナンシーは少し黙った。
『……記録しておきます』
「なんでだよ」
『ハーシスの重要発言ですので』
「やめてくれ……」
俺は苦笑した。
――こうして、エマイン・マハに新しい生活基盤が増えた。
ただし。
レベル二の共同住宅には、簡易キッチンも備えられている。
それでも、しばらくは大食堂を利用してもらうことにした。
理由は単純だ。
燃料が足りない。
木材そのものは十分にある。
だが、薪としてすぐ使える状態で確保している量は、決して多くない。
さらに公衆浴場では、大食堂の厨房に設置された巨大なパン焼き窯から出る熱を利用して湯を沸かす。
一つの設備を作れば、それで終わりではない。
食事。
燃料。
入浴。
衛生。
すべてが繋がっている。
都市を運営するというのは、思っていた以上に大変だった。
◇
建設が一段落した頃。
俺はナンシーに、山岳施設から転送されたデータを確認してもらった。
「で、どこまで分かった?」
『現時点では、施設の全体構造を三・七%ほど復元しています』
「三・七%……」
地下百二十八層の施設で三・七%。
数字だけなら、あまりにも少ない。
だが。
「それでも、何も分からなかった頃よりはずっとマシだな」
『はい』
「管理記録は?」
『断片的ですが、いくつか復元できました』
空中に文字が浮かぶ。
古代文明の言語。
だが、マザークリスタルとの照合によって、その意味が少しずつ変換されていく。
【鉱物資源採取区画】
【精錬区画】
【高密度素材加工区画】
【エネルギー変換区画】
「……やっぱり工場みたいなものだったのか?」
『単純な鉱山施設ではありません』
「というと?」
『採掘した鉱物を、その場で加工・精製していた可能性があります』
「それなら、あの未知の金属も……」
『はい』
ナンシーが頷く。
『施設内で精錬・合金化され、製造されていた可能性があります』
「採掘したものじゃなくて?」
『現時点では断定できません』
ナンシーが淡々と続ける。
『地底に、そのまま金属が埋まっていた可能性もあります』
俺は腕を組んだ。
もしそうなら。
あの山に眠っているのは、単なる資源ではない。
古代文明の工業技術。
そのものかもしれない。
いや。
もしかすると、あの金属そのものが、この文明の繁栄を支えたのかもしれない。
強力な武器。
巨大な機械。
エネルギー設備。
都市を支えるインフラ。
それらすべてに、あの金属が使われていた可能性だってある。
そう考えると――。
あの山の価値は、計り知れない。
そして。
地下十二層まで侵入していた第三勢力は、それを知っている可能性が高い。
「……急いだほうがいいな」
『はい』
「次の探索では、戦力も増やす」
『妥当です』
「それから、施設の入口も監視できるようにする」
『承知しました』
俺は地図を睨んだ。
山岳施設は、もう「探索場所」ではない。
あれは――この世界の未来を左右する可能性がある場所だ。
だからこそ。
不用意に触れてはいけない。
◇
その日の夕方。
都市の空気は、少しだけ変わっていた。
大食堂から食事の匂いが漂っている。
共同住宅では、人々が新しい寝床を確認している。
井戸の周囲には水を汲む人々が集まり、公衆浴場では久しぶりの湯に歓声が上がっていた。
俺は少し離れた場所から、その光景を眺めていた。
「……街になってきたな」
隣にアトラが立つ。
「ええ」
「最初は、四人しかいなかったのにな」
「そうね」
「防壁もなかった」
「ええ」
「畑もなかった」
「ええ」
「それが今じゃ、五十人以上の人間がここで暮らしてる」
俺は笑った。
「……忙しくなったな」
「嬉しそうね」
「まあな」
そのとき。
ふと気づいた。
「そういえば、リリィは?」
「叡智の塔です」
「また?」
「はい。マザークリスタルの様子が、少し変わったそうです」
「……変わった?」
その瞬間。
嫌な予感が走った。
俺たちは顔を見合わせる。
そして、叡智の塔へ向かった。
◇
塔の最上階。
