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ゲーム開発者だった俺だけが都市管理システムを起動できる~滅びた文明を復興して最強国家を築く~  作者: 水源


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24/49

管理者、戦域へ

『管理者を戦域へ転送します』


 無機質なシステム音声が響いた。


 直後、視界が真っ白に染まる。


「――っ!」


 身体がふわりと浮いたような感覚。


 次の瞬間――。


 俺たちは、叡智の塔一階へと転送されていた。


 足元に広がるのは、見慣れた石造りの床。


 だが、いつもの静寂はない。


 遠くから轟音が響き、塔全体が微かに震えている。


 どうやら、ここもすでに戦場の一部になっているらしい。


「ハーシス!」


 声に振り向く。


 大きな盾を左手に構え、右手には戦斧を握ったガードナーが、こちらへ駆けてくるところだった。


 その表情には、いつもの豪快さがない。


 完全に戦闘態勢だ。


「ガードナー!」


「無事だったか!」


「ああ。そっちは?」


「問題ねえ!」


 ガードナーは盾を叩きながら笑った。


「敵がどれだけ来ようが、俺がここで食い止めてやる!」


 その言葉に続くように、少し離れた場所から弦を引き絞る音が聞こえた。


 シャーリスだ。


 すでに矢をつがえ、鋭い視線で周囲を警戒している。


「わたしもいるぞ」


 その声に、俺は目を見開いた。


「シャーリス……」


「遅かったな、ハーシス」


 シャーリスは小さく笑う。


 だが、その視線は俺ではなく、塔の奥へ向けられていた。


「向こうから、何か来る」


「敵か?」


「ああ。かなりの数だ」


 シャーリスが弓を構え直す。


 その瞬間だった。


 俺の背後から、静かな声が響いた。


「わたしもだ」


 振り返る。


 そこに立っていたのは――リューネだった。


 その隣には、巨大な身体を持つユグドラの姿もある。


「リューネ……ユグドラまで?」


「この塔を守る必要があるのでしょう?」


 リューネは静かに頷いた。


「ならば、わたしたちも戦う」


 ユグドラが低く唸る。


 その咆哮だけで、塔の空気が震えた。


 以前のような苦しげな様子はない。


 世界樹を蝕んでいた汚染から解放された今、その瞳には強い光が宿っている。


「ユグドラ……頼めるか?」


『任せよ』


 力強い声が頭の中へ響く。


『この地は、我らの守るべき場所だ』


 俺は小さく頷いた。


 そしてミントもその場にいた。


 その手に持つのは手で持てるキャノン砲のような武装。


「ミントも手伝う!」


「ミントが持ってるそれはいったい?」


「これ?

 サンドボールキャノンっていうの。

 ミントが念じて、中に砂を詰めたら、すごい勢いで打ち出してくれるの」


「なるほど砂の塊を打ち出す武器ってところか」


「うん、そう!」


「アトラは?」


 ガードナーが答えた。


「ローズと一緒に家に隠れてもらっている。

 あの二人は戦いに向いてねえ」


「ああ、そのほうがいい

 俺達で、迎え撃つぞ」


「おう」


 そして。


 ――ガアアアアアアアアアアッ!!


