表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ゲーム開発者だった俺だけが都市管理システムを起動できる~滅びた文明を復興して最強国家を築く~  作者: 水源


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

16/47

製材所を建てたら、森妖精がやってきた

 俺たちはフォレスト・ビルダーに乗って、村へ戻ってきた。


 現在、この村にある施設は《叡智の塔》と農場だけ。


 家を建てるにも、防壁を築くにも、道具を作るにも木材が必要になる。


 文明を再建するなら――次に必要なのは決まっていた。


「製材所だな」


 俺は農場から少し離れた荒れ地へ向かった。


 十分な広さを確認し、指先を前へ向ける。


『製材所作成』


 瞬間。


 ゴゴゴゴゴ……!


 大地が低く唸り始めた。


 荒れた地面が淡い光に包まれ、瞬く間に均されていく。


 その上へ砕石が敷かれ、作業場が形作られる。


 続いて、太い木の柱が次々と立ち上がった。


 梁が組まれ、屋根が乗る。


 巨大な木材置き場。


 屋根付きの乾燥棚。


 工具庫。


 木屑を保管する小屋。


 まるで見えない職人たちが一斉に作業しているかのように、施設が完成していく。


「……すげぇ」


 思わず呟いた。


 ゲーム時代にも何度も見た施設だ。


 だが、実物はまるで違う。


 巨大な建物。


 積み上げられた資材置き場。


 木材を加工するための設備。


 これがあれば、村の建築速度は一気に変わる。


 そして――。


 いつもの青白いウィンドウが浮かび上がった。


【施設《製材所 Lv1》を建設しました】


【木材加工機能を解放】


【建築素材『板材』『角材』『杭』『丸太』の生産が可能になりました】


【新たな管理妖精を召喚できます】


「……やっぱり来たか」


 俺は思わず笑った。


 農場にはノエ。


 放牧地にはトモロ。


 食料庫にはベル。


 そして製材所には――。


【管理妖精の召喚を開始します】


【適性施設:《製材所 Lv1》】


【契約候補を検索中……】


【検索完了】


森妖精アルセイスを召喚します】


 その瞬間。


 製材所の中央に、緑色の光が集まり始めた。


 木漏れ日のような光が渦を巻く。


 周囲の木々がざわめき、どこからともなく若葉の香りが漂ってきた。


 そして――。


 ポンッ。


 光が弾ける。


 そこに、一人の小柄な妖精が立っていた。


 腰まで届く深緑の髪。


 翡翠色の瞳。


 背中には四枚の葉を思わせる半透明の羽。


 深緑の衣服には蔦や木の繊維が編み込まれている。


 腰には、小さな鉞と鉋。


 そして巻尺まで下げていた。


 妖精は周囲を見渡すと、最初に――。


「……梁の継ぎ目が美しい」


 そこを見るのか。


 俺が思わず苦笑していると、妖精は俺の前まで飛んできた。


「森妖精アルセイス族のリッカと申します」


 胸に手を当て、丁寧に頭を下げる。


「これより製材所の管理を担当します。契約者様、どうぞよろしくお願いいたします」


「よろしく、リッカ」


 手を差し出す。


 リッカは俺の指を両手で包み込んだ。


 その瞬間――。


 緑色の光が二人を包み込む。


 足元から若草が芽吹き、小さな花が咲いた。


 近くの切り株からも、ひょろりと若葉が伸びていく。


森妖精アルセイスが仲間になりました】


【施設補正】


・製材効率+50%

・木材品質:中


【新機能】


・森林資源探知

・植林管理


「植林管理……?」


 俺が呟くと、リッカが頷いた。


「はい」


 彼女は完成したばかりの製材所を見渡す。


「森は、切るだけでは必ず枯れます」


「……やっぱりそうだよな」


「ですが、適切に伐採し、若木を育てれば話は別です」


 リッカは淡々と説明する。


「成長した木を選んで伐採する。病気になった木は早めに取り除く。そして空いた場所へ新たな木を植える」


 その瞳に、森への強い愛情が宿っていた。


「そうすれば、百年後も森は豊かなままです」


「つまり……木材を使い続けながら、森そのものも維持できるわけか」


「はい」


