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ゲーム開発者だった俺だけが都市管理システムを起動できる~滅びた文明を復興して最強国家を築く~  作者: 水源


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借り物の力では、英雄にはなれない

 男は笑った。


「一人か」


 薄汚れた革鎧。


 腰には粗末な蛮刀。


 口元には、こちらを獲物としか見ていない下卑た笑み。


「なら、楽な仕事だ」


 ――その瞬間だった。


 俺と盗賊は、同時に地面を蹴った。


 まさか。


 この世界に来て早々、盗賊に襲われる羽目になるとは。


 しかも、こいつら。


 明らかに俺たちを殺すつもりだ。


 なら――。


(まずは、自分の能力を確認する)


 ここはゲームを元にした世界。


 なら、ゲームと同じように個人ステータスを確認できるはずだ。


 そう思った瞬間。


 視界の端に、半透明の光文字が浮かび上がった。


 ────────────


【個人ステータス】


 名前:ハーシス

 Lv:1


 種族:人間

 クラス:ウィッカ


【能力値】


 筋力 16

 体力 16

 知覚 16

 運動 16

 器用 16

 勇気 16

 知識 16

 精神 10

 魔力 10

 魅力 20


 HP 64


【装備】


 ショートソード


【クラススキル】


 ・妖精召喚Lv1

 ・妖精魔法Lv1

 ・妖精憑依Lv1


【スキル】


 ・ファイターLv1

 ・ハンターLv1

 ・スカウトLv1

 ・グループリーダーLv1


【ユニークスキル】


 《パッチワーク》


 未解析

 起動条件不明


 ────────────


(……出た)


 やっぱり。


 この世界には、ステータスが存在する。


 能力値の最大値は二十。


 一般人なら八から十程度。


 熟練した兵士でも十三から十五。


 そして――十六を超えれば英雄級。


(レベル一で、英雄級……?)


 ゲームとして考えれば、とんでもない数値だ。


 少なくとも、身体能力だけなら俺はすでに常人の域を大きく超えている。


 だが――。


(問題は、経験だ)


 どれだけ能力値が高くても、俺はレベル一。


 実戦経験なんて、ほとんどない。


 ゲームなら、数値の高いキャラクターで殴れば勝てる。


 だが。


 現実の戦闘は、そんなに甘くない。


 経験。


 技術。


 判断力。


 そして――人を殺す覚悟。


 そのどれか一つでも負ければ、能力値の差なんて簡単に覆される。


 それに――。


(《パッチワーク》……)


 相変わらず詳細は表示されない。


 未解析。


 起動条件不明。


 使い方すらわからない。


(まあ……そんな都合よくはいかないか)


 そう思った直後。


 ――ガサッ。


 森の奥で、木々が大きく揺れた。


「おい! いたぞ!」


「逃がすな!」


「ひゃっはー!」


 怒号とともに、盗賊たちが次々と姿を現す。


 一人。


 二人。


 三人。


 さらに、その後ろからもぞろぞろと仲間が現れた。


(……多いな)


 ざっと見ただけでも十五人。


 対して、こちらは俺とナターシアの二人だけ。


「なるほど……」


 俺は周囲を見回した。


「象が引っ張るデカい車で、森の中を無理やり突っ切ってきたんだ。そりゃ、跡を追われるか」


 後ろにいたナターシアが肩をすくめる。


「いや、それ以前に、ここが派手に光ってたからね」


「……え?」


「塔さ。さっき一瞬、ものすごい光を放ってただろ?」


 ――あ。


 マザークリスタルを起動した時の光。


 あれはクリスタルだけじゃない。


 塔そのものまで光らせていたらしい。


 さらに俺は妖精を召喚し、農場まで作っている。


(そりゃ目立つわ)