 天地を震わせる咆哮が、森全体を揺るがす。


 塔の外へ飛び出した俺は、言葉を失った。


 森が割れていく。


 樹齢数百年はあろう巨木が、まるで枯れ枝のようになぎ倒され、その向こうから無数の赤い瞳が現れる。


 魔獣。


 魔獣。


 魔獣。


 そして、その群れの中央。


 山のような巨体を持つ一頭が、ゆっくりと姿を現した。


 黄金の鬣。


 漆黒の巨躯。


 森そのものを王冠のように従えた巨大な獣。


【個体識別】


【《ベヒモス》】


【接触まで五十九秒】


 俺は静かに剣を抜いた。


 守るべきものは、もう決まっている。


 この村も。


 仲間たちも。


 そして、人類がもう一度立ち上がる未来も。


 そのすべてを守るため――。


 都市管理者ハーシス、そして仲間と妖精たちの最初の総力戦が始まる。


 そして、四体の妖精たちの身体から溢れるレイキが一気に膨れ上がった。


『都市内限定戦闘形態――実体化開始』


 トモロの身体は若草色の光に包まれ、一メートルほどの大きさだった妖精犬は、瞬く間に巨大な狼へと変貌した。


 肩までの高さは優に二メートル。


 翡翠色の毛並みを風になびかせ、額には白銀の角が一本伸びている。


 その瞳には、優しさと獣王の威厳が同時に宿っていた。


「ガアアアアアアアアアアアアアアアア!」


 ひと吠えするだけで、大地を震わせる衝撃波が広がる。


「家畜さんには指一本触れさせないです!」


 ベルもまた黒い光をまとい、小さな猫の姿から漆黒の黒豹へと姿を変えた。


 しなやかな筋肉。


 鋭く光る黄金の瞳。


 背中には夜空のような星紋が浮かび、一本一本の爪が青白く輝いている。


「縄張りを荒らす愚か者は、一匹残らず狩るにゃ」


 その声は静かだった。


 だが、誰よりも冷たい殺気を帯びていた。


 続いてノエ。


 畑の妖精は光の中で少女の姿を取り、その背後には巨大な蔦と花々が渦を巻く。


 亜麻の長髪は腰まで届きうねっていた。


「畑は命を育む場所」


 静かな声。


「壊す者には、ワシ自ら大地の怒りを教えよう」


 最後にリッカ。


 森の妖精は白銀の羽を大きく広げ、美しい女性の姿となる。


 そして、足元には木の根がうねる。


「木は世界の巡りそのもの」


 静かに剣を構える。


「森を壊す魔獣の汚れた息吹は、この私が断ち切りましょう」


 四体。


 いや――もう妖精ではない。


 都市を守護する守護妖精とでも呼ぶべき存在だった。


 俺は思わず息を呑む。


 その瞬間。


【妖精戦闘形態 実体化完了】


【レイキ供給 安定】


【都市補正 適用開始】


【契約者との同調率 上昇】


 俺の身体にも変化が起きる。


 全身へ温かな力が流れ込み、今までとは比較にならないほど魔力が満ちていく。


 妖精たちとの契約が、これまで以上に強く結び付いたのがはっきりとわかった。


 ナンシーが嬉しそうに声を弾ませる。


『マスター!

 都市中枢より直接レイキ供給を受けています!

 通常時の約六・八倍!

 現在であれば、四名全員との同時リンクも理論上は可能です!』


「四人同時だって?」


 思わず聞き返す。


 これまでは一人と憑依するだけでも大きな負担だった。


 しかし、その時だった。


 システムからの通信が脳裏へ直接響く。


『警告』


『敵戦力を更新します』


森王級ベヒモス


【特殊能力確認】


【統率】


【大地操作】


【超再生】


【高密度レイキ吸収】


 嫌な予感がした。


「高密度レイキ吸収……?」


『都市より漏出したレイキを取り込み、時間経過とともに戦闘能力が上昇します』


 つまり――。


 長引けば長引くほど、相手が強くなる。


 ベルが舌打ちする。


「面倒な相手にゃ」


 ノエも険しい表情で頷いた。


「短期決戦が必要じゃわい」


 その瞬間。


 森が爆ぜた。


 ベヒモスが突進したのである。


 轟音とともに大地が裂け、巨木が宙を舞う。


「これ以上美しい森を壊すことは私が許しません」


 リッカがそう言い続けて、


「森よ応えよ」


 地面が隆起する。


 そこから巨大な根が何本も飛び出し、上級魔獣の身体を拘束した。


「命を踏みにじる者へ、裁きを」


「来るぞ!」


 俺が叫ぶより早く、トモロが前へ飛び出した。


「ここは通さないです!」


 翡翠の巨狼が正面からぶつかる。


 ――ドォォォン!!


 大気が弾けた。


 衝撃だけで周囲の木々がなぎ倒される。


 トモロは数歩押し込まれたものの、巨大な前脚でベヒモスを受け止めていた。


「力比べなら負けないです!」


『我も助力しようぞ』


ユグドラもトモロとともにベヒモスを抑える。


『全盛期の力は今はないが、この程度ならばな』


 その隙にベルの姿が消える。


 黒い残像だけを残し、一瞬で魔獣の群れへ飛び込んだ。


 ザンッ!


 ザンッ!


 ザンッ!


