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ゲーム開発者だった俺だけが都市管理システムを起動できる~滅びた文明を復興して最強国家を築く~  作者: 水源


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製材所建設のため森へ――だが、そこには何かがいる

 放牧地を任せた犬妖精のトモロ。


 食料庫を守る猫妖精のベル。


 そして、新たに召喚できるようになった畑妖精のノエ。


 さらに、畑仕事を担うローズも仲間に加わった。


 これで当面、食料の心配はない。


 ようやく俺は、張り詰めていた肩の力を抜いた。


 ――だが。


 食料さえ確保できれば安心、というほど、この世界は甘くない。


 どれだけ畑を耕しても。


 どれだけ家畜を増やしても。


 盗賊に襲われれば、一夜で全てを失う。


「次は……防衛か」


 俺は小さく呟いた。


 まともに戦えるのは、俺とガードナー、それにシャーリス。


 三人だけだ。


「少なくとも、あと三人は欲しいな」


 できれば六人。


 前世でゲームを作っていた頃も、拠点防衛には頭を悩ませた。


 一つの場所を守るだけならいい。


 だが、防衛地点が二つになれば話は変わる。


 戦力を分けなければならないからだ。


 今回もそうだった。


 もし盗賊が村と交易車を同時に襲っていたら――。


 俺たちは対処できなかっただろう。


 トモロの《吠え声》で敵の注意を引きつけられたからこそ、何とか切り抜けられたのだ。


「やっぱり、兵は増やさないとな……」


 真っ先に思いつくのは傭兵だった。


 食料と寝床、それに武具を用意する。


 その代わりに街の守備を任せる。


 現実的な方法だ。


 だが――。


『戦力としては有効です』


 肩の上のナンシーが淡々と告げた。


『ただし、忠誠心までは保証できません』


「……だよな」


 金がなくなれば離れていく。


 場合によっては、昨日まで味方だった人間が、今日には敵になる。


「ナターリアが仲間になってくれていれば、少しは楽だったんだけどな」


 思わず苦笑する。


 だが、彼女は交易商人だ。


 一つの街に留まるような性格でもない。


 結局、人を増やすにしても、妖精を増やすにしても――。


「まずは街を大きくするしかないか」


 共同住宅。


 厨房付きの大食堂。


 鍛冶場。


 工房。


 倉庫。


 市場。


 必要なものを挙げれば、きりがない。


 そして、それらを作るために必要なのが――。


「……木材だ」


 木を伐る。


 運ぶ。


 加工する。


 板材や角材にする。


 そこまでできて、ようやく街を広げられる。


 ゲームでもそうだった。


 製材所が完成すれば、それまで止まっていた建設計画が一気に動き始める。


 逆に言えば――。


 製材所がなければ、都市の発展はここで止まる。


「まずは製材所だな」


 木を扱える人間なら、すでに心当たりがある。


 ガードナーだ。


 明日は森へ入る。


 木材を集める。


 ついでに狩りもする。


 そして、できれば――。


 森の奥まで探索してみたい。


 そんなことを考えていた時だった。


「あ、ハーシス。

 ちょっと相談いい?」


 振り返る。


 そこには、少し申し訳なさそうな顔をしたアトラが立っていた。


「ああ。

 どうした?」


「私、ヒーラーなのに……医療の知識が全然足りなくて」


 アトラは胸元で手を握った。


「もっと勉強したいの」


「なるほどな」


 それは確かに重要な問題だ。


「なら、いずれ診療所を建てよう」


「診療所?」


「ああ。

 施設があれば、医療の知識も集めやすくなるだろう」


「でも……今は?」


「建材が足りない」


「ああ……やっぱり木材なんだ」


「そういうこと」


 アトラは少し考えると、顔を上げた。


「じゃあ、それまでは私もできることをやる」


「何をするんだ?」


「薬草を集めるの。

 毒草との違いも調べて、絵付きで記録してみる」