 むしろ、今まで誰にも見つからなかったことのほうが不思議だ。


「大したもんはなさそうだが――」


 盗賊の一人がニヤリと笑った。


「ついでだ。あるもん全部奪っちまえ!」


「おお!」


「行くぞ!」


 盗賊たちが一斉に駆け出す。


「……ナターシア」


「なんだい?」


「俺が前に出る。あんたは後ろから鞭で支援してくれ」


「了解」


 ナターシアが鞭を構えた。


「支援なら任せな」


 俺もショートソードを握り直す。


 十五人。


 対して、こちらは二人。


 しかも俺はレベル一。


「……初戦で全滅とか、冗談じゃないぞ」


 最初の盗賊が蛮刀を振り下ろした。


 俺は半歩だけ身体をずらす。


 刃が頬を掠めた。


 ――遅い。


 反撃。


 ショートソードの柄で顎を打ち抜く。


「ぐえっ!」


 一人。


 横から来た男の腕を斬り払う。


「ぎゃっ!」


 二人。


 だが――。


 多い。


 一人倒せば、次が来る。


 次を倒せば、さらに次。


「くそ……!」


 このままではジリ貧だ。


 だったら――。


「ちょっと早いが、切り札を切る!」


 俺は懐からトモロの契約カードを取り出した。


 そして、ショートソードの柄にあるスリットへ差し込む。


「――妖精憑依ポゼッション!」


 瞬間。


『レイキエネルギー、チャージ』


『システム、スタンバイ』


『ポゼッション――コンプリート』


 緑色の光が爆発した。


「なっ!?」


 盗賊たちが足を止める。


 俺の髪が、鮮やかな若葉色へ変わった。


 瞳は翡翠色。


 頭頂部には、犬の耳がぴんと立つ。


 全身の筋肉が引き締まり、背筋を熱が駆け抜ける。


 そして――。


 世界が変わった。


 音が鮮明になる。


 匂いがわかる。


 風の流れまで感じ取れる。


 目の前にいる盗賊の呼吸。


 筋肉の動き。


 視線。


 重心。


 そのすべてが、手に取るようにわかった。


「トモロ――頼む!」


『アオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオン!!』


 森を震わせる咆哮。


 空気そのものが震えた。


「な、なんだこいつ!」


「ひるむな!」


「所詮は一人だ! 囲んで叩け!」


 盗賊たちが一斉に襲いかかってくる。


 だが――。


 遅い。


 さっきまで速く見えていた蛮刀が、今では止まっているようにすら感じる。


 軌道。


 速度。


 重心。


 次の動き。


 全部わかる。


「――遅い」


 半身になって蛮刀をかわす。


 そのまま男の手首を、ショートソードの峰で打ち抜いた。


「ぎゃっ!」


 蛮刀が地面に落ちる。


 左右から別の二人が襲ってきた。


「この!」


「喰らえ!」


 二本の刃。


 首と脇腹。


 同時攻撃。


 だが――。


 見える。


「甘い!」


 身体をひねる。


 二本の刃が空を切った。


 返す刀で一人の足を払う。


 倒れたところへ柄を叩き込む。


「ぐっ!」


 もう一人へ踏み込む。


「おおおおっ!」


 数合。


 たった数合で、三人が地面へ転がった。


「そらっ!」


 そこへナターシアの鞭が飛ぶ。


 ビシィッ!


「ぎゃっ!」


 鞭が盗賊の足に絡みつく。


 そのまま引き倒し、別の男へ叩きつけた。


「今だよ!」


「助かる!」


 さらに踏み込む。


 一人。


 また一人。


 次々と盗賊が地面へ沈んでいく。


 気付けば――。


 十人近くが倒れていた。


「ひ、ひいっ!」


 残った盗賊が尻餅をつく。


「悪魔だ……!」


「こいつ、悪魔だ!」


 戦場が静まり返った。


 誰も前へ出ない。


 ――ただ一人を除いて。


「……なるほど」


 腕を組んだまま、冷静に戦況を見ている男がいた。


「だいたい把握した」


 男がゆっくりと前へ出る。


「お前ら、下がれ」


「頭!」


「ガルドさん!」


 盗賊たちが一斉に道を空けた。


 男が腰の剣を抜く。


 他の盗賊が持つ粗末な蛮刀とは、明らかに違う。


 よく手入れされた長剣。


 刃こぼれ一つない。


 そして何より――。


 構えが違った。


 無駄がない。


 ただ立っているだけなのに、隙が見えない。


「俺はガルド」


 男は静かに名乗った。


「元は傭兵団にいた」


「……傭兵?」


「訳あって、今はこんな稼業だがな」


 ガルドは俺を見る。


「この森で好きにやらせてもらっている」


(こいつ……)