 赤い閃光が走るたび、下級魔獣が次々と倒れていく。


「まずは雑魚を減らすにゃ」


「そうするとしようぞ」


 ノエの髪が伸びて魔獣を拘束し、脚を断ち切っていく。


 その間にガードナーが雄叫びを上げる。


「行くぞぉぉぉ!」


 大盾で一体の上級魔獣へ体当たりし、そのまま戦斧を叩き込む。


 シャーリスとリューネの矢が正確に魔獣の目を射抜き、動きを止める。


「今!」


 ミントがキャノンを構えた。


「サンドボールキャノン、いっくよお!」


 轟音。


 圧縮された砂塊が砲弾のような勢いで飛び、魔獣の頭部へ直撃する。


 爆発した砂は一瞬で爆発したように飛び散り、その頭を吹き飛ばした。


「やった!」


 思わず声を上げるミント。


 魔獣の数は確実に減っていた。


 だが、その直後。


 ベヒモスが咆哮した。


 ――ガアアアアアアアアアアアアッ!!


 衝撃波だけで、拘束していた根が千切れ飛ぶ。


「んにゃ?!」


 ベルは空中で大きく体勢を崩した。


 そしてベヒモスの全身へ、赤黒いレイキが集まり始める。


『警告』


『高密度レイキ吸収を確認』


『危険度上昇』


【脅威判定】


【A→A+】


 俺は剣を強く握り締めた。


「まだ強くなるのか……!」


 その時、都市管理画面が激しく明滅する。


 ――ピコン。


【管理者権限Lv2】


【緊急提案】


【都市内補助機能《戦術支援》を一時解放しますか?】


【Y/N】

 俺は迷うことなく、《Y》へ指を伸ばした。


 次の瞬間。


【管理者権限承認】


【都市内補助機能《戦術支援》起動】


【全契約者ネットワーク接続】


【戦場情報を共有します】


 世界が変わった。


 視界いっぱいに幾重もの光の線が走り、魔獣一体一体の位置が瞬時に表示される。


 地形の高低差。


 障害物。


 味方の位置。


 敵の進行予測。


 あらゆる情報が、一瞬で頭の中へ流れ込んできた。


 さらに。


【戦術演算開始】


【敵行動予測……完了】


【勝率を算出します】


【現状勝率 23・7%】


「低いな……!

 こちらにはユグドラがいてもこれか」


 思わず苦笑が漏れる。


 だが、その数字はすぐに変化した。


【守護妖精四体との同時リンクを推奨】


【都市補正を最大出力へ移行】


【勝率再計算】


【54・9%】


 まだ五分。


 それでも、希望は見えた。


 アーク・ナイトの無機質な声が響く。


『管理者へ提案』


敵指揮個体ベヒモスを撃破した場合、群れは統率を失います』


『最優先目標を《ベヒモス》へ変更』


 やはりそうか。


 あれが王だ。


 王を倒せば、群れは崩れる。


「全員、聞け!」


 俺は大きく叫んだ。


「雑魚は最低限でいい! 狙うのはベヒモスだけだ!」


「了解にゃ!」


「任せるです!」


「承知した」


「わかったぞ!」


「ミントも!」


 全員の返事が重なる。


 その瞬間。


 ベヒモスの黄金の瞳が、真っすぐ俺を捉えた。


 まるで獲物を見定めるような、圧倒的な威圧感。


 ――次の瞬間だった。


 ズドォォォンッ!!


