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ゲーム開発者だった俺だけが都市管理システムを起動できる~滅びた文明を復興して最強国家を築く~  作者: 水源


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19/47

人手不足の村に、文明を変える二人がやってきた

 次に建てるのは共同住宅か、それとも大食堂か。


 共同住宅を先に建てれば、新しく迎え入れた住民たちの寝床を確保できる。


 今は遺跡にかろうじて残っていた長の家を修繕してなんとか使っているが、それも、そろそろ限界だった。


 このまま住民が増えれば、寝床の取り合いになるのは目に見えている。


 一方で、大食堂も魅力的だ。


 食事を一か所でまとめて作れるようになれば、調理の効率は格段に上がる。


 保存食の管理もしやすくなるし、自然と村人たちが顔を合わせる交流の場にもなる。


 毎日同じ食卓を囲む。


 それだけでも、人は仲間になれる。


「どっちも欲しいんだよな……」


 思わず苦笑が漏れた。


 だが現実は甘くない。


 建物を建てるには資材が要る。


 資材を集めるには人手が要る。


 人手を増やせば、今度は住居と食料が足りなくなる。


 まさに堂々巡りだ。


 製材所の完成によって木材不足はひとまず解消された。


 だが、それだけで村が発展するわけではない。


 畑を耕す者。


 森で木を伐る者。


 狩りへ出る者。


 家を建てる者。


 料理を作る者。


 荷を運ぶ者。


 それぞれが役割を果たして初めて、一つの都市は動き始める。


 誰か一人の力だけで文明は築けない。


 俺は都市管理システムを閉じ、椅子へ深くもたれかかった。


 今の村では誰もが朝から晩まで働き詰めだ。


 新しい施設を建てても、それを運営する人間がいなければ意味がない。


 今のエマイン・マハに最も不足しているもの。


 それは建材でも食料でもなく――働き手だった。


「やっぱり、まずはなんとかして住民を増やすしかないか……」


 とはいえ、人は畑で取れるわけではない。


 誰かが来てくれなければ始まらない。


 だが、こんな辺境へ好き好んで来る物好きなど――


 頼みの綱はナターシアだが、彼女が次にいつ来るかはわからない。


 どうにもならないのか?