 トモロの感覚が警告を発している。


 ――違う。


 今までの盗賊とは、明らかに格が違う。


 本物の戦士だ。


「その姿……」


 ガルドが俺の髪と耳を見る。


「精霊憑きか」


「……」


「珍しいものを見た」


 口元がわずかに上がった。


「久しぶりに、本気で戦えそうだ」


「あんたこそ、ただの盗賊の親玉じゃないみたいだな」


「そうか?」


「傭兵が、なんで盗賊なんかやってる?」


 ガルドは少しだけ目を細めた。


「名を上げれば、それを妬んで蹴落とそうとする者が出てくる」


 淡々とした声だった。


「世の中には、そういう奴が多い」


 そして、背後の盗賊たちを見る。


「こいつらは馬鹿だ」


 一瞬だけ、口元が緩んだ。


「だが、それでも俺には従う」


「……」


「命令すれば、死ぬ覚悟で戦う」


 その目には、奇妙な誇りがあった。


「それが心地よかった」


 ガルドが長剣を構える。


「それだけの話だ」


「そうかい」


「あんたも、その女もなかなかの使い手だ」


 その時だった。


「気を付けな!」


 ナターシアが叫んだ。


「……?」


「あいつは昔、《灰狼》っていうB級傭兵団の副隊長だった男だ!」


 ――B級。


 その言葉に、俺は息を呑んだ。


 ガルドが正眼に構える。


 瞬間。


 空気が変わった。


 肌がひりつく。


『アオオン……』


 トモロが低く唸った。


 警戒。


 そして――戦意。


「……ナターシア」


「なんだい?」


「こいつは俺一人でやらせてくれ」


「正気かい?」


「あんたが入ったら、たぶん斬られる」


 一瞬。


 ナターシアが目を丸くする。


 だが、すぐにニヤリと笑った。


「了解」


 そして鞭を構え直す。


「男の子ってのは、そういう馬鹿なところがあるもんさ」


「悪いな」


「でも――」


 ナターシアが鋭い目で俺を見る。


「死ぬんじゃないよ」


「言われなくても」


 俺はショートソードを構え直した。


 心臓が激しく鳴っている。


「……来い」


「行くぞ、小僧」


 ガルドが踏み込んだ。


 ――速い。


 さっきまでの盗賊とは比較にならない。


 長剣が風を切って振り下ろされる。


 俺は紙一重でかわした。


「ほう」


 反撃。


 だが、ガルドも避ける。


 剣と剣がぶつかった。


 ガキンッ!


 その瞬間。


 視界の隅に、見慣れない光文字が走った。


《Patchwork》


《Unknown Skill》


《System Override》


《Authorizing……》


《Complete》


(なんだ?)


 さらに文字が浮かぶ。


《戦闘データ解析》


 0%


 1%


 3%


《戦闘ログ取得》


《敵データ不足》


《周辺世界データを補完》


《近似モデル生成》


(……何だ、これ?)


 意味がわからない。


 だが――。


 戦闘は待ってくれない。


 ガキン!


 ガキン!


 何十合もの剣戟が続く。


「悪くない!」


 ガルドが笑った。


「だが――!」


 ズバッ!


「ぐっ!」


 剣が腕を掠めた。


 熱い。


 血が流れる。


(まずい……)


《戦闘データ解析》


 17%


 呼吸が荒くなる。


 足が重い。


 《ポゼッション》の反動が始まっている。


「はぁ……はぁ……」


 肺が酸素を求めている。


 それでも剣を構える。


「まだだ……!」


 俺は踏み込んだ。


「レイキ・ステップ!」


 一気に加速する。


 だが――。


 ガルドは身体をわずかにずらした。


「速い」


 そして。


「だが、動きが素直すぎる」


 空振り。


「それでは――避けるのは簡単だ」


 ガルドの剣が閃く。


 ザシュッ!


「ぐあっ!」


 腕から血が噴き出した。


《戦闘データ解析》


 53%


(クソ……!)


 指先の感覚が薄れていく。


 トモロの力も抜け始めている。


 《ポゼッション》の限界が近い。


「終わりか?」


 ガルドは息一つ乱していない。


 長剣を正眼に構え、こちらを見据える。


「悪くない動きだった」


 一歩。


「若いくせに筋はいい」


 さらに一歩。


「普通の相手なら、とっくに勝っていただろう」


 そして――。


「だが」


 ガルドの目が鋭くなる。


「その力は借り物だ」


「……」


「基礎ができていない」


 一歩。


「強い力だけを振り回している」


 そして。


「まるで、刃物を持った子供だ」


 その言葉が、妙に胸に刺さった。


「精霊の力は大したものだ」


 ガルドが長剣を上段へ振り上げる。


「だが、お前自身がその力についていけていない」


「……うるせえ」


「終わりだ」


 剣が振り下ろされる。


「その精霊ごとな」


「させるか……!」


 俺はショートソードを構える。


 勝ち目がない。


 それはわかっている。


 だが――。


 俺の後ろにはナターシアがいる。


 アトラもいる。


 怪我人もいる。


 ここで俺が倒れれば、全員が殺される。


「危ない!」


 ナターシアの声。


 ガルドの剣先が迫る。


 喉元へ。


 死ぬ。


 そう思った瞬間――。

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