 これは大きい。


 ゲームなら、木を切っても資源が枯渇することはなかった。


 だが、この世界は現実だ。


 木を切れば、当然なくなる。


 文明を発展させるために森を切り続ければ、いずれ村の周囲から木が消える。


 だからこそ――。


 製材所には、生産だけではなく森林を維持する管理者が必要だったのだろう。


「なるほどな」


 俺が頷いた、その時だった。


「……素晴らしい」


「ん?」


 リッカが一本の丸太を撫でている。


「樹齢三十五年。節は六つ。木目も良い……」


 翡翠色の瞳が輝いていた。


「乾燥させれば、かなり良質な梁になります」


「……初対面なのに木しか見てないな」


「当然です」


 即答だった。


 やっぱり木が好きらしい。


 しばらくすると、リッカは製材所の設備を一通り確認し、満足そうに頷いた。


「設備は最低限ですが、十分に稼働できます」


「フォレスト・ビルダーもある」


 俺が後ろを指差す。


 その瞬間。


 リッカの動きが止まった。


「……フォレスト・ビルダー?」


 翡翠色の瞳が大きく見開かれる。


「これが、実際に残っていたのですか?」


「ああ。古代の林業機械らしい。今でも動く」


「……製材所とフォレスト・ビルダーが同時に?」


 リッカの羽が震えた。


「まさか……」


「そんなに珍しいのか?」


「珍しいなんてものではありません」


 リッカはフォレスト・ビルダーを見つめたまま言った。


「これだけ揃えば、一つの開拓都市を成立させることだってできます」


「そこまで?」


「伐採、運搬、製材。そのすべてが繋がりますから」


 なるほど。


 フォレスト・ビルダーで木を切り、運び。


 製材所で加工する。


 そして板材や角材を使って家を建てる。


「……村づくりが一気に進みそうだな」


「はい」


 リッカは力強く頷いた。


「ですが、だからこそ森を大切にしてください」


「分かってる」


 俺は笑った。


「無茶な伐採はしない。森を使いながら、森も育てる」


「それなら安心です」


 リッカが微笑む。


 実に頼もしい妖精だった。


 農場ではノエたちが食料を支える。


 そして製材所ではリッカが建築資材を支える。


 なら――。


「ガードナー」


「おう」


 呼びかけると、少し離れた場所にいたガードナーが振り向いた。


「製材所を任せたい」


「俺が?」


「ああ」


 ガードナーは意外そうに目を瞬かせた。


「お前は森をよく知っている。木の生えている場所だけじゃない。獣道も、危険な斜面も知っている」


 だからこそ、任せられる。


「狩りだけじゃ村は守れない」


 俺は完成した製材所を見る。


「木を切る。木材を作る。家を建てる。そして、仲間を守る」


 ガードナーを見る。


「この村の未来は、お前の手にもかかっている」


「……」


 ガードナーはしばらく黙っていた。


 やがて――。


「へっ」


 照れくさそうに頭を掻く。


「狩人の荷物持ちだった俺が、製材所の親方か」


 そして、ニヤリと笑った。


「……そこまで言われたら断れねぇな」


 ガードナーは拳を握る。


「任せろ!」


「頼んだ」


 その隣で、リッカも丁寧に頭を下げた。


「どうぞ、よろしくお願いいたします」


「おう。こちらこそだ」


 こうして。


 村に、新たな仕事場が生まれた。


 農場には、命が芽吹く。


 製材所には、文明が芽吹く。


 そして――。


 カンッ。


 カンッ。


 カンッ。


 製材所から、木槌の小気味よい音が響き始めた。


 まだ何もない。


 家も少ない。


 道もない。


 防壁だって完成していない。


 それでも。


 廃村だったこの場所には、少しずつ人の営みが戻り始めている。


 俺は完成した製材所を見上げた。


「……次は住宅だ」


 みんなが安心して眠れる場所を作る。


 雨風を防ぎ、寒さをしのぎ、家族と食卓を囲める場所を。


 文明の再建は、まだ始まったばかりだ。


 俺は拳を握った。


 ――ここからだ。


 滅びた文明を。


 この手でもう一度、築き上げる。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