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ゲーム開発者だった俺だけが都市管理システムを起動できる~滅びた文明を復興して最強国家を築く~  作者: 水源


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『文明の継承者』を守れ――旧文明最後の兵器が迫る

 部屋は、水を打ったように静まり返っていた。


 眠る少女の胸元で、黄金の光だけが静かに脈打っている。


 解析率――五十八パーセント。


 まだ、わからないことのほうが多い。


 それでも、一つだけ確かなことがあった。


 旧文明は滅びゆく最後の日に、人類の未来をこの少女へ託した。


 リリィ。


 その名を思い出した瞬間、胸の奥が熱くなった。


 俺は、この少女を知っている。


 いや。


 正確には――この少女が登場するゲームを知っている。


 リリィは、この世界のゲームには存在しなかった。


 別の都市育成ゲームに登場した、都市管理システムのオペレーター。


 しかも、舞台となる時代は、この世界よりはるかに文明が進んでいた。


(どういうことだ……?)


 《パッチワーク》が世界そのものを繋ぎ合わせたのか。


 それとも、異なる世界が何らかの理由で交差したのか。


 まだ答えは出ない。


 だが――。


 今の俺に必要なのは、謎を解くことじゃない。


 目の前の少女を守ることだ。


 文明を築く管理者として。


 未来へ希望を繋ぐ者として。


 この少女は――旧文明が未来へ送り届けた。


 『文明の継承者』なのだから。


 やがて、ガードナーが低く呟いた。


「……つまり、その嬢ちゃんを狙ってる連中がいるってことか」


「可能性は高い」


 俺は頷く。


「リリィは誰かに保護されていた。だが、その居場所を追っていた連中も、この子の正体を知っていたんだろう」


 ローズたちを生み出した、あの組織。


 奴らがリリィを狙う理由も、今ならわかる。


 旧文明が最後に遺した希望。


 その価値は計り知れない。


 利用したい者もいる。


 奪いたい者もいる。


 そして――壊したい者もいる。


 アトラが、眠るリリィの手をそっと握った。


「でも……この子は普通の女の子だよ」


「ああ」


「そんな子に、世界の命運なんて……」


 俺も同じ気持ちだった。


 だが、現実は変わらない。


 少女の胸に宿る『文明の種』は消えない。


 なら――。


「俺たちが守る」


 短い言葉だった。


 それだけで、全員の視線が集まった。


「この子が、自分の意思で未来を選べる日まで」


 俺は眠る少女を見る。


「誰にも利用させない」


「誰にも奪わせない」


 ローズが静かに微笑んだ。


「……あなたなら、そう言うと思っていました」


 ガードナーが拳を握る。


「敵が来るなら、返り討ちだ」


「はい!」


 アトラも頷いた。


 ――その瞬間。


 ピコン。


 空中にシステムウィンドウが展開した。


【重要個体を確認】


【管理対象を更新します】


【『文明の継承者』を登録】


【都市管理機能を拡張】


【解析率 58% → 63%】


【新規施設を解放】


【学舎】


【図書館】


【研究所】


【住民保護シェルター】


【資源保護シェルター】


 さらに、黄金の文字が浮かび上がる。


【管理者との適合率を測定中】


【対象:リリィ】


【対象:管理者 ハーシス】


【照合中――】


 その時だった。


 リリィの瞼が、ゆっくりと開いた。


「……あなた……」


「気がついたか」


 俺はベッドの傍へ歩み寄る。


「ここは俺たちの村だ。君たちは、ぼろぼろになってここへ辿り着いた。その直後に気を失ったんだ」


「……村?」


 リリィが辺りを見回す。


 まだ記憶が混乱しているらしい。


 俺が声をかけようとした、その瞬間だった。


「だめ……!」


 少女が胸元を押さえた。


 黄金の光が激しく脈打つ。


「逃げて……!」


「リリィ?」


「来る……!」


 怯えた瞳が、窓の外へ向けられる。


「あれが……来る!」


 ――ピコン。


【広域索敵反応】


【高エネルギー反応を検知】


【北北東 二十五キロ】


【接近速度 高速】


【到達予測 三時間四十二分】


 俺は息を呑んだ。


 だが――。


 その次の表示を見て、背筋が凍った。


【脅威度:S】


【勝率予測】