 大地が爆発する。


 巨体とは思えない速度で、ベヒモスが一直線に突進してきた。


「速い!」


 予測よりも一歩早い。


 戦術支援の赤い警告表示が視界いっぱいに広がる。


【回避推奨】


【左方向 三・二メートル】


 反射的に跳ぶ。


 直後、俺が立っていた場所を巨大な前脚が叩き潰した。


 地面が陥没し、土砂が噴き上がる。


 もし一瞬でも遅れていれば、跡形もなく潰されていただろう。


「ご主人!」


 トモロが横合いから飛び込み、その巨体へ体当たりを叩き込む。


 だが――。


 ベヒモスは微動だにしない。


 逆に巨大な肩で押し返され、翡翠の巨狼が数十メートルも吹き飛ばされた。


「トモロ!」


「だ、大丈夫です……!」


 立ち上がるものの、その口元からは鮮血が流れている。


 化け物だ。


 あれほどの膂力を持つトモロを、力任せに弾き飛ばした。


『警告』


【対象のレイキ濃度が急上昇】


【超再生を確認】


 斬り裂かれていた傷口が、目に見える速度で塞がっていく。


「再生まで……!」


 ベルが低く唸る。


「面倒なんてもんじゃないにゃ」


 ノエも顔をしかめた。


「このままでは削り負けるぞ」


 その時だった。


 戦術支援が再び演算を開始する。


【弱点解析中】


【情報照合】


【旧文明データベース接続】


【解析率 12%】


【24%】


【41%】


 数字が上昇していく。


 そして――。


 ベヒモスの胸部に、黄金色の光点が浮かび上がった。


【高密度レイキ核を確認】


【推定:心臓部付近】


【当該部位を破壊した場合、超再生能力を停止可能】


 俺の目が見開かれる。


「そこが急所か!」


 だが、その部位は分厚い胸板の奥深く。


 正面からでは、とても届かない。


 すると、ナンシーが肩の上で叫んだ。


『マスター!』


『四妖精同時リンクなら、限定的に可能です!』


「何がだ?」


『都市戦術奥義――』


 一拍置いて、彼女は力強く告げた。


『《妖精連結フェアリー・リンク》を実行できます!』


 四体の守護妖精が、一斉にこちらを見た。


 その瞳に宿るのは、迷いではない。


 絶対の信頼だった。


 俺は剣を握り直し、静かに頷いた。


「――みんなの力を貸してくれ」


 その言葉と同時に、四体の守護妖精から眩いレイキが奔流となって溢れ出す。


 黄金、翡翠、漆黒、純白。


 四色の光が天空へと立ち昇り、一本の巨大な光柱となって俺を包み込んだ。


【都市戦術奥義】


【《妖精連結フェアリー・リンク》起動】


【全契約者同調率 100%】


【管理者能力 制限解除】


 その瞬間、世界が止まって見えた。


 その瞬間、世界が止まって見えた。


 いや――止まったのではない。


 俺の認識速度だけが、世界から切り離されたのだ。


 舞い上がる土砂。


 揺れる木々。


 咆哮する魔獣。


 すべてがゆっくりと流れて見える。


 四体の守護妖精の力が、俺の身体を巡っていた。


 トモロの圧倒的な膂力。


 ベルの俊敏さと風雷を操る魔法。


 ノエの生命を司る大地の力。


 リッカの森と自然を支配する精霊魔法。


 そのすべてが、一つとなって俺の中で脈動している。


 これが――《妖精連結》。


 四人の力を同時に宿す、都市管理者だけに許された戦術奥義。


 俺は静かに呟く。


「ベル――風を貸してくれ」


『任せるにゃ』


 黒豹となったベルが笑う。


 その瞬間、蒼い風が俺の全身へ絡みついた。


 足元で空気が爆ぜる。


 ――ドンッ!!


 踏み込んだ瞬間、俺の身体は砲弾のように射ち出された。


 風が背を押し、雷光が身体を包み込む。


 一歩ごとに景色が流れ去り、ベヒモスとの距離が一瞬で縮まっていく。


「速い……!」


 自分でも驚くほどの速度だった。


 ベヒモスが反応するよりも早く、俺はその巨腕を駆け上がる。


 鋭い鉤爪を足場にし、肩へ。


 そして、そのまま巨大な背中へ飛び乗った。


 ズシン――。


 着地の衝撃が巨体を揺らす。


 黄金の鬣が風になびき、ベヒモスが怒りの咆哮を上げた。


 俺は剣を構え、その首筋を見据える。


「ここからが本番だ。

 ノア、リッカ!」


『わかっておる』


『そちらは前足を、私は後足を拘束します』


『承知した』


 亜麻の茎と木の根がベヒモスに絡みつき拘束する。


「ここ所か!」


 俺は剣を突き立てる。


 だが分厚い皮膚に阻まれ到達していない。


「トモロ、お前の力を分けてくれ!」


『はいです!』


 俺の体に力がみなぎった。


「これでぇぇぇぇっ!!」


 雄叫びとともに、全身の筋肉が膨れ上がる。


 トモロから流れ込む膨大な膂力が、腕を、脚を、背筋を、骨の一本一本までも満たしていく。


 剣を握る手に、これまで感じたことのない重量が宿った。


「貫けぇぇぇっ!!」


 ギギギギギッ!!