 そう結論を出しかけた、その時。


 ――ピコン。


 静かな部屋に電子音が響いた。


 都市管理システムがひとりでに展開し、新たなウィンドウが浮かび上がる。


【新たな来訪者を検知しました】


「……来訪者?」


 旅人が村を訪れること自体は珍しくない。


 だが、都市管理システムが通知してきたのは初めてだった。


【来訪者数:2】


【位置:南東 三・八キロ】


【状態:移動中】


【敵対判定:不明】


「二人か」


 敵意までは判定できないらしい。


 この世界では、「敵ではない」と「安全」は違う。


 飢えた旅人は、追い詰められれば略奪者になる。


 逆に武器を持っていても、善良な冒険者ということもある。


 結局は、会ってみなければ分からない。


【来訪者との接触予測時間:約十五分】


【推奨:代表者が応対してください】


「代表者、か」


 統轄者である以上、それは俺の役目だ。


 家の外へ出ると、製材所ではガードナーたちが今日も汗を流していた。


「ハーシス!」


 丸太を担いだガードナーが豪快に手を振る。


「製材所のおかげで仕事がはかどるぜ!」


「ああ。あとで様子を見に来る。それより来客だ」


 その一言で、ガードナーの表情が引き締まる。


「またか?」


「ああ。

 敵か味方かはまだ分からない」


「了解だ」


 俺は肩の上のナンシーを見る。


「ナンシー、偵察を頼めるか?」


『もちろんです』


 ナンシーは軽やかに飛び降りると、草を縫うように走り、あっという間に森の中へ消えた。


「アトラ」


「ええ」


「みんなへ知らせてくれ。

 戦闘準備じゃない。

 避難できるよう備えるだけでいい」


「分かったわ」


 アトラはすぐに村の中央へ駆けていく。


 その様子を見たガードナーたちも、それぞれ武器を手の届く場所へ置き直した。


 以前のような怯えはない。


 盗賊やあの森の中での戦いを乗り越え、この村にも少しずつ自信が芽生え始めていた。


 十分ほどして、ナンシーが枝の上からひらりと肩へ戻る。


『戻りました』


「どうだった?」


『二人ともボロボロです。

 武器は持ってるけど、戦える状態ではありませんでした』


「追われている?」


『そこまでは分からない。

 でも、何度も後ろを振り返り、森の音がするたびに立ち止まっていました』


 逃亡者か。


 あるいは魔物から生き延びた生存者か。


 どちらにせよ、この世界では珍しくない。


 俺は村の入口へ向かった。


 やがて森の奥から二つの人影が姿を現す。


 埃にまみれた衣服。


 裂けた外套。


 疲労で重くなった足取り。


 それでも、その瞳だけはまだ死んでいなかった。


 俺が息を呑んだ、その瞬間。


 ――ピロン。


【重要人物を確認しました】


【都市発展イベントが開始されます】


「……は?」


 思わず声が漏れる。


 重要人物?


 そんな表示はゲーム時代、一度も見たことがない。


 いや、それ以前に『都市発展イベント』というシステム自体が存在しなかったはずだ。


(なんだ……これは)


 胸がざわつく。


 この二人は、ただの旅人ではない。


 システムがそう断言していた。


 二十メートルほどまで近づき、ようやく姿がはっきり見える。


 一人は四十代半ばほどの男。


 日に焼けた肌に無精髭。


 灰色の髪を後ろで束ね、使い込まれた革の前掛けを身につけている。


 節くれだった両手は、何らかの職人のものだろう。


 腰の短斧も武器というより職人道具だった。


 もう一人は十代後半ほどの少女。


 淡い栗色の髪を肩口で切り揃え、自分より大きな荷物を背負っている。


 背中には弓。


 しかし矢筒に残る矢は、ほんの数本だけ。


 二人とも限界寸前だった。


 それでも互いを支え合うように歩く姿から、この旅がどれほど過酷だったのかが伝わってくる。


 俺が立ち止まると、向こうも足を止めた。


 沈黙を破ったのは男だった。


「……あの光は、本当にここだったんだな。

 俺たちは敵じゃない」


「それはこれから判断する」


 即答すると、男は小さく笑う。


「その通りだ」


 少なくとも話の通じる相手らしい。


「俺はハーシス。この村の統轄者だ」


「……ダグラスだ」


 男は少女へ視線を向ける。


「こっちはリリィ。城塞職人の娘だ」


「よろしく……お願いします」


 少女は丁寧に頭を下げた。


 その声は弱々しく、今にも消え入りそうだった。


 直後、システムが再び反応する。


【対象解析中】


【職業適性を確認】


【ダグラス】


【適性:木工職人★★★★☆】


【建築★★★★☆】


【家具製作★★★★★】


【施設効果との高い親和性を確認】


(木工職人……!)


 製材所で木材は作れる。


 だが、それを家や家具へ加工する職人はいなかった。


 ずっと欠けていた最後の一枚が、ようやく埋まる。


 続いてリリィの解析が始まる。


【重要人物:確認】


【城塞技師の娘】


【都市施設『石工房』『採石場』『外部防壁』の研究条件を満たしました】


【新規都市発展ルートを解放します】


(城塞技師……だと)


 石造建築。


 採石。


 防壁。


 どれも本来なら、もっと先で解放される施設ばかりだ。


 序盤で条件を満たすなど、ゲーム時代でも聞いたことがない。


 まるで、この村へ導かれることが最初から決まっていたかのようだった。


「……っ」


 リリィの足取りが急にふらつく。


「リリィ?」


 ダグラスが手を伸ばく。


「もう少し……です……」


 そう微笑んだ次の瞬間、


「……っ」


 力が抜けるように少女の身体が崩れ落ちた。


 そしてダグラスが手を伸ばすより早く、アトラが少女を抱き止めた。


「熱があります!」


 額へ触れたアトラの表情が変わる。


「かなりの高熱です。このままでは危険です!」


 ダグラスは唇を強く噛み締めた。


「三日……三日何も食べていない。薬草も尽きた。それでも、この子だけは……この子だけはここまで連れて来なければならなかった」


「事情は後で聞く」


 俺は迷わず言い切る。


「まずは命を助ける」


 その瞬間、都市管理システムが最後の通知を表示した。


【メインイベント更新】


【重要人物を保護してください】


【制限時間:残り七十二時間】


【報酬:都市レベル上限解放】


【報酬:新施設群をアンロック】


【イベント失敗時:重要人物死亡】


 胸の鼓動が高鳴る。


 この少女は何者なのか。


 彼女は、なぜ命懸けでこの村へ来たのか。


 そして――


 彼女が握る「文明」とは、一体何なのか。

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