【0.00%】


「……ゼロ?」


 盗賊団でもない。


 ユグドラですら、ここまで極端な数値は出なかった。


 つまりシステムは、こいつを――。


【対象照合】


【旧文明データベース接続】


【一致】


【旧文明管理兵器】


【コードネーム:《ガーディアン》】


【状態:起動】


【任務:『文明の継承者』の回収】


 リリィの顔から血の気が引いた。


「違う……」


 少女は震えながら首を振る。


「ガーディアンは……助けに来るんじゃない……」


 俺は黙って続きを待った。


「命令に従うだけなの……」


「命令?」


「……そう」


 リリィの目に涙が浮かぶ。


「『文明の継承者を確保できない場合は、外部勢力への流出を阻止せよ』って……」


 意味を理解した瞬間。


 部屋の空気が凍った。


 回収できないなら。


 敵に渡るくらいなら。


 ――消す。


 文明を守るために。


 未来を守るために。


 その未来そのものを抹消する。


 それが、旧文明最後の命令だった。


「……そんな……」


 アトラが呟く。


 俺はリリィの前に立った。


「大丈夫だ」


「でも……」


 涙で濡れた瞳が揺れる。


「ガーディアンは強いの……」


「ああ」


 俺は頷く。


「だから?」


 少女が目を見開く。


「三時間四十二分ある」


 俺は静かに笑った。


「十分だ」


「……どうして?」


「どうして、そこまでして守ってくれるの?」


 俺は少しだけ考えた。


 そして答える。


「この村は、失ったものを取り戻すためにある」


「食べ物も」


「家も」


「笑顔も」


「未来も」


 俺はリリィを見る。


「全部だ」


 だから――。


「未来そのものを追われている君を、見捨てる理由なんてない」


「……ありがとう」


 リリィの涙が頬を伝った。


 ――ピコン。


【信頼値:1】


【第一次認証完了】


【解析率 63% → 68%】


【新機能解放】


【都市結界】


【警報網】


 だが、続く表示を見て俺は眉を寄せた。


【都市結界】


【魔物・災害・旧文明兵器への耐性を付与】


【必要条件:マザークリスタル稼働率70%以上】


 切り札はある。


 だが――まだ届かない。


「旧文明の都市は……みんな、この結界に守られていたの」


 リリィが言う。


「なら、結界を起動すれば……」


「無理」


 即答だった。


「ガーディアンは都市の守護者だから……正規認証で結界を通れるの」


 守りの切り札が、通用しない。


 俺は腕を組んだ。


 そして――前世の記憶が、一つの答えを引きずり出した。


「……そうか」


「思い出した」


 俺は都市管理画面を開く。


 そこに表示されていたのは――。


【施設:《中央管理区画》】


【封鎖状態】


【共同認証が必要です】


 リリィが青ざめた。


「そこは……都市の心臓部……」


 ――なら。


 やることは一つだ。


 ◇


 その頃。


 叡智の塔の遥か地下。


 数百年もの間、眠り続けていた中央管理区画に、一つの明かりが灯った。


 続いて、二つ。


 三つ。


 やがて、無数の照明が地下空間を照らし出していく。


 黄金の光が巨大な水晶柱を駆け巡る。


 停止していた魔導機構が、次々と目を覚ましていく。


【共同認証対象を確認】


【都市管理者 ハーシス】


【文明の継承者 リリィ】


【認証率 68%】


【最終管理権限継承準備開始】


 制御室の最奥。


 そこには、白銀の玉座があった。


 そして、その前に――一体の騎士が跪いている。


 数百年もの間、一度も動かなかった騎士。


 その黄金の瞳に、光が宿った。


【最終守護者】


【待機解除】


【管理者の帰還を確認】


 ゆっくりと。


 騎士が立ち上がる。


【新たな都市管理者へ】


【忠誠を誓います】


 ◇


 一方、その頃。


 北北東の森。


 木々をなぎ倒しながら、巨大な影が進んでいた。


 一歩。


 また一歩。


 そのたびに、大地が震える。


 目的は一つ。


 人類最後の希望――『文明の継承者』の回収。


 そして。


 それを阻む、新たな都市管理者――ハーシスの排除。


 三時間四十二分後。


 旧文明最後の兵器が、この村へ到達する。


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