リリィは、マザークリスタルの前に立っていた。
巨大な結晶が、普段とは違う光を放っている。
「リリィ」
「ハーシス」
振り返った彼女の顔には、いつもの穏やかさがなかった。
「何があった?」
「……呼ばれています」
「呼ばれてる?」
「はい」
リリィがマザークリスタルへ手を伸ばす。
その瞬間。
――ピッ。
【新規文明情報を受信】
【解析を開始します】
「……!」
俺は息を呑んだ。
続いて、都市管理UIに巨大な地図が展開される。
エマイン・マハ周辺。
山。
森。
海。
そのさらに遠く。
地図上に、赤い点が浮かび上がった。
【旧文明施設――複数を確認】
「……複数?」
ナンシーの声が、わずかに震える。
『はい』
一つ。
二つ。
三つ。
十。
二十。
赤い点が次々と増えていく。
俺は言葉を失った。
これまで俺たちは、失われた文明の遺跡を一つずつ見つけてきた。
偶然だと思っていた。
別々の施設だと思っていた。
だが――。
違う。
全部、何らかのネットワークで繋がっている。
そんな可能性が、頭をよぎった。
「山岳施設は……」
『はい』
ナンシーが答える。
『世界に残された施設の一つに過ぎなかったようです』
「……なるほど」
俺は地図を見つめる。
山に一つ。
おそらく、鉱物資源を扱う施設。
森に一つ。
世界樹とユグドラを救い、リューネがいたフォレスト・ビルダーやログ・キャリアが存在した場所。
丘陵地帯にも。
海岸にも。
さらに遠くにも。
いくつもの施設がある。
石切り場。
海底資源の掘削施設。
漁業資源を確保する施設。
あるいは――まだ俺たちが知らない施設。
そして、その中心にあるのは――。
エマイン・マハ。
「そういうことか……」
俺は息を呑んだ。
「この都市に、膨大な人数の人間が住めていたのは――」
地図上の赤い点を見つめる。
「資源や食料を採取する施設と繋がっていて、そこから都市へ送られていたのかもしれない」
『その可能性はあります』
ナンシーが答える。
『あるいは、各施設を統括する中枢だった可能性も』
「……」
そして、ナンシーが続けた。
『検索の結果、複数の施設間を結ぶ輸送システムの存在を確認しました』
「なるほど」
俺は目を見開く。
「フォレスト・ビルダーが伐採場から、ここまで自動で移動できるように登録されていたのも――」
そこまで言って、俺は気づいた。
「そういうことだったのか」
あれは単なる便利な設備じゃない。
かつて、この世界を支えていた物流網の一部だったのだ。
その瞬間。
マザークリスタルが、ひときわ強く輝いた。
――ピッ。
【旧文明ネットワーク】
【接続可能な施設を確認】
【管理権限――一部復旧】
【文明復旧率――】
数字が、一つずつ表示されていく。
俺は息を止めた。
そして――。
【文明復旧率――5.2%】
「……5.2%?」
ほんの少し前まで。
俺たちの文明復旧率は、もっと低かった。
それが。
あの山岳施設を再起動しただけで――。
文明そのものが、動き始めている。
俺は、地図上に広がる無数の赤い点を見つめた。
鉱山。
工場。
研究施設。
エネルギー施設。
もしかすると――都市そのもの。
それらは、バラバラに存在していたわけではない。
かつて一つの文明を支えていた。
そして今。
長い眠りから、少しずつ目を覚まし始めている。
胸の奥が熱くなる。
怖い。
けれど、それ以上に――。
知りたい。
この世界で、かつて何が起きたのか。
なぜ文明は滅びたのか。
そして。
なぜ、何千年以上も経った今になって――。
俺たちの前に、その文明が姿を現し始めたのか。
「……面白くなってきたな」
俺が呟く。
アトラが隣で苦笑した。
「ハーシス。あなた、こういうとき本当に楽しそうね」
「そりゃそうだろ」
俺は笑った。
「だって――」
地図を見上げる。
世界中に散らばる、無数の赤い点。
その一つ一つが、失われた文明への入口だ。
「ここから先は、鉱山探索じゃない」
俺は拳を握る。
「世界そのものを――掘り起こすんだ」