 刃が皮膚へ食い込む。


 しかし、まだ浅い。


 ベヒモスの皮膚は鋼鉄を幾重にも重ねたように硬く、刃先は途中で止められてしまう。


「まだ足りない……!」


 ベヒモスが暴れる。


 山のような巨体が激しく身をよじり、俺を振り落とそうとする。


 視界が激しく揺れる。


 だが――。


『落とさせません』


 リッカの声が響いた。


 無数の巨木の根がベヒモスの四肢へ絡みつき、大地へと縫い止める。


 さらに。


『まだまだじゃ!』


 ノエが両手を掲げる。


 大地が唸り、巨大な蔦が何重にも巻き付き、全身を拘束していく。


「今じゃ、ハーシス!」


 それでもベヒモスは止まらない。


 筋肉が隆起し、蔦が一本、また一本と引き千切られていく。


 残された時間は、ほんのわずか。


『ご主人!』


 トモロが叫ぶ。


『ボクも押します!』


 翡翠の巨狼が地面を蹴った。


 轟音とともにベヒモスへ体当たりを叩き込み、その巨体をわずかに前へ傾ける。


 その一瞬だった。


「ベル!」


『了解にゃ!』


 蒼い雷が弾けた。


 黒豹となったベルは雷光そのものとなって駆け抜け、俺の剣へと風と雷をまとわせる。


 刃が青白く輝く。


 大気が震え、放電音が耳をつんざいた。


【都市補正 重複】


【四妖精エネルギー収束】


【複合属性形成】


【聖風雷属性 付与】


 黄金の刃が、蒼白い雷をまとって唸る。


 俺は息を吸い込んだ。


 そして。


「全部――乗せる!」


 両腕に力を込める。


 全身の魔力。


 四妖精のレイキ。


 都市中枢から供給される膨大な力。


 そのすべてを、一撃へと叩き込む。


「うおおおおおおおおおおおっ!!」


 ズガァァァァァァン!!


 雷鳴が爆発した。


 剣が、ついに厚い皮膚を貫く。


「入った!」


 そのまま体重を乗せ、一気に押し込む。


 肉を裂き。


 筋肉を断ち。


 肋骨を砕き。


 一直線に胸の奥へ突き進む。


 そして。


 黄金色に輝く巨大な結晶が姿を現した。


【高密度レイキ核 確認】


「そこだぁぁぁぁっ!!」


 渾身の一撃を叩き込む。


 ガキィィィィン!!


 甲高い音が響いた。


 だが。


 核には大きな亀裂が走っただけで、砕けない。


「硬い!」


 次の瞬間。


 ベヒモスの黄金の瞳が、至近距離から俺を見据えた。


 ゾクリ、と背筋が凍る。


『危険!』


 ナンシーが叫ぶ。


『至近距離レイキ砲です!』


 ベヒモスの口内へ、赤黒い光が渦を巻く。


 空気そのものが悲鳴を上げるほどの高密度レイキ。


 直撃すれば、都市の城壁すら吹き飛ばしかねない。


【回避不能】


【致死率 九九・八%】


 戦術支援が、冷徹な現実を告げる。


 その時だった。


「ハーシスッ!!」


 ガードナーが叫ぶ。


 巨大な盾を抱えたまま、全力で跳躍する。


「お前だけは、死なせねぇぇぇぇ!!」


 轟ッ!!


 大盾がベヒモスの顎へ激突した。


 ほんの一瞬。


 ほんの数センチ。


 その衝撃で、ベヒモスの口がわずかに逸れる。


 放たれた極太のレイキ砲は俺の肩をかすめ、はるか後方の森を一直線に消し飛ばした。


 轟音とともに大地が抉れ、巨大な爆炎が立ち上る。


 冷や汗が頬を伝った。


 あと一瞬遅ければ、俺は跡形もなく消し飛んでいただろう。


「ガードナー!」


「気にすんな……!」


 盾を構えたガードナーが、不敵に笑う。


「仲間ってのは、こういう時のためにいるんだろ!」


 その言葉に、胸が熱くなる。


 俺は剣を握り直した。


 まだ終わっていない。


 レイキ核には亀裂が入った。


 あと一撃。


 あと一撃届けば、この怪物を倒せる。


 その瞬間――。


【レイキ核 損傷率 三八%】


【提案】


【都市戦術奥義・第二段階 解放条件を達成】


【新規機能《契約融合》を実行しますか?】


【Y/N】


 都市管理画面が、黄金色の光を放ちながら静かに問いかけてきた。

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