「それは助かる」


 俺は頷いた。


「薬草と毒草を間違えたら、それだけで命に関わる。

 今のうちに記録しておけば、それは街の財産になる」


「うん!」


 アトラは嬉しそうに笑う。


 そして、そのまま農場へ駆けていった。


 その背中を見送りながら、俺は思う。


 街は、建物だけでできるものじゃない。


 食料を作る者。


 病人を治す者。


 家を建てる者。


 敵から守る者。


 それぞれが役割を持ち、互いに支え合って、初めて街になる。


「……よし」


 俺は管理画面を開いた。


 淡い青白い光が視界に広がる。


 ────────────

 暫定管理者権限 Lv1


 建設可能施設

 ・製材所

 ・共同住宅

 ・厨房付き大食堂


 建設完了

 ・農場/畑

 ・農場/放牧地

 ・食料庫


 建設条件未達

 ・診療所


 必要資材

 木材 不足

 石材 不足

 ────────────


「……やっぱり木材と石材か」


 建てたい施設はいくつもある。


 だが、資材がなければ何も始まらない。


『システムは嘘をつきません』


 ナンシーが淡々と告げる。


『ですが、努力は正しく評価されます』


「……今日は妙に励ましてくれるな」


『事実を述べただけです』


「はいはい」


 相変わらず愛想がない。


 それでも、その言葉は妙に心強かった。


 管理画面を閉じる。


「明日は森だな」


 木材を集める。


 獲物を狩る。


 そして――森の奥を探索する。


 俺の記憶が正しければ、この辺りには旧文明の施設がいくつか眠っている。


 放棄された伐採小屋。


 使われなくなった資材置き場。


 あるいは、まだ誰にも発見されていない遺跡。


 何か一つでも見つかれば、この街の発展は大きく変わる。


「ガードナーとシャーリスを探すか」


 そう呟いた、その時だった。


 ――カァァァッ!


 森の奥から、一羽の黒い鳥が飛び立った。


 俺の頭上を一度だけ旋回する。


 そして、鋭い鳴き声を残して西の空へ消えていった。


「……なんだ?」


 理由は分からない。


 だが、胸の奥がざわついた。


 肩の上で、ナンシーがぴくりと動く。


『周辺の魔力反応に、微弱な変化を確認しました』


「変化?」


『自然現象の範囲内……と判断できます』


 そこまで言って、ナンシーが黙った。


「……?」


『ですが、警戒を推奨します』


「分かった」


 その一言だけで十分だった。


 翌朝。


 俺はガードナーとシャーリスと共に、森へ向かうことになった。


 広場へ行くと、ガードナーはすでに斧を研いでいた。


 シャーリスは弓弦を張り替え、矢を一本ずつ確認している。


「二人とも、準備はできてるな」


「製材所を建てるんだろ?」


 ガードナーが笑う。


「なら木が要る。

 俺だって分かるさ」


 シャーリスも弓を肩に掛けた。


「木材を集めるだけなら、森の手前で十分だ」


「だが――」


 シャーリスが俺を見る。


「お前は、それだけで帰るつもりではないだろう?」


「もちろん」


 俺は頷いた。


「森の奥まで調べたい」


「危険だぞ」


「分かってる」


 旧文明の施設。


 資材。


 新しい仲間。


 この街を変える何か。


 森の奥には、まだ俺たちの知らないものが眠っている。


 だからこそ、行く価値がある。


「まずは木材の確保を優先する」


 俺は二人を見る。


「余裕があれば、そのまま探索する」


「了解だ」


「異論はない」


 二人の返事を聞き、俺は頷いた。


「出発は明日の朝だ」

 森に入る準備の時間が必要だからな」


「そうだな」


 ガードナーが頷いた。


「寝坊するな」


 シャーリスもうなずく。


 俺たちは気付かなかった。


 森の奥で。


 何かが、こちらを見ていることに。


 そして――。


 その静寂そのものが。


 この森からの、最初の警告だったことに。

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